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生存戦略としてITエンジニアが35歳までに考えておくべき3つの事

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Photo by Financial Times

f:id:paiza:20130918201254g:plain今回のpaiza開発日誌は片山がお送りします。

仕事柄色々なITエンジニアの方と話す機会があるのですが、全般的にエンジニアは技術面についての探求は強いけれど、自分のキャリアについての探求はわりとのんびりしている方が多いのだなと思う事が良く有ります。また、そのあたりで働き方の面で少し損しているかも、と感じる事があります。

エンジニアは、どうしたら自分のスキルを生かして自分のやりたい開発を続けることができるのか、夢を叶えられるのか、そのためにはどのようにキャリアに向き合ったらいいのかについてまとめてみました。

■キャリアは自分で考える時代

少し損をしているなと思った例で言うと、、、

  1. とりあえず開発できればいい⇒常駐や保守メインの仕事
  2. 30代半ばで初めての転職、かつSI、組み込み⇒Webなどの業界チェンジ


それぞれ結構レベルの高い方です。1のタイプは、開発が好きで技術力も高いけれど、あまり仕事を選んでいなかったり、希望を上手く伝えられていなくて、やりたい事と少し遠い仕事になってしまっている方。

2のタイプは、現状に不満が有りつつ、のんびり考えているうちに30代半ばになってしまい、年齢による転職の難易度があがってしまった方。

両方のタイプとも自分の活かし方、企業からの見られ方、社会との接点の持ち方を考えたり、知ったりすればもっと自分を活かせる場あるように思います。

エンジニアに限らずの話ですが、バブルがはじけ終身雇用が崩壊したと言われてもう20年近く経ちますが、未だに働き方に関しては高度経済成長期の思考パターンが根強く残っている場面に数多く遭遇します。その一つが「会社が個人のキャリアパスを考えてくれる」というもの、次に「会社が個人を教育してくれる」もの、という思い込みです。

現在の企業は構造的に考えて、昔のように個人のキャリア設計はしてくれないし、昔のような教育もしてくれないもの、と考えた方が良いでしょう。

■何故、会社がキャリアを考えてくれなくなったか

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Photo by John Hope

何故「会社がキャリアを考えてくれる時代じゃない。」と言えるのでしょうか? それは現在の企業が置かれている環境に起因します。現在の企業は、昔のように終身雇用で「一生雇う」という事がほぼ出来なくなってしまったためです。

企業が個人を一生雇うのであれば、個人と企業の関係は対等ではなく、企業は個人を食わせてやっている、という状態になります。一生面倒見てもらう代わりに企業の言う事は何でも聞か聞かなければならないという事です。

そうなるとエンジニアとして就職したつもりが、ある日突然人事に配置換えされ、数年して営業に変えられ、という事が起きるわけです。大企業の場合は配置換えの1週間前に急に言い渡される事もザラです。ただこれは逆に言い換えると、「言われた事さえやっていれば一生面倒を見てもらえる」時代だったとも言えます。

しかし現在の企業は体力がなくなってしまい、どんな大企業でもある日突然リストラに遭う可能性を否定できません。昔のように生涯同じ企業で働きたくても、なかなかかなわない時代です。そうなると企業と個人は対等の関係になります。

企業は「一生面倒を見る」という強いカードをきれなくなるため発言権が弱まり、個人のキャリアや教育についても一生面倒を見ていられないので、あまり考えてくれなくなるという訳です。教育が必要な新卒よりも、即戦力の中途重視、という構図と同じです。

こうなると個人としても、ある日突然リストラされたときに備え、生き残れるように社外でも通じるポータブルスキルを身に着けておかなければいけません。個人が自分自身のキャリアについて昔よりずっと真剣に考えなければいけなくなったのです。

この20年ぐらいで急にキャリアデザインの責任が、企業から個人に渡されてしまったわけです。

また高度経済成長期のように、戦後の貧しい時代から立ち直り、明るい未来に向かって、みんなで坂の上をめざし駆け上っていく時代は終わっています。経済的に豊かになる事だけを目指して働く時代ではなく、精神的な豊かさを求めて働く時代にシフトしてきています。

