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こんにちは、谷口です。
これから初めての転職を考えているITエンジニアの皆さん、突然ですがご年齢はおいくつですか?
ITエンジニアに限ったことではありませんが、応募者の年齢によって、企業が求めるスキルや経験というのは変わるものです。
日本には雇用機会均等法があり、雇用に関して年齢に制限をつけることは禁止されています。また、技術者というのはその本分である技術をもって評価をされるべき職業です。
ただ現実的に考えて、20代の上司に40代の部下がつく……というようなパターンはまだまだ少なく、もし自分がその立場だと考えたら、少なからず抵抗感を感じてしまう方も多いと思います。日本にはまだ年功序列の名残がありますし、年齢によってある程度見られ方が変わってしまう傾向は避けられないのが現状です。
初めての転職を考えている方の中は、年齢によって企業からの見られ方・求められるものが変わるということを知らない方が多くいらっしゃいます。
実際に、例えば25歳の方と35歳の方が応募をしてきた場合、求められることはかなり変わるため、そこを意識しないで転職活動をしていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。
今回は、25歳・30歳・35歳のITエンジニアが転職をする際にそれぞれ求められることについて、実際に転職経験者や企業の採用担当の方に聞いた話をもとに考えてみました。年齢によって応募先の企業で求められることはどのように違うのでしょうか?
25歳のITエンジニアに求められること
◆伸びしろのある将来性
25歳前後のITエンジニアの方は、ほぼほぼ第二新卒として扱われます。大体26、7歳ぐらいまでなら「前職でまともにやってこれた人なら、うちの仕事は実務を通して覚えていってくれればいいかな」と思ってもらえることが多いでしょう。若い人が上の世代に比べて経験やスキルが浅いのは当たり前のことです。(もちろん募集要項にある技術レベルを満たしている必要はありますが……)
では25歳前後の転職者に何が求められているのかというと、ざっくり言えば「将来性」です。
「新しいことをどんどん学習したい」という意欲や吸収力、伸びしろや素直さといった部分は、上の世代に比べて20代の人が大きく勝る部分です。「これから人を育てていきたい」「うちの業務の色に染まってくれる人が欲しい」という企業は、こうした伸びしろのある若い人を採用したいと考えています。
ただ、だからと言って「じゃあスキルが浅い自分でも採用してもらえるかも!勉強は業務を通してやればいいんだろ!」というわけではありません。
「自分は開発スキルに関してはまだまだだ」という現状を客観的に受け止めて、「その中でも今後に活かせそうな業務経験が、この数年の中になかったか?」「経験の浅い自分が、どうしてこの企業で開発をしたいと思うのか?業務のどの部分に魅力を感じ、自分のどんな特性が向いてると思うのか?」というようなことを突き詰めて考え、言えるようにしておく必要はあります。その上で、応募先で使っている環境や言語等を自分の独学でできる範囲だけでも勉強し、「自分はまだまだですが、入社後少しでも役立てられるように勉強しています!」とアピールできるようにしておくとよいでしょう。
「入社したら覚えるし、若いから多少の穴があっても大丈夫だろ」という考えではなく、「その穴を何とか埋めよう」としている姿勢を見せることで、「自分は応募先の業務に興味があり、仕事への意欲が高く、将来性がある」ということを分かってもらえるようにするとよいでしょう。
「御社で使ってる技術は全然触ったことがないです。業務で使えば覚えられると思うので何も勉強していません」という人よりも、「御社で使っている技術は業務で使ったことがないので、自分で勉強をしています。このようなシステムを作ってみましたが、この部分は難しくて……」といったことが言える人の方が、意欲的で将来性がありそうに見えるのは当然のことだと思います。
◆業務を教えるに当たってのコミュ力
また、これから新しい業務を覚えていってもらうための素直さや、教わるに当たってのコミュニケーション力も重視されます。
コミュニケーション力というとアレルギー反応を起こす方もいらっしゃいますが、ここで言うコミュ力とは、よく就活の自己アピールで聞く「サークルの代表でした」的なものではありません。開発業務を進めるにあたって、「新しい仕事を素直に教わることができる」「なぜこういうコードを書いたかがきちんと説明できる」といった、開発業務における建設的なコミュニケーションが取れるかどうかということです。
面接中は、質問の受け答えやコーディング問題の回答説明から、意志の疎通がスムーズにできるか、「こういう処理ではあのアルゴリズムを使うと処理が早いと思ったのでこのようなコードを書きました」等というように自分の考えを説明できるか、たとえ回答に間違いがあっても指摘されたときに素直に受け止められるか等といった観点で見られています。
極端な例ですが、「僕はこの技術しか使わないんでこれはやりません」「このコード?特に考えずに書きましたけど……」という感じで会話が終わってしまっては、「新しいことを吸収していく気がなさそうだな……」「業務を教えていくのが難しいかも……」と思われてしまいます。
◆転職理由について
20代の場合、転職理由は筋が通っていればそこまで深く追求されないことが多いかと思います。(転職理由を聞かれない面接はほとんどないと思いますので、きちんと考えておく必要はありますよ!)
