こんにちは。今回は谷口がお送りします。
転職に興味があるITエンジニアの皆さんは、企業の求人のどこを重視して読んでいますか?
また、エンジニアを採用したい企業の皆さんは、どんな求人を出していますか?エンジニアの皆さんが応募したくなるような求人票を書けていますでしょうか?
先日paizaでは会員の方に向けて、企業の求人票に関するアンケートを実施しました。期間は2014年10月2日から10月14日の間、対象となったのは、20代、30代で正社員・契約社員・派遣社員の皆さん358名です。
この結果から、どのような求人がITエンジニアに嫌われてしまうのか、またITエンジニア求人における人事の勘違いポイントが浮かび上がってきました。
そこで今回は、エンジニアに興味を持たれる求人と読んですらもらえない求人の違い、そしてどういった求人を出せば優秀なエンジニアに応募してもらえるのかについてを考察してみたいと思います。
■こんな求人はITエンジニアに嫌われる!
今回のアンケート結果を通して、どのような求人がITエンジニアに敬遠されるのか?嫌われるのか?について見ていきましょう。
◆1.求人票の職務内容は、どのような点に注目・重視しますか?
まずは「求人票の職務内容を読み取る際、どのような点に注目・重視しますか?(2つまで選択可)」という質問の回答結果からです。
- 「どのような開発を行うのかの明示:42%」
- 「必須要件(スキル)と開発言語/開発環境の相関の高さ:38%」
- 「企業全体の業務内容、サービス内容:28%」
- 「開発言語の特定:21%」
- 「職務内容の幅の広さ:12%」
- 「仕事のやりがい:11%」
- 「裁量の大きさ:10%」
- 「職務内容幅の特定:10%」
- 「開発言語の広さ:8%」
- 「歓迎要件の幅の広さ:7%」
- 「歓迎要件の簡潔さ:3%」
回答結果を見ると、エンジニアは求人票の職務内容を読み取る際に、自分がこの企業でどんなふうに働くことになるかがイメージしやすくなる情報を重視しているようです。このアンケート結果では、上位3つの下記の項目がそれに当たります。
- 「どのような開発を行うのかの明示:42%」
- 「必須要件(スキル)と開発言語/開発環境の相関の高さ:38%」
- 「企業全体の業務内容、サービス内容:28%」
職務内容に関しては、「どのようなシステムの開発か」ということだけはでなく、「必須要件(スキル)と開発言語/開発環境の相関性」が高くなければ注目してもらえないようです。必須要件(スキル)と開発言語/開発環境の相関性が低い求人の具体例は、下記のようなものになります。
求人タイトル:自社サービスのフロントエンドエンジニア
必須要件:Ruby3年以上の実務経験、JavaScript、Html、CSS1年以上実務経験
このような求人だと、エンジニアに「フロントエンジニアであればJavaScriptやHtml、CSSを使った業務が中心となるはずなのに、何故JavaScriptよりRubyの経験年数を多く求めるの!?」というようなことを思われて不信感を持たれてしまうため、スルーされてしまうということだと思います。サーバサイドエンジニアとサーバエンジニアがごっちゃになっているものなんかもたまに見かけます。
仕事のイメージに関しては開発言語の情報も重要になりますので、次の質問を見てみましょう。
◆2.開発言語は、何言語まで表示されているのが望ましいですか?
「募集ポジションで使用する開発言語は、何言語まで表示されているのが望ましいですか?」という質問の回答結果についてです。
- 少ない方が良い派
- 「多くとも5言語ぐらいまで:45%」
- 「なるべく少ない方が良い:22%」
- 「多くとも10言語ぐらいまで:5%」
- どちらでも良い派
- 「何言語表示されていても気にしない:24%」
- 多い方が良い派
- 「多い方が良い:4%」
求人サイトによっては、必須要件の開発言語の実務経験しか問わず、実際の現場で使われている他の開発言語の経験については書かれていないような求人サイトも数多くあります。
paizaも含め最近ではいくつかの求人サイトで、現場で使われている開発言語も書かれることが増えてきましたが、この開発言語の言語数も、多ければ良いというものではなく、むしろ多すぎると逆効果のようです。
この質問に対しては、半分弱の方が「多くとも5言語ぐらいまで」、次いで22%の方が「なるべく少ない方がいい」を選んでいます。
上記のような例だと、開発言語の提示が多すぎて逆効果になる可能性が高いでしょう。
求人票を作成する側(この場合は多くが人事担当者に「求人の必要要件を教えて」と言われた募集チーム所属のエンジニア)としては、技術力のアピール的な気持ちもあって、普段滅多に使うことはないが、少しだけ使った事のあるような言語も書きたくなってしまうのだと思いますが、実はこれは求人票を見る側のITエンジニア達には不評です。
求人票を見るエンジニアサイドから考えてみると、自分がその会社に入社した際にどういった言語で開発する事になるかが知りたいので、色々な言語が書いてあると「何をやらされるか分からない」と思われてしまい、マイナスイメージになってしまいます。
paizaの求人票ではそういったエンジニアの声も反映して、メイン言語、メインフレームワークは大きく表示されるようになっています。
◆実務経験5年以上の罠
これ以外にも、募集要項でよくある「○○言語での開発実務経験5年以上」という表記もあまり好まれません。「なぜ3年でなく5年なのか?」「実務経験はないが独学で勉強してきたという人はだめなのか?」という説明が明確にできないのであれば、避けた方が良いでしょう。
