Photo by University of Essex .
こんにちは。倉内です。
先日当ブログで、新しく入ったメンバーに早く活躍してもらうためにはオンボーディングで受け入れることが重要であるとお伝えしました。
中途入社のエンジニアがすぐ辞める!?定着率を上げるための対策とは - paiza開発日誌
そこでも少し紹介させていただいたのですが、今回はpaiza(ギノ)のオンボーディングを例に導入のきっかけや施策内容、運用後の改善プロセスなどをお伝えしたいと思います。
弊社は今でこそある程度安定した運用ができていますが、創業時数名の規模から現在の約50名という規模に成長する過程で、失敗を重ねて試行錯誤した歴史もあります。
スタートアップ企業でこれからオンボーディングを検討されている方にとって何か参考になる点がありましたら幸いです。
オンボーディング導入のきっかけ
paizaは2013年10月末にITエンジニアのための転職サイトとしてオープンしました。
その後paizaラーニング、paiza新卒、EN:TRY(未経験者向け転職サービス)を順次スタートさせ現在に至ります。
新しく入社した人に対してオンボーディングと呼べる取り組みを始めたのは2016年で、「HARD THINGS」という書籍を参考にたたき台をつくりました。
この本はオンボーディングの指南書ではなく、著者のベン・ホロウィッツ氏が起業家時代にIT系ベンチャー企業の経営で幾多の困難を乗り越えた経験をリアルにつづった本です。この中に社員の受け入れについて書かれているページがあります。
- 作者: ベン・ホロウィッツ,小澤隆生,滑川海彦、高橋信夫
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/04/17
- メディア: 単行本
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弊社では2016年ごろまで、入社した人には社長から会社概要・事業内容の説明を実施していただけで、あとは配属先に任せる形でした。
会社の規模が小さいうち(10名未満)は全員の顔が見えますし、誰が何をやっているかも分かるので問題ないんですよね。でも、規模が大きくなってくると組織が縦割りになりサービスごとに部署が分かれて社員同士のコミュニケーションが希薄になります。
すると入社時は配属先の情報しか得られないので、他の部署が何をしているかよく分からない、問題が発生した場合に誰に聞けばいいのか・解決できるのか分からないといった声が上がるようになりました。
また、入社後短期間で辞めてしまう人に退職理由をヒアリングしてみると、主原因ではないにしても意外とわずかなこと(書類の場所が分からないとか、基本的な情報が共有されてないとか…)で不満を持っていたことが分かりました。
そこで本格的に受け入れ方を整備する必要があると考えるようになりました。
ギノのオンボーディング施策
細かいものを含めるともっといろいろあるのですが、大枠では以下を実施してきました。
創業期
- 社長から会社概要・事業内容の説明
過渡期
- 社長から会社概要・事業内容の説明
- 入社した人向けマニュアルの提示
- 歓迎ランチ(新入社員+部署ごと)
- 新入社員に伝えるべき内容チェックリストの作成&消化
この過渡期にはいろいろ試行錯誤して実施したり、廃止したりした施策があります。
歓迎ランチは比較的早い時期にスタートさせ、新しく入社した人が既存社員ととりあえず1回は対面で話す機会をつくるようにしました。
チェックリストの消化は伝えるべきことの抜け漏れは防げますが、作成に時間がかかるなど負担が重いこともあり現在は廃止しています。
現在
- 社長から会社概要・事業内容の説明
- 入社した人向けマニュアルの提示
- 歓迎ランチ(新入社員+既存社員シャッフルで4~5名)
- 全部署のリーダーがオリエンテーション実施
- 入社から1ヶ月のスケジュール提示+当期の目標設定
- 入社6ヶ月までの定期的な人事面談
- 所属部署以外のミーティングにゲスト参加
歓迎ランチは当初、新入社員+部署ごとの実施でしたが、既存社員が毎回同じメンバーになってしまうので現在は全社でシャッフル選出としています。組織を横断したコミュニケーションの活性化は既存社員にもよい影響を与えます。
最近始めた取り組みとして、リーダーからのオリエンテーションで概要を理解したあと、他部署のミーティングに参加して理解を深めてもらっています。
入社して間もない人のゲスト参加は、中にいると忘れがちだったり気づかなかったりした視点から意見がもらえるので既存社員にとってもよい刺激になります。
なお、上記に挙げた項目は職種関係なく実施している取り組みなので配属先でのオンボーディングは別にあります。
受け入れ部署は新入社員が「まず1ヶ月くらいで完了できるタスクで、分かりやすく成果が出せ、達成感があるもの」を考えることになっています。この取り組みは2017年に始めました。
本来の業務がある中で各部署が計画を立てるのは大変な面もありますが、オンボーディングの大切さを周知し実現しています。
ちょうど今月入社された方へリーダー(こちらの記事に出てきた元エンジニアの転職アドバイザーです)がオリエンテーションを実施していたので撮影させてもらいました。
このように画面や資料を見せながら業務内容などをお伝えして、疑問点があれば適宜会話しながら進めていきます。
両者とも撮影と聞いて緊張気味…。このあとはもっと和やかな雰囲気になっていました。
失敗から学んで改善したこと
採用段階からオンボーディングプロセスは始まっている
「オンボーディングって入社後の受け入れ方の話では?」と思うかもしれませんが、採用選考~入社前~入社後の一連の流れで取り組まないとうまくいきません。