おおむね、「仕事を覚えていく中で、自分はもっとこういう方向性の開発がしたいんだということが分かった。前職ではそういった開発はできそうもないが、御社ではできそうなので転職することにした」というような感じで、ポジティブに「数年間仕事をしてみる中で、自分がやりたい開発とはこういう部分が違うと思った」「御社での業務はそれが解消されて、こういう部分が自分に合いそうだ」ということがきちんと言えていれば、企業側にも納得してもらいやすいでしょう。
もちろん「給料が安いから!」「人間関係が嫌だから!」というようなマイナスの理由だけではいけませんが、概ね上記のような筋の通った理由が言えていれば、20代の方はあまり突っ込まれずにさらっと済む傾向にあります。
転職理由というのは、逆に年齢を重ねれば重ねるほど「どうして今になって転職しようと思ったの?」「もっと若い頃に転職しようとは思わなかったの?」等と突っ込まれがちになるものです。
30歳のITエンジニアに求められること
◆20代より少し上がるハードル
20代半ばに比べて、30歳前後になると、転職のハードルは少し高くなります。ITエンジニアの転職市場は、30歳ぐらいが現実的な1つ目のボーダーラインとなってきます。
例えば、あなたがSIerからweb開発に転向するエンジニアだとしましょう。あなたがまだ20代であれば、企業も「教育して育てよう」という目で見てくれますが、30代になってしまうと、多くの企業は「既に同様のweb開発経験がある即戦力」を求めてきます。
企業側も、全く同じスキルレベルで20代の方と30代の方からの応募があった場合は、将来価値が高く、伸びしろがあると思われる20代の方を採用する場合が多いでしょう。
もちろん、だからと言って転職ができないというわけではありません。全然ありません。
ただ、「今までキャリアについて特に何も考えてこず、そのまま30歳を過ぎてしまった……今の会社にいても給料頭打ちだし、転職したいなあ……」というぼんやりした感じでいたという方は、かなり難しいかと思います。
◆多少の実績は必要になる
20代半ばの方であれば、大した実績がなくても「今までこういうプロジェクトに配属され、このような環境でで開発していました」という説明だけで済む場合もあると思います。しかし、やはり30歳前後になりますと、より具体的な実績や、前職で貢献してきたこと等の成果を求められます。
こういう話をすると「そんな華々しい実績なんかない!!」と言う方がいらっしゃいますが、30歳ぐらいになるまで一般的な開発業務をちゃんと続けてこれた方なら、「実績が全くない」ということは絶対にありません。
別に「売上〇億円の大ヒットアプリを開発した!」のような派手な業績ばかりがもてはやされるわけではありません。どういうシステムを作る何人ぐらいのプロジェクトにいて、このような機能を提案して追加したらこの処理がこれぐらい早くなったとか、初めて開発チームのリーダーやサブリーダーになったとき、後輩ができたときはこういうことに気を付けて業務を進めていたとか、そういったことも全て自分が貢献できた実績として、アピールすることができます。
今までどんな仕事をしてきたかというのは自分でも忘れていることが多いですので、一度自分がしたことを全て書き出してみるとよいかと思います。忘れていた自分の成果がきっと見つかると思います。面倒臭いかとは思いますが面接では必ず聞かれることですので、転職活動を始めた方や転職に興味がある方は一度やってみることをおすすめします。
◆30歳の転職、最近の傾向
ただ、最近は30歳くらいであれば、以前よりも少し敷居を下げて採用している企業も増えてきました。「以前は30歳ぐらいの方にはそれなりの卓越したスキルやリーダー経験等を求めて募集していましたが、最近は30歳前後でも、20代の人と同じようなレベル感で採用することが増えてきました」と言っていた採用担当者の方もいらっしゃるぐらいです。
あくまでも全体の傾向としてですが、最近は一般のITエンジニアの転職は売り手市場となっていますので、その影響を受けてのことだと思います。
