今回は、エンジニアのみなさんに聞いた勉強法をご紹介していきます。
ITの技術は進化が早く、日々勉強に追われているエンジニアの方も多いかと思います。
勉強をするならやみくもに非効率な勉強をするよりも、なるべく時間をかけず効率的に勉強できたほうがよいでしょう。
そこで今回は、効果の出やすい勉強方法と非効率的な勉強方法についてご紹介します。
【目次】
勉強を始める前に
理解するための勉強と記憶するための勉強の違い
勉強には
- 理解するための勉強
- 記憶するための勉強
があり、それぞれに適した勉強法は異なります。
簡単に言うと
- 理解するための勉強は集中的に
- 記憶するための勉強は分散的に
取り組むのが効果的だといわれています。
たとえば、ある実験では「復習を集中的に4倍実行したグループは、一週間後に実施したテストの成績が優位に上がった」という結果が出ました。集中的な勉強は理解を深めてくれます。
しかし、さらに3週間後に再テストを実施したところ、4倍復習をしたグループは、ほかの通常量の復習をしたグループと変わらない成績となっていました。短期集中の勉強は、記憶として長続きはしないのです。
これ以外にもさまざまな研究や実験を通して、記憶(=知識の定着)のために勉強をするなら、短期集中ではなく、あえて時間を置いてから「以前勉強した内容を思い出す行為」が有効であると証明されています。
効率的に勉強するには「理解と記憶は別」ととらえた上で
- 理解するための集中的な復習
- 記憶するための分散した(=時間を置いた)復習
に取り組むのが重要となります。
<参考サイト>
The effect of overlearning on long‐term retention - Rohrer - 2005 - Applied Cognitive Psychology - Wiley Online Library
Running head: RETRIEVAL PRACTICE ENHANCES SPELLING
Participant Nonnaiveté and the reproducibility of cognitive psychology
知識の風化
経営思想家であり研究者でもあるリズ・ワイズマン氏によると「人類の知識は、5年で85%が価値を失う」そうです。
また「年間およそ30%の知識が時代遅れになる」とも言われています。実際に科学の世界でも、以前まで正しいとされていた説が新たな研究や論文によって否定される事態は頻繁に起きています。
The Power of Not Knowing | Liz Wiseman | BYU Speeches
これについて、エンジニアの方ならとくに共感できるのではないでしょうか。少し前の技術が最近になって陳腐化してしまうケースは、非常によくあるかと思います。
どんなに学んだ知識も数年後には価値を失ったり、時代遅れになったりしてしまう以上、勉強は「一度したら終わり」ではありません。
ただ逆に、過去に学んだことも「15%程度は5年以上生き残っている」わけですから、「今ある知識のどれが風化していて、どれはまだ通用するか」を考えるのも必要と言えるでしょう。
実は非効率な勉強方法
次に、昔から多くの人がしているけど非効率な勉強方法を紹介します。
本を一度読んだだけで終わる
本を一度読んだだけで、書かれている知識やスキルを習得できることはほとんどないでしょう。
また多くの研究で、人間は過去に覚えた知識をどんどん思い出しにくくなっていくことが確認されています。「エビングハウスの忘却曲線」は知っている人も多いでしょう。「そもそも人間の脳は忘れるようにできている」といった研究もあります。
The Persistence and Transience of Memory
もちろん趣味で読んでいるだけならよいのですが、勉強のために読むのであれば、ゴールはただ読み終えることでなく知識を得て使うことのはずです。
前述の通り、知識を定着させるには思い出す行為が大事とされています。復習しないと知識はどんどん消えていくのです。復習して初めて知識を得られるのです。
本の中身をそのままノートに写す
本の内容をノートにまとめるのは無駄とまでは言いませんが、もったいない行為です。なぜなら復習に使いにくいからです。
要約という行為自体には、それなりの学習効果があります。読んだり学んだりした自分の言葉で書き直す行為自体は、科学的にも有効だとされています。
ただ繰り返しになりますが、記憶にはその内容を思い出す行為が必要です。すべての内容がまとめられたノートは、時間を置いて見直しても「思い出す」行為には使えません。
詳しくは後述しますが、「思い出すトリガーになること」を書いたノートであれば復習に使えます。
目的や分野ごとにノートをわける
繰り返しになりますが、勉強した内容を定着させるには何度も見直して復習する必要があります。
そのためにはノートの見直しが効果的ですが、持ち歩いたり見直したりするのに手間が増えると、習慣化が妨げられてしまうでしょう。
ハーバード大で心理学を研究しているショーンエイカー博士は、「ある行動にかかる時間を20秒短縮するだけで習慣化しやすくなる」という20秒ルールを提唱しています。加えて「ジャムの法則」という法則の研究では、「選択肢が多いほど人間は決断できなくなる」という実験結果が出ています。
When Choice is Demotivating: Can One Desire Too Much of a Good Thing?
