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日本でシリコンバレー式のブートキャンプを起業… 代表が語る日本のエンジニアの課題とは

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前列左がコードクリサリス代表のKani Munidasaさん

3カ月で参加費103万円──。そんな強気の価格設定をひっさげ、日本では珍しいブートキャンプ型プログラミングスクールの「Code Chrysalis(コードクリサリス)」が7月に開講しました。

即戦力のエンジニアを育てるのを目的として作られた同スクール。3カ月間、1日10時間以上の学習を週6日行う短期集中型のブートキャンプです。

今回は、このコードクリサリスを立ち上げた、代表のKani Munidasaさん(以降「カニさん」)にインタビュー。日本でコードクリサリスを起業しようと思った理由や参加者に伸ばしてほしいスキルなどを取材しました。さらに、日本とシリコンバレー、それぞれのIT業界やエンジニアを見てきたカニさんだからこそ分かる、日本のITエンジニアの印象、そして世界と渡り合うための課題についても伺ってきました。

卒業生には年俸1200万円のオファーが!?米国で人気のブートキャンプ

カニさんは日本の大学を卒業後、いくつかの企業を経たのち、アメリカでブートキャンプ型のコーディングスクール「HackReactor(ハックリアクター)」に参加。その後運営側としても従事されました。

同スクールは受講料が約200万円もかかるにもかかわらず、参加者が絶えないことで有名です。

その人気の理由は抜群の就職実績。卒業者のほとんどがエンジニアとしてIT企業(GoogleやFacebookなどのトップ企業からもオファーがあるそう)に雇用され、初年度の平均年収は1200万円に上るともいいます。

究極の職業訓練校とも言えるブートキャンプ、気になるその内容とは?


カニさん ウェブアプリケーション開発ができるフルスタックのエンジニアを養成することが目的のスクールで、技術的にはJavaScriptを学びます。受け身で教わる場所ではなく、エンジニアとして仕事の現場に近い環境で実際にプロジェクトを動かしながら開発することを覚えていきます。

参加者の経歴はさまざまで、教師や消防士、それに陶芸家、ミュージシャンまでいましたよ。

彼らの共通点は、とにかくエンジニアになりたい気持ちが強い人だということ。高い受講料を払うだけでなく、3カ月間毎日参加しなければなりませんから、多くの場合はそれまでの仕事をやめて参加しています。それだけの覚悟をもってやっていました。

ただ、ちゃんとスクールに参加し努力できる人であれば、カリキュラム終了後に即戦力のエンジニアとして企業に採用されるのは容易です。卒業証書が出るわけでもなく、企業に就職をあっせんするようなこともしていませんが、スキルを認められてエンジニアのキャリアをスタートさせています。

若い頃にあこがれた日本。いつか貢献したいと思っていた

そんなハックリアクターで経験を積んだカニさんが、そのメソッドをもって日本へ。ブートキャンプ型のプログラミングスクールを開講しました。すでに同様のスクールが数多くあるアメリカと違い、日本ではまだまだ馴染みの薄い学習スタイル。なぜこの事業を日本でやろうと思ったのでしょうか。


カニさん 1990年代、ロボットが好きだった私は日本に強いあこがれを抱いていました。当時はソニーやパナソニックなど、日本企業に勢いがある時代でしたからね。大学時代や就職して最初の数年間は日本で過ごしました。

その後アメリカに渡りましたが、日本への思いはずっと持ち続けていました。近年、自分が好きだった日本、世界の技術のトップにいた日本がだんだんと苦戦してきているのを見ていて、何か貢献できることはないだろうかと考えていたんです。

実は、これまで日本にブートキャンプ型のスクールがやってきていなかったのには理由があります。日本人は、ステップアップやキャリアチェンジのために仕事をやめてスクールに参加するといった考え方は持っていない。なかなか会社を辞められないんです。