30歳前後の方でも、受託開発から初めてWeb開発へ……といった業界転向も以前よりはずっと叶いやすい傾向にありますので、「いろいろ考えてたら30歳になってしまった……今から転職なんて無理かな……」という方も一度挑戦してみる価値はあると思います。
35歳のITエンジニアに求められること
35歳ぐらいになりますと、30歳前後以下の方に比べてさらにハードルは上がります。やはり、さすがに35歳を過ぎますと「初めての業界転向です!新しいことを学んで頑張ります!」といった、20代~30歳ぐらいの方と同じようなポジションへの転職は難しくなってくるかと思います。
この年代になると、即戦力であることを前提に、前職でそれなりの結果を残していること、成功実績や開発チームをまとめてきたリーダー経験、また年齢に見合った開発スキル等が求められます。
◆数字で説明できる実績
若いITエンジニアには将来価値や期待値が求められますが、35歳前後ともなるとベテラン扱いとなり、客観的な現在価値を見られます。そして、やはり20代の人と比べると、より困難な仕事を解決した結果が求められます。
30歳前後の人のところでも書きましたが、「そんな華々しい実績なんかない!」という方でも、これまでこういうプロジェクトに関わってきた、こんな提案をした、こんな技術を身につけ、こんなシステムを作ってきたというような結果は、これまで現場で開発をしてきた方なら誰しもあるはずです。
ここでは客観的に聞いた時に実績が把握しやすいよう、例えば何人ぐらいの開発チームの規模で、どれぐらいの期間をかけて開発したアプリで、これぐらいの数のユーザーがいる、これぐらいの売り上げが上がったというような、数字を使っての客観的な説明が求められます。(これが、例えば数年で売り上げがかなり上がりました!などという言いかたをされても、客観的にはどのような実績を出せたのか全く分かりません)
◆キャリアプランをちゃんと持っていること
35歳前後になりますと、面接等でもそろそろ自分が今後どういう方向性でやっていこうと考えているのかを聞かれることがあります。
例えば技術的に極めていきたい分野があるのか、CTOになり経営的なことも考えた開発・運営をしていきたいのか、自分でも事業を起ち上げたいのか、3年後、5年後、10年後はどうなっていたいのか……といった、キャリアプランに対する自分の軸が問われます。
ここで20代の方々であれば「一応こういうプランを考えていますがこれから仕事をする中で探っていきたいです……」といった感じも分かるのですが、35歳前後の方に「これから見つけていきたい」ということを言われると、「年齢的にはベテランなのに遅すぎるだろ……」「ちゃんと自分のキャリアについて考えてないな……」と思われてしまいます。
◆感度が高く、知的好奇心があること
一般的に30代半ばともなると、一通り仕事を覚えていろいろなことができるようになっている時期ですが、逆に言えば素直さを失いつつある時期でもあります。
とはいえ、転職というのはある程度文化の違う環境に飛び込んでいくわけですから、企業も「この分野の開発しか極めないことにしているので」「これはやりますがそれはやりません」「昔より新しいことを覚えるのが難しくなってきちゃって……」といった方に来られては困るわけです。
また、特にITエンジニアは新しいことに対する知的好奇心が衰えていないかという点を重視される職業です。業務に役立ちそうな新しい開発技術を積極的に取り入れることができるか、業界の動向や情報に敏感であるかといったことに関しては、やはり20代の人の方が吸収力が高く見られがちです。また、現実的に20代の頃と比べると、ハードな仕事や学習についていける体力も落ちているかと思います。
ですので、例えば「最近出たあのフレームワークを触っているんですが、業務で取り入れるとこういうメリットがありそうです」などといった感じで、自分は吸収力や柔軟性や好奇心が衰えていないという点を企業に分かってもらう必要があります。
初めての転職をする人が共通してやった方がいいこと
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初めての転職を考えている方々において、年代を問わず多くの方に言えることが、「自分の市場価値を知らなすぎる」ということです。