「自分のやりたい開発を仕事にする」というのはまさに精神的な豊かさの追求です。この精神的な豊かさというのは個人個人で異なるものなので、誰かがそれを実現するキャリアパスを考えてくれる、ということは有り得ません。自分で考えるしかないのです。

こういった「終身雇用の終焉」と「精神的な豊かさの追求」という大きな流れにより、キャリアパスは企業が考える時代から個人が考えなければいけない時代にシフトしたのです。

■何故、会社が教育をしてくれなくなったか

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Photo by Alex

次に教育についてはどうでしょうか。いろいろな方と話をしていても、会社が個人を育ててくれるもの、という意識がいまだに根強く残っているように感じます。

「うちの会社はOJTという名の放置だ」とか「個人のスキルが伸びれば会社にとっても良いはずだから教育をもっとするべきだ」と考えたことはないでしょうか。

勿論これはある意味間違いではありません。しかしこれを整理して考えるためには、まず「教育」という概念と、「学習」という概念に分けて考える必要があります。「教育」という概念と「学習」という概念の違いは「主体者がどちらにあるのか」という事によって変わってきます。

「教育」は組織が個人に対して、組織の理屈で組織の求めるスキルを個人に習得してもらうための訓練(受動的に教育される)、という概念です。一方、「学習」は自分がやりたい事をやるために主体的に学ぶ、という概念です。

前述しましたが高度経済成長期は、皆目指す方向が「経済的な豊かさ」という事で一緒でした。すると会社が自らの利益を追求するために、従業員に対して会社の利益になるための教育を行いますが、それはそのまま個人としても経済的な豊かさの教授につながるため、主体的な「学習」にもなり得たのです。

しかし現在は両者の軸が異なります。企業は今も昔も企業自らの利益のために社員を教育します。ただ現代では、個人の求める事が経済的な豊かさではなく、個人個人で異なる精神的豊かさに比重が移ってしまったため、企業から受ける教育は押しつけの教育に成りがちなのです。

また企業の教育は、社外でも通じるポータブルスキルよりも、その会社固有のやり方や、社内人脈の形成など社内向けスキルが中心になりがちです。これもまた終身雇用が崩壊した現代において個人側から見ると、市場価値の高まらない押しつけの教育になってしまいます。

こう考えると、個人の精神的な豊かさのための学び(やりたい開発をやるための学び)は、基本的に個人による学習以外なくなります。(偶然会社の教育が自分がやりたい事重なる事はもちろん有ると思いますが) これは企業の組織に対する投資ではなく、個人による個人のための投資になるので、もちろん業務時間外に自分で行うしかありません。これは自分の身を守るための学習でもあるからです。

つまり正確には、会社は今でも「教育」はしてくれますが、昔と比較をすると、個人の求めるものが変わってしまったため「学習」の機会には成りにくくなってしまった、という事です。

※各企業内で求められるスキルの幅は狭く、色々な事を教えると持て余して転職してしまうから教育しない、という話も有りますがまた別の機会にでも。。エンジニアでは有りませんが良く有る話だと、MBAを取らせに海外留学させると辞めてしまってコンサルに成るか、起業する、というのが有ります。

■目標設定は会社と個人の擦り合わせ

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Photo by Érre

昔のような企業と個人が従属関係にある場合は、企業は一方的にやってほしい事を要求し、評価していればよかったのですが、現代ではだいぶ様子が違います。

会社がやってほしい事と個人がやりたい事をうまく摺合せし折り合いをつける場を設けないと、精神的な豊かさを仕事の中に作り出す事が出来ず、すぐに人が辞めてしまう事になりかねません。

また個人としても、自分がやりたい事を仕事の中で実現するために、企業や社会が何を求めていて、どうすれば自分のやりたい事を仕事とリンクさせられるかを擦り合わせた方が健全に働けます。

こういった「精神的な豊かさを求める」という社会環境の変化が出てきたため、評価の方法として「目標設定」という手法が出てきたのです。キャリアを考える際は、企業側の理論だけでも、個人側の理論だけでも成り立たないため、企業と個人がキャリアを協同デザインする時代になってきているのです。

うまく自分のやりたい事と仕事をリンクできると、前述したように「会社の教育」が「自らの学習」と同じ軸に成り、会社から学習の機会を得る事が出来るようになり、両者にとて良い状態を維持できる訳です。

■キャリアをどう考えたらいいか?