それに、スキルアップのためのお金を自分で出そうとする人も決して多くない。会社などの所属先が支援してくれる文化があるので、自分で自分に投資する人が少ないんです。

しかし、ここ数年で少しずつ日本が変わろうとしていると感じています。ITの重要性が上がってきて、エンジニアの採用も活発になっています。ベンチャーへのマインドも変わってきました。今こそ、私たちのビジネスが求められているのではないかと思っています。

もちろん困難も多いと思いますが、日本のIT業界やエンジニアを私たちが変えるんだというやりがいも感じています。そのために早くから実績を作って、多くの人に知っていただきたいですね。

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現在行われている第1期の学習風景。参加者の過半数が女性だそう

そして、コードクリサリスでは、ミッションとして、女性エンジニアを増やそうとしているそう。男性社会というイメージが強いエンジニアの業界で、女性にフォーカスしているのはなぜでしょうか。


カニさん いいものを作るためにはダイバーシティが必要です。ユーザーの多様なニーズに応えるためには、開発側にも女性がもっと増えるべきです。アメリカでは結構前からそれに気付いてダイバーシティを意識した動きが増えています。しかし、日本ではまだまだ女性のエンジニアが少ない。ですから私たちは女性のエンジニアをもっともっと増やしていきたいんです。第一期も6人の参加者のうち過半数の4人が女性です。

日本のエンジニアのスキルは高い。しかし…

次に、日本のITエンジニアに対する印象を伺いました。

IT分野においては、海外と比べて世界的なサービスを生み出せていない日本。世界と戦うために、日本のエンジニアに欠けているものとは?


カニさん 正直に言って、スキル面では日本と海外のエンジニアで大きな差はないと思います。全体で見れば、日本のエンジニアも十分高いレベルにあると思っています。実際にアメリカに来て仕事をしている方も多いですからね。

ただ、特にエントリーレベルや若手のエンジニアに言えることですが、語学力がないことがスキルを伸ばすための足かせになっている人は多いと感じます。

ソフトウェアエンジニアにとって、技術的な新しい情報は毎日のように出てきます。世界中の最新情報をキャッチアップするためには、どうしても英語が分からないとついていけません。英語ができないと、誰かが訳してくれるまでは情報に触れられませんし、訳した人の主観も入ってしまうので、元の情報を読める人とは大きな差ができてしまいます。他のジャンルのエンジニアであればそこまで気にしなくてもいいんですが、ソフトウェアのエンジニアであればキャッチアップの速さは重要ですね。

あと、これは個人的な経験からなのですが、日本人は教えているときに、具体的なディレクションが必要な人が多い。『こういうやり方で作ってみてください』といえばいいものが作れても、『自分で好きなように作ってみてください』といわれると途端に作れなくなりますね。おそらく、失敗したくない、最初からきちんとしたものを作りたいという気持ちが強いのだと思います。

シリコンバレーでは、ソフトウェアを作るとき、まずは粗削りでもいいから何かを作ってみて、そのあとで修正やアップデートを重ねながら修正していくことのほうが多いですし、エンジニアの多くがそういうマインドセットを持っています。しかし、日本ではそういう考え方の人がまだまだ少ないんです。

今回私たちが行うコードクリサリスでも、マインドセットの教育がとても重要だと考えています。プログラミングももちろん教えますが、それだけでなく、自分でサービスを作れるエンジニアになるために必要なことを、3カ月間ですべて学べるカリキュラムにしています。

世界で活躍したいならフルスタックのエンジニアを目指せ

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日曜日を除く週6日、毎日10時間以上かけてエンジニアとしての技術を学ぶ

