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こんにちは。倉内です。
ITエンジニアのキャリアパスというと、PM(プロジェクトマネジャー)になりマネジメントにシフトする、もしくは技術力でチームを引っ張るテックリード(リードエンジニア)になるなどが浮かぶでしょうか。
ただ、もう少し視野を広げてみると「エンジニア経験を生かせる、少し軸を変えたキャリアパス」というのもあります。
そこで今回は、開発職やマネジメント職含め、エンジニアのキャリアパスをまとめてご紹介したいと思います。現職を続けるにしても、転職するにしてもどのような選択肢があるか知っておいて損はありません。
経験を生かして、今とは違う仕事にチャレンジしたいと思っている方もぜひ参考にしてみてください。
なお本記事では、おもに開発系のエンジニア職から目指すキャリアパスを想定しています。
エンジニアとしてのキャリアパス
技術をさらに高める
テックリード(リードエンジニア)
テックリードは、エンジニアチームの技術リーダーの役割を担います。
エンジニアチームの中でも技術的な知見や知識が豊富で、技術的にチームをリードできる人であることが求められます。具体的には、コードレビューでの適切なアドバイスができる、コードの品質を管理できる、エンジニアチームの生産性を可能な限り上げる…などが必要とされます。
また、チームのメンター役・相談役になったり、進捗管理をおこなったりと仕事内容は幅広いです。
リードすると書きましたが、マネジャーではありません。あくまでメンバーと目線を合わせながら、チームをプロジェクトのゴールに向かわせるのが役割です。
ITスペシャリスト
IPAが定めるITスキル標準(ITSS)において、「6つの専門分野において一定のスキルを有するエンジニア」と定義されているのがITスペシャリストです。
6つの専門分野とはプラットフォーム、ネットワーク、データベース、アプリケーション共通基盤、システム管理、セキュリティを指します。
また、上記の分野に限らず、幅広く深いITの知識や技術力にもとづいた、特定もしくは複数の分野について高度な専門性を持つエンジニアの総称でもあります。
開発スキル・知識に加えて、上記のインフラ分野の知識が必要とされ、プロジェクトの設計段階から導入までの工程で専門家として適切な意見を求められます。
ITアーキテクト
ITアーキテクトもITスペシャリストと同じくIPAが定義していて、ITに関する高度な知見をもとに経営課題・業務課題を解決するためのIT戦略立案、推進・実行を担当します。
「ITコンサルタントと似ているのでは?」と思う人も多いのですが、ITコンサルタントが顧客の課題解決を重視している一方、ITアーキテクトはその名の通り、技術的な観点から最適なシステム基盤を「設計する」ことがもっとも大切な役割です。
ITアーキテクトは、ITスペシャリストのスキルにさらに経営的視点が必要とされます。ネットワークやデータベース、セキュリティなどを含む技術に対する幅広い知識に加え、経営的視点も求められる上位職種のため、エンジニアとしてある程度経験を積んでから目指す方が多いようです。
なお、ITスペシャリストとITアーキテクトに必要なスキルはIPAが提示しています。
プロジェクトをマネジメントする
PL(プロジェクトリーダー)
PM(プロジェクトマネジャー)
プロジェクト管理をするには、まず現場で開発経験を積んだあと、PL(プロジェクトリーダー、現場責任者)を経てPM(プロジェクトマネジャー、プロジェクト責任者)になるというのが多いですね。
PMは開発現場で手を動かすことはせず、顧客との要件調整、プロジェクトのスケジュールや人員調整、予算管理などがおもな役割となります。中でも受託開発においては、成果物を期日までにお客さまへ納品することがもっとも重要な使命となります。
プロジェクトの予算、スケジュール、システムの品質はもちろん、メンバー(受託では自社の社員だけでなく、発注元および外注の要員も含みます)のマネジメントも欠かせません。
特に規模が大きい案件ではプロジェクトの成否を左右する非常に重要な役割で、単にチームメンバーとのコミュニケーション能力だけでなく顧客との交渉力まで問われます。
エンジニア組織をマネジメントする
EM(エンジニアリングマネジャー)
エンジニアリングマネジャーは、業務内容が多岐にわたり、企業ごとに求められる役割も異なる場合が多いため定義が難しいポジションだと言われています。
基本的にはエンジニア組織のメンバーの教育やキャリアアップをサポートする「ピープルマネジメント」と業務において技術面をサポートする「テクノロジーマネジメント」を担うことが多いと考えてよいでしょう。