学生時代の延長で目的(科目)ごとにノートをわける人は多いかと思いますが、ノートを選んで書き分けたり持ち運んだりするコストをなくすためには一冊に統合したほうがよいでしょう。
長時間勉強する
科学的に「長時間勉強し続けること」はあまり効果的でないとされています。
人間の集中力は「どれだけ訓練した人でも4時間程度しか持たない」と言われているのです。また、さまざまなデータで「週30時間以上同じ作業を続けると成果が落ち始める」ことも確認されています。
For Impact | The Suddes Group | 4 Hours of Deep Work Each Day - For Impact | The Suddes Group
座って静かに勉強する
図書館やカフェで座って静かに勉強している人は多いと思いますが、科学的にはこれも効率的ではありません。人間は立っていた方が脳の認知機能が高まります。また、運動しながら勉強することでも勉強効率は向上することがわかっています。「座って勉強するほうがよい」というデータはありません。
The Evaluation of the Impact of a Stand-Biased Desk on Energy Expenditure and Physical Activity for Elementary School Students - PMC
Unexpected Dual Task Benefits on Cycling in Parkinson Disease and Healthy Adults: A Neuro-Behavioral Model | PLOS ONE
また静かに黙々と勉強するよりも、勉強している内容を口に出したり独り言を言ったりしながら勉強をしたほうが、理解力や記憶力が高まることもわかっています。
This time it’s personal: the memory benefit of hearing oneself
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001691811001867
赤ペンや赤い暗記シートを使う
多くの人は、ノートづくりやマーキング、答え合わせなどに赤ペンを使うかと思います。学生時代に赤シートを使っての暗記をした経験がある人も多いでしょう。
しかし、研究で「赤色はテストの成績を下げる」ことがわかっています。実際にテスト用紙の表紙をさまざまな色にして実験したところ、赤のときだけ被験者の成績が落ちたそうです。それどころか、名前欄の枠を赤にしただけでも同じ効果があったそうです。
心理学的にも赤は人にストレスを与え、積極性を下げる効果があるとわかっています。
Romantic red: red enhances men's attraction to women
Red enhances human performance in contests | Nature
実践できる勉強法
ここまでの話を踏まえた、実践しやすい勉強法を紹介します。
なにを勉強するか考える
勉強する前にはまず、「何を勉強するか」を考えましょう。世の中に「勉強したほうがいいこと」は多すぎて、すべてを勉強するのは不可能です。
また前述の通り、人間が集中して勉強できる時間は最大でも4時間程度と言われています。この時間を有効活用するためには、まず「何を勉強するのか」を考えるのが不可欠です。
勉強目的での読書も「この本から何を学ぶのか」を考えておくことで、理解度が向上するとわかっています。
David W. Concepción, Reading Philosophy with Background Knowledge and Metacognition - PhilPapers
目次をしっかり読む
勉強目的で本を読むのであれば、まず目次をしっかり読みましょう。
理由は「全体像を把握するため」と「この本から学ぶことを明確化するため(どこを読むのか決めるため)」です。これは読書に対するモチベーションや集中力、理解度の向上に役立ちます。
目次を読んだあとは、それぞれの項目について「ここではなにが書かれているのだろう」と考えながら読んでいくとよいでしょう。
ノートは復習のために使う
繰り返しになりますが、人間の記憶は「思い出す行為」の繰り返しで定着します。そのため、ノートには1から10まで書くのではなく、勉強した内容のかけらを書いておくのが効果的です。
たとえば、メンタリストのDaiGoさんが紹介していた「3ワードノート術」があります。これは、読書中に出てきた覚えたいトピックを3つのキーワードにまとめて、それだけをノートに書く方法です。
どのようなことも3つのキーワードしか書けないため、あとから読み返したときに「なんのキーワードだっけ?」と思い出す行程が発生します。ページ数も併記しておけば、思い出せないことは本を読み返して確認できます。
復習は一週間おきにやる
「復習は一定期間ごとにやるのが効果的」という実験結果があります。この実験は「5日ごと」に復習をしていましたが、曜日と紐づけると習慣化しやすいため、5日〜1週間ごとに復習するとよいでしょう。
また復習する回数は、ノートにメモしたキーワードを見て「完全に思い出せた」という経験を合計5回ほど繰り返せば十分という研究があります。
復習を繰り返して5回思い出せたら、その知識をある程度定着させられたと考えてよいでしょう。
近しい内容の本を何冊か読む
勉強したい分野がある場合、その分野の本や近しい内容の本を複数冊読むとよいでしょう。
一冊だけだと誤った情報や古い手法を得てしまう可能性もありますが、複数冊読めば知識の妥当性もある程度確かめられます。
何冊か読めばある程度の知識が頭に入るため、2冊目以降の読書もスムーズになります。さらに同じような内容に触れる機会も増えるため、思い出す復習もできて効率的です。
人に話す、伝える
音読したり誰かに話したりすることで記憶の定着率が上がるという実験結果がいくつかあります。覚えたての知識は、声に出すと記憶の定着がはかどるようです。
人と話さなくても「話すように声に出す」「勉強内容を音読する」だけでも効果があるため、独り言を言いながら勉強するのもよいでしょう。声を発するという行為そのものが、脳に作用する効果もあるそうです。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1053810015001518
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001691811001867
パターン分類記憶法
パターン分類とは「複数の解答パターンから現在の問題に最適なパターンを引き出す能力」です。数学が得意な人や将棋やチェスなどのプロは、この能力に長けていることがわかっています。
エンジニアがプログラミングをして課題を解決する際は、目の前の問題を細かく分解しつつ、どのように実現していくかを見定める必要があります。そのためパターン分類の能力は、プログラミングスキルにも影響があると言えるでしょう。
パターン分類記憶法は、下記をひたすら繰り返すだけです。
- 問題を大量に用意する
- 1分間など、短時間で解き方を見極める(実際に解かなくてもOK)
- 答えを見て、見極めが正しいかを確認する
これは短時間での繰り返しが重要なため、ある程度基礎知識がある問題に対して実行するのが適切です。エンジニアの場合、たとえばプログラミングコンテストの過去問などを用意して行うとよいでしょう。
<参考文献>
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