そして、これから日本のエンジニアが、世界で活躍するためには何が必要なのでしょうか。paiza世代のエンジニアに向けてアドバイスをいただきました。


カニさん シリコンバレーでは、何よりもスキルと実績が重視されます。どういう会社を経験してきたか、そしてどういうスキルを持っているかです。

たとえ新卒でも、入社後にスキル面の研修をしてくれる会社なんてほとんどありません。そして、実力のある人は2、3年で会社を移るのが当たり前のため、転職活動では1社に長くいる人より何社もの経験を持っている人のほうが評価されやすいです。5社10社経験している人もよく見かけますよ。

日本では、入社後に手厚く研修をしてくれる会社があったり、1つの会社に長く勤めている人のほうが見栄えがよかったりする傾向があるようですが、それらとは逆といっていいでしょう。

最近はITと縁がなかったような歴史のある企業でも、自社内にテクノロジーの部門を作り、エンジニアを採用することが増えてきました。そういう流れもあって世界的にエンジニアが不足しています。即戦力としてのスキルがあれば、海外の企業に転職することもできるはずです。

ただし、よほど高いレベルでない限り、1つのことができるだけではエンジニアを続けていくのは難しいと思います。今後はフルスタックのエンジニアでないと生き残れないでしょう。自分1人でサービスを作れるようなエンジニアが求められていると感じますね。

フルスタックのエンジニアになるなんて大変そうだと思うかもしれませんが、今は以前と比べてスキルアップの手段が大幅に増えました。オンラインで無料もしくは安価にプログラミングを学習できるサービスも増えています。私たちはブートキャンプ型のサービスを提供していますが、コツコツと時間をかけて勉強し、スキルを伸ばすのもいいでしょう。実際にそうやってスキルアップしてシリコンバレーでエンジニアになった人もいます。

自分にあった方法でスキルを磨き、即戦力の自立型エンジニアを目指していけば、きっと道は開けてくると思います。

まとめ

日本人エンジニアは優秀なので、スキルだけでなく語学力やマインドセットを身につければ、もっともっと伸びる──。これをカニさんはインタビューの中で繰り返し語っていました。

プログラミングスキルを日々高めていくことは大前提ですが、いいエンジニアになるための要素はそれだけではありません。周りから求められるエンジニアであり続けるために、今後はより総合力を高めていく必要があるでしょう。

とはいえ、独学で実力を高めるのは相当に大変だと思います。カニさんが話していた通り、今はさまざまな学習方法があります。短期間で力を身に付けたい人にとってはコードクリサリスのようなブートキャンプ型のスクールが向いていますし、自分のペースでコツコツとスキルを積み重ねていきたい方には、paizaが運営する学習サービス「paizaラーニング」のような自習型のコンテンツもあります。自分に合った学習法を選ぶといいでしょう。

エンジニアはこれからも世の中に必要となり続ける職業です。コードクリサリスやpaizaラーニングなどの学習サービスを通じて、日本だけでなく世界から必要とされる人材がどんどん増えてほしいと思います。



コードクリサリスについて

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カニさんが代表を務める「コードクリサリス」では、現在第2期生を募集しています。10月9日から開始。応募や詳細は以下のリンクをご確認ください。
www.codechrysalis.io




paizaは、技術を追い続けることが仕事につながり、スキルのある人がきちんと評価される場を作ることで、日本のITエンジニアの地位向上を目指したいと考えています。

自分のスキルを磨いていきたいと考えている方におすすめなのが「paizaラーニング」。オンラインでプログラミングしながらスキルアップできる入門学習コンテンツです。初心者でも楽しくプログラミングの基本を学ぶことができます。

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そして、paizaでは、Webサービス開発企業などで求められるコーディング力や、テストケースを想定する力などが問われるプログラミングスキルチェック問題も提供しています。

paizaのスキルチェック

スキルチェックに挑戦した人は、その結果によってS・A・B・C・D・Eの6段階のランクを取得できます。必要なスキルランクを取得すれば、書類選考なしで企業の求人に応募することも可能です。「自分のプログラミングスキルを客観的に知りたい」「スキルを使って転職したい」という方は、ぜひチャレンジしてみてください。

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