弊社では最初に短期退職者が出たときに話を聞いたところ、「その人が会社に求めていること」と「会社が目指している方向」にズレがあったことが分かりました。
仕事のスキル・経験は十分だったとしても、会社に入って長く働いてもらうには、会社の理念や方針に共感してもらうことも大切です。これは入社後にどうこうできないので採用段階でしっかりと応募者に伝えなければいけません。
ただ、創業間もないころなど採用を社長が一人ですべてやってるときはいいかもしれませんが、会社規模が大きくなり人事や受け入れ先の部署にも採用に入ってもらうとどうしても人によってズレが出てきます。
そのズレをなくすために「会社として求める人物」「会社の哲学や行動指針」「ミッション・ビジョン」などを定義して明確にしました。
急いで採用したい場合「スキルさえ合致していれば…」と焦る気持ちもありますが、採用段階で会社の方針と合わないかもしれないと感じたときは考え直してみることも必要です。(もちろん共感できないと感じて応募者が辞退することも考えられます。)結局はミスマッチになってしまうので…。
入社後早い段階で成功体験をしてもらう
特に中途採用で入社した人は「即戦力で採用されたのだから早く成果を出さなければならない」というプレッシャーを感じています。本人だけでなく、既存の社員も期待を寄せているでしょう。
実は弊社でも中途採用した人が入社後なかなか成果を出せず、居場所がない状況になり早期退職させてしまった過去があります…。
そのときの反省として、さきほど挙げた「まず1ヶ月くらいで完了できるタスクで、分かりやすく成果が出せ、達成感があるもの」を受け入れ先に計画してもらうようになりました。
プロジェクト単位では半年や1年先にならないと結果が出ないというのであれば、入社後に短期間で成果を出せて周りからも評価される状況をつくる必要があります。
退職者が出たときこそ受け入れについて考え直す
オンボーディングは長い目で見ると会社にも従業員にもメリットがあるのですが、受け入れる側がやらなければならないことは増えるため既存社員にとっては大変さや煩わしさのほうが上回る可能性があります。
特に業績が好調で人も辞めていないと「このままで何も問題ないのになぜ?」と取り組みに理解が得られず、導入が難しいと感じたこともありました。
反対に業績が悪いと人が辞めるので、そのときに退職者に理由を聞いて、既存社員には「短期間で辞めてしまう人を減らすための取り組みをしようと思う」と言うとオンボーディングについて理解を得やすいです。
本当は人が辞めてしまう前に手を打てたほうがいいのは間違いありません。ただ、やはり失敗しないと気づけないことがあるのも事実なので、次は改善しようという切り替えも大切だと思います。
オンボーディングで大切なこと
Photo by Philip Taylor
導入後はブラッシュアップが必要
前述のとおり組織が小さいときはうまくいっていたのに、大きくなるとうまくいかなくなることがあります。一般的にベンチャー企業では30人の壁、50人の壁、100人の壁があり、そのタイミングで組織課題に直面しやすいと言われています。
オンボーディングの施策も導入したら終わりではなく、実際に運用して効果検証や振り返りを実施し、組織の規模に合わせてブラッシュアップすることが大切です。
弊社でも実施内容を一部変えたり、新しく追加もしくは合わなくなってきたものを廃止したりしています。
他部署の仕事を知ろうというマインドを育てる
入社直後に配属先の部署以外と関わるタイミングがないと、そのあとも関わることがないまま一つ向こうのデスクに座ってる人たちの仕事内容も知らない…という状況になることがあります。
オンボーディングで気をつけたいポイントの1つに「受け入れ部署やチームだけではなく組織全体で準備・歓迎するマインドを持つ」があるのですが、他者に関心のない組織では実現が難しいでしょう。
取り組みのひとつとして、弊社ではSlackにリリースノートチャンネルを作成し、たとえば「スマホ用LPをリリースしました!」「paiza新卒に企業インタビューを公開しました!」「paizaラーニングにLaravelの新レッスンが追加されました!」などなど部署関係なく投稿し共有できるようにしています。
自分の仕事が会社の中でどういう位置づけで、他の部署とはどんな関わりがあるのかを知っていると問題が出たときに「これは○○さんに意見をもらうといいかも」ということも考えられます。
まとめ
今回はギノが実施しているオンボーディングについてお話ししてきました。
弊社もまだまだ課題点はあり、日々試行錯誤しているところではありますが、実際オンボーディングを取り入れてから入社前後のギャップを理由にした短期退職は減りました。
昨年転職してきた身としても、やはり受け入れ時にいろいろやってもらえたことで「これから頑張っていこう!」と思うことができました。
中途採用は即戦力かもしれませんが、新入社員であることには変わりありません。早く馴染んでもらって、パフォーマンスを出してもらったほうが絶対会社としてはプラスになるはずです。
それには採用担当者だけが張り切ってもダメで(もちろん張り切るのはいいことですが)全社的にオンボーディングの重要性を浸透させて、みんなでやっていこうという土台をつくることが大切です。
paizaでは、ITエンジニアを採用したい企業様向けに採用基準の定め方や面接の進め方などについてもサポートを実施しております。
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まずはスキルチェックだけ、という使い方もできます。すぐには転職を考えていない方でも、自分のプログラミングスキルを客観的に知ることができますので、興味がある方はぜひ一度ご覧ください。