前述のテックリードが技術的な部分に重きを置いているのに対し、エンジニアリングマネジャーは開発チームの働きやキャリアまでサポートすることが求められます。
とはいえ明確な線引きは難しく、役割が重なる部分もあります。
PDM(プロダクトマネジャー)
ビジネスにおけるプロダクト(製品、システムの機能など)の成功にフォーカスする役割がプロダクトマネジャーです。
ユーザーニーズを深く理解し、市場や競合他社に対する分析、プロダクトが果たすべき目的(ビジョン)は何かを定め、それを実現するためにチームをまとめることを求められます。
そのため特に近年はプロダクトと言いながら、企画やマーケティング、広報(ブランディング)、ユーザーのUI/UX体験向上など幅広い役割を担うことが多くなってきました。
ビジネスとテクノロジー、クリエイティブのバランスをうまく取り、プロダクトの成功を舵取りするのがプロダクトマネジャーの使命だと言えるでしょう。
VPoE
VPoE(Vice President of Engineering)は、エンジニア組織のマネジメント責任者です。
これまで紹介したEM、PDMと担当領域が重なる部分もありますが、特にVPoEはエンジニアのピープルマネジメントやチームビルディングにフォーカスしていると考えていただくとよいかと思います。
エンジニアチームの技術力向上によるサービス発展をサポートするスキル、チームを成功に導くための統率力、エンジニアが業務をおこないやすいよう他部署と円滑なコミュニケーションをとる調整力…などが求められます。
統率力があるだけではなく、人間関係を良好に保てる・悩みや不満を話しやすいといったコミュニケーション能力に長け、課題解決に取り組むのが得意といった人が向いています。
(参考)現役のVPoEが語る「VPoEの使命とやりがい」とは?――エンジニア組織を抱える会社にこの役職が必要となる理由:CodeZine(コードジン)
企業組織をマネジメントする
CTO
CTO(Chief Technology Officer)は日本語で「最高技術責任者」と訳されます。
VPoEがエンジニアチームのマネジャーとして存在しているのに対して、CTOは経営の立場でエンジニアを含めた企業組織を統率する役割を持っています。
どのような技術を活用し、どんなシステムを作ればユーザーニーズに沿ったものを生み出すことができ、会社がより利益を出せるかを追求します。そして、それをエンジニアチームが実現するための道筋を示すことも大切な役割です。
CTOはエンジニア職のトップであるため、技術力はもちろん経営、マネジメントスキルが必須です。
IT関連職へのキャリアチェンジ
研究開発(R&D)
IT業界での研究開発は、新たなIT製品の開発や技術そのものの開発に携わる仕事です。新製品開発の核となる役割が求められる高度な職種と言えるでしょう。
ソフトウェアとハードウェアどちらにも関わることになり、科学的思考力やクリエイティビティ、地道な研究を続ける粘り強さなどが求められます。また、最先端技術についての情報を集めたり、それらを活用して何か新しい仕組みを考えたりすることが好きという好奇心も必要です。
転職時にエンジニアの経験をアピールするなら「開発業務において発生した問題をどのように解決に導いたか」という「問題解決力」や「洞察力・分析力」を具体的に述べられるようにしておくといいですね。
研究開発といっても、ひとりで黙々と進めるポジションばかりではなく、チームで連携し、技術部門以外の人たちとも関わりを持ってやっていくポジションもあります。そのため、転職時はエンジニアチームでのリーダー経験などがよいアピール材料になる場合もあるでしょう。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、おもに企業の経営戦略に基づいて、IT戦略の策定や企画立案をします。
「ITによって顧客の利益をどう上げられるか」を考える必要があるためITの知識は大前提として、経営の知識、論理的思考や問題解決能力が必要になります。また、経営者(経営層・幹部)を納得させられるだけのコミュニケーション能力も求められます。
元請けのSIerのSE職だとすでに近しいことを経験しているためITコンサルタントへ転身したいと考えている人は多いかもしれません。
年齢や経験、所属する企業によっても大きく違うため一概には言えませんが、経済産業省の調査結果によりますと、ITコンサルタントの平均年収は928.5万円でIT関連職の中でもかなり高い傾向にあります。
Webディレクター