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まずキャリアを考える際の枠組みとして「今の自分、なりたい自分、社会的価値」という3点について考えて整理してみると良いでしょう。

◆1.今の自分

まず「今の自分」というのは、現在の自分のスキルや出来る事です。現在の自分自身を客観的にとらえて、何ができて何が出来ないのか、どういう事が得意で、どういう事が苦手なのか、またどういう経験値を持っているのか、という事をこれまでの仕事を棚卸し、それぞれの仕事でどういう事を学んだか?という視点で振り返ってみるとよいでしょう。

振り返る事はとても大事です。昔、年度の終わりに当時のチームで「各自この1年何をやってきたか」という事を、四半期単位で「何をやってそこで何を学んだか?」について発表してもらったことが有ります。やる前は「何にも進歩してない」とか「昔からこのぐらいの事できた」というような人でも、振り返ってみると1年で色々な事を学んだことを発見できて、振り返りの後には皆すごくポジティブになった、という事が有りました。

当たり前に出来るようになったしまった事について、人間はえてして「昔から出来ていた」と思いがちです。ただ思い返してみると、それなりの積み重ねの上に成り立っているものです。そういった積み重ねを客観的にとらえ、今の自分にはどういうスキルがあり、どういう経験を盛っているのかを知る事はとても大事な事です。

スキルを可視化してみるという意味では手前味噌になりますがpaiza等のスキルテストで、客観的に自分のプログラミングスキルを測ってみるというのも良いと思います。

◆2.なりたい自分

次に「なりたい自分」というのは、将来自分がどういうエンジニアになりたいか?またそうあるために、どのようなスキル、経験が必要なのか?という事です。「今の自分」と「なりたい自分」が分かれば、あとはそのギャップをどう埋めればいいかを考えればよいので(コンサルでいうところのギャップ分析です)、自然とやるべき事をリストアップする事できるようになります。

ただここで一つ問題なのは、「なりたい自分」を思い描こう!、と言葉で書くと簡単な事ですが、実際に自分がどんな仕事をやりたいかという事考えるのは結構しんどい、という事です。

何故なら、どんな仕事をやりたいか?どう有りたいか?という問いは、どう自分は生きたいのか、自分の人生をどう捉えるのか?という非常に大きなテーマに直結しているからです。これは基本的には自分が何をやりたいのか、常に自問自答し続けるしか方法がありません。

誰それのように、というロールモデルを見つけるのは一つの方法ですが、自分は他人にはなれないので、参考程度にとどめておいたほうが良いでしょう。ほとんどの場合人のコピーをしても幸せになれないからです。それよりかは、自分がどういう時に心地よいと感じるのか、自分自身をよく観察し、どんな状態で居ると自分は幸せなのかを知る事の方が有用に思います。自分自身における幸せの定義ができれば、そこに到達する方法はおのずと見えてくるからです。

◆3.社会的価値

そして最後に「社会的価値」についても考えなければなりません。これは、「今の自分」や「なりたい自分」がどのような社会的価値、市場価値があるのかという事です。社会に求められている事でなければ仕事になりませんし、より高い報酬を求めるのであれば需要が有り、希少性の高い仕事でなければなりません。やりたい事をやり続けるためには、この社会的価値を見据え、自分と社会との接点をどう持つかを考える必要があります。

また日本では、年齢も社会的価値を左右大きな要因になり得ます。日本では年齢による上下関係が職場にまだ残っているので、年齢なりのスキルレベルを求められる場面が多いのです。(「年下が上司だと嫌だ」というようなことです) 節目としては大きいのは20代後半と35歳前後でしょう。

日本の企業の一般論としてですが、20代後半は社会人としての経験を求められる歳です。エンジニアだと、何らかの実務での開発経験が求められます。SIや組込みからWEBへの転向など、未経験への転向でもやる気さえあれば比較的容易にできる年齢です。

35歳前後になると、即戦力としてそれぞれの分野でそれなりの経験を求められるようになります。35歳前後で新しい分野で学びたい、という理由での転職はなかなか厳しいものがあります。

これらの年齢は自分の意志とは関係なく、日本社会の持つ特性として意識し、キャリア設計をする必要があります。
※paizaではこういった社会習慣も出来る限り無くせていければと考えていますが、一足飛びには難しく。。