例えば「保守担当で月に1回ぐらい触る程度で、何となく5年ほどJavaシステム保守をしてきました……」というJavaの経験5年という人と、「1年間ちょっとの経験しかありませんが、新規事業のアプリの開発からリリースまでを1年間みっちりやっていました」という人では、実力をベースに考えると1年の経験しかない人の方が上になるケースも多々あります。
それならば、スキル感がより分かるような「Rubyを使用してwebサービスを開発した経験がある方」や「2名以上のチームでアプリのリリースに携わった経験のある方」等と書いた方が、より必要な経験やスキルが分かりやすく、応募者と企業とのマッチング度も上がります。
「こういうシステムを作っているので、この開発環境を使用しています。だから、こういう人が欲しいです」というところまでが求人を見て分かると、エンジニアも納得できて応募がしやすくなります。
逆に言うと、言語数やフレームワークがやたらと多かったり、例えばPHPの熟練エンジニアを募集しているのに「どんな開発言語の経験者でも構いません!」というようなことが書いてあったりする求人だと、エンジニア達に「この企業の求人はブレてるな……」と思われて、詳細を見てすらもらえないということなのです。
ちなみにpaizaなら、スキルのランクと実務経験で募集をすることができますので、こういった自己申告の実態がよくわからない経験年数等を基準にする必要はなく、よりスキルレベルのフィットしたエンジニアとのマッチングが可能です。自己申告のスキルベースでのマッチングよりも、実スキルベースでのマッチングの方が、エンジニア・企業の双方にとってメリットが高いと思います。
◆3.開発現場の情報としてどのような内容を知りたいですか?
「開発現場の情報として、求人票からどのような内容を知りたいですか?(2つまで選択可)」という質問に対する回答です。
- 「開発チームの構成:44%」
- 「最新技術の導入に積極的か:39%」
- 「技術向上の為の教育体制、勉強会:39%」
- 「明らかに自分よりもすごいエンジニアが居るかどうか:26%」
- 「社外への技術情報発信が積極的か:15%」
- 「上司のバックグラウンド:15%」
- 「他部署とどの程度連係して開発をすすめるのか:10%」
- 「一緒にランチ、飲みにいくほどの仲の良さ:6%」
開発チームにどんな人がいるのか、そしてその企業で技術やエンジニアが大事にされているかどうかというのは、エンジニアにとって知りたい情報ですね。
どのような開発チームかはもちろん、最新技術の導入や勉強会の体制は、向上心の高いエンジニアにとっては重要なことです。
技術の導入が遅れているような現場や教育体制が整っていないような企業では、「エンジニアが大切にされていないんだな……」と思われても仕方ありません。「勉強会やカンファレンス、書籍購入の費用は企業で負担します」というぐらいのことがうたえない求人では、エンジニアに興味を持ってもらえない可能性が強まってしまいます。
また仲が良いにこした事は有りませんが、 「一緒にランチ、飲みにいくほどの仲の良さ:6%」という結果を考えると、求人票のメイン写真をよくある飲み会の写真や、BBQの集合写真等にしていることは、あまり訴求効果はないという事かもしれません。
◆4.年収幅が広い求人についてどう思いますか?
「年収幅が広い求人(例:400万円~800万円など)についてどう思いますか。」という質問の回答結果です。
※画像をクリックすると大きな画像がご覧になれます。
- 「印象は良くない:64%」
- 「良いと思う:36%」
年収幅の広さ(例:400万円~800万円など)については、64%の人が印象は良くないと答えました。次で理由をお聞きしております。
◆5.年収幅が広い求人は何故印象が悪いと思いますか?
上記4の質問で「印象は良くない」と回答した方に「なぜそう思いますか?」という質問をした結果です。
- 「最低ラインを提示されるような気がする:40%」
- 「最高提示額は誰にも出して居ないのではないかと感じる:32%」
- 「応募前から年収としていくらになるかをはっきりさせたい:19%」
- 「その他:9%」
「最低ラインを提示されるような気がする:40%」という方が最も多い結果となりました。
採用する側からしたら「どんな技術レベルの人が来るか分からないから仕方ない」ということなのかもしれませんが、給与の年収幅が広い企業は、「どうせ最低年収を提示されるんだろ」「最高額もらってる社員なんているのかよ」と思われて、印象は良くないようです。
この場合、幅広い年収幅の求人を出すよりも、複数の求人に分け、それぞれで求める要件を変えて、要件と給与レンジが対応した形で記載をした方が、エンジニアからすると良い印象になると言えるでしょう。
上記の様に、一つのポジションのエンジニアの求人で300万円~900万円というのはいくら何でも広すぎますね……。
この場合は、例えば大きく分けて300万円~500万円程度の若手エンジニア、500万円~900万円程度のベテランエンジニアで分けた求人票を作成して募集した方が、それぞれのランクのエンジニアにアピールすることができて良いでしょう。
…って弊社求人も年収幅広いな!このような例もありますので人事担当者の皆さんはお気をつけください……。
■エンジニアに読んでもらえる求人を作るには
いかがでしょう。ITエンジニアの皆さんは、上記であまり印象の良くない結果となった、メイン言語がいくつも提示されていたり、年収幅が広かったりするような求人を見たことはありませんか?そして人事を担当されている方々は、そのような求人を出していないでしょうか?
