こんにちは。倉内です。
昨年の夏ごろ、東京オリンピック期間中の東京の混雑についての記事を書きました。
開催期間中も気になりますが、終わったあとどうなるのかも気になりますよね。過去開催国では、オリンピックに合わせて作った施設が廃墟になってゴーストタウン化してるとか、景気が悪くなって失業率が上がったとか聞きますし…。
現在、個人的には普通に生活していてオリンピック特需を感じる場面はないのですが(公共事業に関わる仕事をされてる方は感じてますかね…?)日本も開催後に何かしら影響があるものと思われます。
そこで今回は東京五輪の開催後、日本の景気がどうなると予想されているのか調べてみました。
2020年東京五輪の経済効果は?
開催後の話をする前に、開催前・開催中にはどんなオリンピック特需があるのか簡単に見ておきます。
分かりやすいのは建設業界でしょう。競技で利用する施設の建設(新国立競技場など)は何かと話題にもなっていますし、道路やマンション、宿泊施設の建設も続いており、もっとも影響を受けている業界と言えます。経済産業省のサイトでは2016年と情報はやや古いですが、「建設業とオリンピック」というページで取り上げています。
他にも期間中は訪日客が大幅に増えると予想されるので、飲食店やホテルなどのサービス業、そして警備業界も五輪の恩恵を大きく受けそうです。
一方、IT業界はどうでしょうか? 何かと人手不足が言われるIT業界ですが、経済産業省の資料(2015年時点)では東京五輪に向けて特にセキュリティ関連の人材の需要が高まり、2020年には19.3万人不足すると言われていました。
出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました (経済産業省)
また、総務省は2014年に「オリンピック・パラリンピックとICTについて」という資料を公開していました。
この資料では、五輪期間中どういったICTサービスが必要になるかが挙げられています。たとえば、渋滞緩和に向けた交通情報のビッグデータ活用、多言語で乗換案内や周辺情報検索ができるデジタルサイネージ、海外からの旅行者のための電子マネーの整備などです。
他にも試合の模様を高画質かつ安定してリアルタイム中継するための映像技術やネットワークなどインフラ面での整備も必要になります。
これらに対応するために五輪需要が発生している企業もあるでしょう。(特需と言いつつ、実際対応する現場の人は大変でしょうが……)
今はもう2020年2月なので実際整備が進んだのかも気になります。2019年3月に公開された各施策の進捗状況などが掲載されている資料を見てみます。
「2020年社会全体のICT化 アクションプラン進捗状況」あたりを読むと、多言語音声翻訳システムやデジタルサイネージの普及は思ったより進んでいるみたいです。結構いろいろ実施されているんですね。
具体的な経済効果については、準備局から試算結果の資料が公表されているので参考にしてみてください。開催前・中・後、および産業別でも見られます。
2020年東京五輪が終わったら
五輪後の日本の景気予測
なんとなく五輪後は不況が来るというイメージがありますよね。実際に開催後は消費や投資が失速することが懸念されており、景気を支えてきた国内需要が持ちこたえられないのではと不安視する意見もあります。
ただ、広く経済予測を見てみると、意外にもそれほど景気が落ち込むという意見ばかりではないみたいです。
たとえば建設業界では、五輪に向けての需要は開催後にはもちろんなくなりますが、建設業界全体でいうと2025年に開催される大阪万博、2027年に開業を予定しているリニア新幹線に関わる工事など、しばらく大規模な需要が続くためそれほど落ち込まないという見方もあります。
ここではいくつかデータから読み解いてみましょう。まずは、IMFが公開している「世界経済見通し(WEO) 2020年1月改訂見直し」を見てみます。
一部抜粋すると、日本の経済成長のペースは2019年の1%から2020年の0.7%へ緩まると予測されていますが、これは10月の予測と比べるとそれぞれ0.1%ポイント、0.2%ポイントの引き上げとなっています。
出典:「世界経済見通し 2020年1月改訂見直し」(IMF)
2021年の成長率は、財政刺激策の効果が薄れるにつれて0.5%まで低下すると予想されていますが、これは潜在成長率に近い値であり特別下がる見通しにはなっていません。