おもにWebコンテンツの制作進行管理をするWebディレクターという職種があります。
コミュニケーション能力とスケジュール管理力が必須で、デザイナーやエンジニアはもちろん、ビジネスサイドの部署、ときには経営陣など複数の立場や職種の人たちと連携し、調整しながら制作を円滑に進めることが仕事です。
Webディレクターは自分でプログラミングをすることはないかもしれませんが、実際に手を動かした経験があったほうがより進行管理がスムーズにいくことが多いです。特にフロントエンドの知識があると市場価値も高まります。
合わせてWebマーケティング(SEO、リスティング広告、SNS活用など)の知識が必要とされることも多いでしょう。
QAエンジニア
エンジニアとついていますが、自らがコードを書くわけではなく、ソフトウェアやアプリケーションの品質保証(QA:Quality Assurance)をおこなうのがQAエンジニアの仕事です。
システムの品質目標を設定し、開発部門が作ったシステムをユーザー目線でテストをして品質に問題がないかをチェックする重要な役割です。
設計書やマニュアルなどのドキュメント検査、テスト工程から納品までのシステムの品質検査など複数の工程にたずさわります。
システム開発に関する経験・知識が大いに生かせますし、近年はセキュリティの観点も必要になっているためSEからQAエンジニアになる人が多くいます。
paiza転職ではQAエンジニアへキャリアチェンジした方へのインタビュー記事を公開しています。ぜひごらんください。
セールスエンジニア
技術営業ともいい、本来の営業職の人が自社製品・サービスを販売するのを技術的な面でサポートする仕事です。
特に専門性の高い業務システムなどは、営業のみでお客さまに説明をするのが難しかったり、技術的な質問をされたときに困ったりすることもあり、そういった場合にセールスエンジニアが活躍します。
また、それだけでなく、お客さまがシステム(もしくはIT技術)をビジネスにうまく生かせるよう提案や助言もおこないます。
SEと似ているところがありますが、セールスエンジニアはシステム開発の工程を担当することはありません。ただし、お客さまにシステムのデモンストレーション等をおこなう場合があり、そのためにデモ用のコーディングが必要になることもあります。
社内SE
ユーザー企業の情報システム部門に所属するエンジニアを「社内SE」と呼びます。どちらかといえば、なにかの専門領域に特化するよりは、ゼネラリスト寄りの仕事になります。
業務としては、社内ネットワークの管理、社内システムの開発(外注の場合もあり)や保守、PC手配や故障したときの対応などなど…とにかく幅広く企業の中のITに関連すること全般を担当します。
社員がPCを使う上で困ったときに手を貸したり調査してあげたりといったカスタマーサポートのような役割を担うこともあります。
SIerのSEから転向する人も多く、開発系でもインフラ系でもエンジニアとしての経験が生きる場面が多い仕事です。
番外編
フリーランスになる
役職や職種とは違いますが、企業に所属するエンジニアからフリーランスへの転向も選択肢のひとつなので簡単に紹介します。
定義があるわけではないので未経験からフリーランスのエンジニアを目指すこともできますが、ある程度は企業でエンジニアリングとは何かを経験してからのほうがよいかなと思います。
技術力はもちろん、自分で仕事を獲得する営業力やスケジュール、諸経費などを管理するマネジメントスキルも必要になります。
フリーランスも会社員もメリット・デメリットがあります。両方を経験したエンジニア(で結果的に会社員のメリットが大きいと感じた人)のブログ記事もありますので参考にしてみてください。
起業をする
エンジニアとして経験を積み、マネジメントや経営視点での働きも長くなってくると起業という選択肢が出てくると思います。(もちろん若いうちに起業する方も多いですが)
簡単なことではありませんが、ITエンジニアは比較的起業向きの職種だと言われていることも多く、先人たちの体験談も多く見ることができます。
少し古いですが弊社社長の実体験の記事も公開しています。
まとめ
エンジニアのキャリアパスについて、さまざまな仕事や役割を見てきました。
知っていたものも多いかもしれませんが、改めて見てみると選択肢が思っていたより多いことに気づいたのではないでしょうか。
paiza転職でも、CTOやテックリードといった職種から、PMやコンサルタントに近い業務内容の募集までさまざまな求人票を掲載しています。
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