転職未経験者の中には、
- 年齢によって企業からの評価に大きな違いがあることを知らなかった
- 社内評価しか知らないので、自己評価と応募先からの評価が合致しない
- 就活以来自己アピールをする機会がなかったので、スキルの棚卸しができていない
というような方が非常に多いかと思います。
特に「30歳を過ぎるまで転職について全く考えてこなかった……」という方は、あくまでも社内基準での評価基準しか受けたことがなく、市場から厳しい評価をされた経験もありません。就活のときと同じように、「どっかが今より良い給料で拾ってくれるでしょう」と思っていては、足下をすくわれてしまいます。
社内での役職などもついていると、なおさら「自分はどこへ行ってもそれなりにできる」と思いがちです。しかし実際は、業務では自社の人間としか交流がなく、自分は本当に市場価値がある人材なのか、あくまでも社内でしか通用しないスキルなのかに気付けていないということがよくあります。
一般に、中途採用でITエンジニアを募集している企業が求めているスキルのレベル感を知らず、「転職活動を始めてみたら社外では全く通用しなかった……」という例もたびたび目にします。
◆キャリアとスキルの棚卸し
初めて転職する方は、ほとんどの方が新卒の就活のとき以来、自己アピールをするような機会はなかったのではないでしょうか。転職活動における面接は、応募者と企業が、「一緒に働くことでお互いのプラスになるかどうか」を見極める場です。そのため、どちらかが一方的に相手を評価するということはありませんが、短い時間でお互いを見極めなければならないため、的確に自分の魅力を伝えることが非常に重要となります。
面接の場では、もし自分がその企業に入ったら、どのような貢献が出来るかを相手に分かりやすい形でアピールする必要があります。自分にはどのようなスキルや経験があり、どんなことが得意で何ができるのかというようなことです。
しかし初めて転職する際には、キャリアの棚卸しができていなかったり、社外で求められるスキルや経験を知らないために、アピールポイントが的外れになってしまっているということがよくあります。これは非常にもったいないことです。
ですので転職活動をする際は、自分のキャリアの棚卸しをして、自分のこれまでの実績がアピールできる材料をちゃんと用意しておく必要があります。具体的な数字など客観的に見ても分かる実績を洗い出しながら書き起こしてみるとよいでしょう。
また、自分がエンジニアとしてどれくらいのスキルがあるのか、さらに自分の得意な言語に関する求人がどれぐらいあるのか等といったことは、転職活動をする場合に把握しておくべき大切な情報です。できれば勉強会等で社外のエンジニアのレベル感を押さえたり、社外のエンジニアと話をする機会を持ったりするなど、社外感度を高めておけるとよいでしょう。
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まとめ
ITエンジニアにとって大切なことは、「どこの会社で働くか」ではなくて「何を作るか」だと思います。
転職というのはあくまでも自分の望むキャリアに近づくための手段の一つであり、「転職すれば誰でも必ず幸せになれる!」というわけではありません。
キャリアとスキルの棚卸しをして、自分の将来ややりたいことについて考えることで、「やっぱり絶対に転職したい!」という想いが強くなる人もいれば、「やっぱり今の仕事を続けた方がよさそうだ」「今の会社ではこのプロジェクトが自分のやりたいことに近いから、今度異動願を出してみよう。それが通らなかったら転職を考えよう」といった考えにたどり着く方もいます。
転職するしないに関わらず、ITエンジニアとして活躍し続けるには、常に自分の市場価値を意識しながら仕事に取り組んでいくことがとても重要なことだと思います。自分の市場価値やキャリアプランなどについてを考えたことなかった人は、そのあたりからまず意識して考えてみるとよいかと思います。
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