そもそも、なぜ企業はエンジニアに読んでももらえないような求人を作ってしまうのでしょうか?
◆読まれない求人票が生まれるわけ
よくある例として、人事担当者がエンジニアに必要要件等をヒアリングし、それをまとめもしないまま求人に出してしまっている場合があります。求人を見ていると、エンジニアの業務が忙しいため、現場の技術環境や必要要件に関してはメールで投げてもらい、そのまま載せてしまっているんだろうな……という企業を多く見かけます。
エンジニアに必要要件を聞くと、どうしても抜けたメンバーや自分達と同等のスキルを求めてしまうので、要求が高くなりすぎてしまう場合が多くあります。それをそのまま求人に載せたところで、要求が高すぎて応募が来なかったり、そもそも採用求人として求職者達にアピールできる書き方にはなっていないため、転職希望のエンジニア達に読んでもらえていなかったりするのです。
だからと言って、人事担当者だけで求人要件の全てを書くわけにもいきません。
◆求人票作成には人事とエンジニア両者の協力が必要
技術的な部分に関してを人事担当者だけで書こうとしても、そもそも担当者はエンジニアが何をしているのか分かっていないということが多くあります。そのような状態で求人を書いても、前述したようにエンジニアの視点とはズレた求人ができあがってしまいます。
エンジニアは、自分がここでどんな仕事をするのかというイメージができなければ応募する気にはなりません。
人事担当者は、「そんなこと面接で話せば良いじゃないか」と思うかもしれませんが、求人を見て具体的なイメージができない企業に対し、「気になるから面接で話を聞いてみたい!応募してみよう!」とはなかなか思えません。
優秀なエンジニア達に応募してもらえる求人を作るには、人事担当者とエンジニアがよく話し合って、必要要件を擦り合わせていく必要があるのです。
開発環境等の必要要件に関してはエンジニアの方が分かっていますし、求人マーケットの状況を踏まえた求人票の書き方に関しては、人事担当者の方がよく知っているはずです。
まずは、エンジニアにアンケートのような形式で必要要件のポイントを聞き、それを人事担当者が求人の形にまとめていくと良いでしょう。そして、できあがった求人は該当チームだけではなく、他の開発チームのエンジニア達にも「求職者の気持ちになって」見てもらいましょう。
エンジニア達に「この求人を見て応募したいと思えるかどうか」を聞き、よりエンジニアの心に刺さる書き方に修正していく……といった形で、求人をブラッシュアップしていくと良いでしょう。
■まとめ
良い求人を作るには、ITエンジニアと人事担当者、双方の協力が必要となります。
忙しい開発現場のエンジニアはあまり求人作成に協力的ではないかもしれませんが、本当に必要な技術レベルや経験を満たしていない人が採用されてしまっては、困るのは現場のエンジニアです。
企業の人事担当者の方には、エンジニアにヒアリングした必要要件をブラッシュアップした上で、上記のアンケート結果にあるような重視されるポイントを押さえ、印象が悪くなる表現を訂正して、他のエンジニア達にも見てもらうことで、エンジニアに読まれる・応募される求人を作っていただけたらと思います。
エンジニアにアピールできる求人票の書き方に関しては、必要に応じて弊社からもアドバイスさせていただきますので、ぜひお声掛けください! paizaのご利用を検討されている採用担当者の方がおられましたら、こちらからご連絡ください。
paizaは、技術を追い続けることが仕事につながり、スキルのある人がきちんと評価される場を作ることで、日本のITエンジニアの地位向上を目指したいと考えています。
「paiza転職」は、自分のプログラミング力が他社で通用するか(こっそり)腕試しができる、IT/Webエンジニアのための転職サービスです。プログラミングスキルチェック(コーディングのテスト)を受けて、スコアが一定基準を超えれば、書類選考なしで複数の会社へ応募ができます。
まずはスキルチェックだけ、という使い方もできます。すぐには転職を考えていない方でも、自分のプログラミングスキルを客観的に知ることができますので、興味がある方はぜひ一度ご覧ください。
また、paiza転職をご利用いただいている企業の人事担当や、paiza転職を使って転職を成功した方々へのインタビューもございます。こちらもぜひチェックしてみてください。
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