また別のデータですが、世界銀行の予測では貿易や投資の回復が緩やかであるため、世界経済の成長を2.5%としており、これは前回見通し(2019年6月)から0.2ポイント下方修正されています。ただし、日本に限って見てみると前回の予測と変化はありません。
つづいて、こちらの記事「東京オリンピックが終わると、日本の景気は本当に悪くなるのか」も見てみましょう。
1964年の東京五輪と比較して書かれているのですが、「(1964年当時)10月10日の開会式に合わせるように、首都高速や東海道新幹線の運用が開始されました。」とあるとおり、当時は五輪開催に向けて国をあげての一大プロジェクトがいくつも動いていたことが分かります。
対して今の日本はそこまでの巨額な投資をする必要はないため、「オリンピックの崖」(五輪後の急激な経済の落ち込みのこと)は回避され、緩やかながらも景気回復が続くという見方をしているエコノミストもいるようです。
あとこの記事で面白いなと思ったのが、過去大会のデータから見る「メダルの獲得数が多いと日経平均株価が上昇する」という部分です。
出典:「東京オリンピックが終わると、日本の景気は本当に悪くなるのか」(MONEY PLUS)「金メダル数と当時の世界経済に占める名目GDPのシェアの相関係数は0.868」とのことで、相関係数は+1に近いほど正の相関が強いので結構高い数値といえますね。
金メダルを多く取るとその国の人々の経済活動が活発化する…今回の東京五輪にも期待しましょう!
過去開催国の状況
ところで過去の開催国の経済が五輪後にどうなったかも気になりますよね。
直近7回の夏季大会開催国がどうだったかを見ると、実はGDPがマイナス成長になったのはスペイン(開催地:バルセロナ、1992年)だけということが分かっています。そしてスペインも景気悪化の直接原因はヨーロッパの通貨危機と言われています。
一方、GDPの伸びが落ちた国は7つ中4つあります。しかしよくよく見てみると中国(開催地:北京、2008年)はリーマンショック(2009年)、オーストラリア(開催地:シドニー、2000年)はITバブルの崩壊(2001年)など、オリンピック特需からの落ち込みではなく他の要因が強かったという見方が有力です。
出典:みずほインサイト「日本経済は五輪ロスに陥るのか」(みずほ総合研究所)
そのため日本もどちらかというと「五輪が終わったから景気が悪くなる…」という心配をするよりも、米中の貿易摩擦など世界的な経済の動きを意識したほうがいいかもしれません。また、新型コロナウイルスが流行していることによる悪影響も懸念されます。
加えて日本はこれから少子高齢化がますます加速し、労働人口の減少が現実問題としてやってきますし…。
ちなみに「ブラジル(開催地:リオデジャネイロ、2016年)は開催後に深刻な不況に陥ったそうじゃないか」というのはおっしゃるとおりで、新興国の場合は遅れているインフラを一気に整えようと巨額のお金を投じるため反動が大きくなります。これは1964年の東京オリンピックと同じですね。
まとめ
東京五輪開催後の日本について、経済指標や過去開催国の状況なども踏まえて考えてきました。
IT業界においては、現代の日本で企業のビジネスはもちろん私たちの生活からIT技術が不要になることは考えづらいため、IT投資が多少減ることはあっても完全になくなることはありません。そのため就活・転職市場ともに五輪が終わったからといって企業が急に採用を絞ることはないと予想されています。
ただし、需要がなくならないといっても、必要とされているのはきちんと技術力のあるITエンジニアということは頭に入れておいたほうがいいでしょう。
プログラミングを学ぶハードルが昔に比べてぐっと下がった今、ITエンジニアに求められるレベルは上がっています。そして、これほど不足していると言われているIT人材が2030年は10万人余ると言われています。(参考:経済産業省「IT 人材需給に関する調査」)
そのためスキルをアップデートする努力をすること、自分を成長させられる環境を求めることが大切になってきます。今仕事があるからといって、何も努力をせずにあぐらをかいていると、自分が「余り物」側になってしまいかねません。
五輪開催後の経済状況に関わらず、ITエンジニアとして求められる人材であり続けるためにも自身の市場価値を高めていきたいですね。
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