◆三つの円が重なる部分がベストな仕事

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この「今の自分」、「なりたい自分」、「社会的価値」という三つの円が重なる部分を仕事にする事が出来れば、現在の自分の持っているスキルを活かしつつなりたい自分に近づく事ができ、かつ収入も確保できる、という事なります。

この3つの円を意識して、戦略を立てる事がキャリアデザインにはとても重要です。これは何も高い目標を見つけ、いわゆる「意識が高い」状態でなけばいけない、という事ではありません。必ずしも自分のやりたい事が収入に結び付くわけではないので、収入とやりたい事のバランスをとって、自分にとって心地よいポイントを見つけるためにも、この三つの円を意識する事は重要です。

社会とどうかかわりたいか、どう折り合いをつけるか、やりたい事をやり続けながらどう収入を得るか。これは自分の心地よい状態、幸せな状態は何か?という哲学的な問いでもあるので、一生考え続けるしかありません。考えても見つかるものではありませんが、考えなければ一生近づく事も出来ないのです。

■「キャリアドリフト」流されてみるのもあり

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Photo by Andrés Nieto Porras

「今の自分」と「社会的価値」は分かったが、やりたい事が見つからない、という場合はどうしたらいいのでしょうか。キャリアデザインにおいて、あらかじめ完全な計画を立る必要ありません。仕事の楽しさはやってみなければわからない面が多分にあるので、実質的に事前に計画する事はほぼ無理なためです。

自分が何をしたいか?という事は、常にうっすらとは考えていたほうが良いものの、それはキャリアの移行期に深く考えればよく、その他の時期はむしろ状況に流される事も大事だという「キャリアドリフト」という考え方が有ります。
※キャリアドリフトは金井壽宏氏(神戸大学大学院経営学研究科教授)の提唱するキャリアの考え方です。

仕事は他者との関係性の中でしか生まれない社会的な行為です。自分では当たり前に出来て、何の価値もないと思う事でも、ある人からはとてもありがたがられる事もあり、思わぬ自分の社会的価値に気が付く事もあります。

また人間は社会的な生き物なので、自分の力で他者の役に立つことが出来れば、例えそれが自分のやりたいと思っていた事でなくても、やりがいの有る仕事になる事もあります。

このように他者から依頼される仕事をこなして、流されていても自分の価値を発見するのもあるため、あまりガチガチにキャリアを考えすぎないほうが、自分の可能性を広げられます。将来どうなりたい、というイメージが湧かない場合は、まずは目の前にある仕事を着実にひとづつクリアしていくというのもとても大事な事です。

■まとめ

今回は転職サイト運営元らしくキャリアについて語ってみましたが、決して転職を進めている訳ではありません。ただ会社は個人が望むようなキャリアは考えてくれないので、自分のキャリアデザインは自分で行わなければならない時代になっています。

仕事について課題を感じた時、転職する事だけがキャリアの解決方法ではなく、社内で転属する方法もありますし、仕事を作り出してしまう事もあるだろうし、フリーになったり起業するなど、方法論はいくらでもあります。

ただそれでも目的地や目指す方向を見つけなければ自分が望むような仕事にはなかなか巡り会えないのです。もし目的地を定められないのであれば、羅針盤だけもって大きな方向性だけは間違えないようにするというのも一つの手です。

数年ほど前に、その昔仕事でお世話になった上司にキャリアについて話を聞く機会がありましたが、すごくうまくキャリアを歩んでいそうなその上司も、紆余曲折を経て現在のポジションにいる事を知りました。そこにたどり着くには色々な葛藤があったのです。その上司以外でも、その人に合った仕事をしているなと思う人でも、話を聞いてみると紆余曲折を経てその場所にいる、という事がとても多いのです。

キャリアは一本道ではありません。寄り道による発見もありますし、そこで得た事が後々生かされる事もあります。人生に正解がないように、キャリアにも正解は無く、本人が納得しているかどうかがとても重要です。

 逆説的ではありますが、やりたい仕事をするためには、やりたい事がクリアに分かっていなければそれは実現できません。あなたはどう生きたいか、何を開発したいか、社会とどうつながりたいか。自分の内なる声に耳を傾け、自分がどうしたいかを考え続ける事がとても大事だと思います。




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