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先日、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)会長の荻原紀男氏の「オリンピックにはボランティアで働くエンジニアが必要」という発言が大変話題となりました。
この発言を巡り、ボランティアでソフトウェアエンジニアを働かせることに対する批判や、ITエンジニアの地位の低さを問題視する声が多く挙がりました。
そんな中で今回は、本当に日本のITエンジニアの地位は低いのかどうか、海外のエンジニアの平均年収、他職種とも比べた水準を調べてみました。
■物価、職種、地域による比較
◆1.物価を考慮する
例えば日本の中だけでも、都心と地方では、物価(実感としては、普段消費するモノの値段というよりは家賃等の方が差が大きいと思います)は大きく異なります。同じ企業でも支社によっては都市手当てついたり……ということもあるわけですから、各国を比較するには物価についても考慮することが必要です。
地域によって、高いものと安いものには差があり、特に食品が高い地域もあれば、家賃が飛び抜けて高い地域等もあります。ですので、今回はビッグマック指数で調整をしてみます。
※ビッグマック指数(ビッグマックしすう、Big Mac index)は、各国の経済力を測るための、仮想的な通貨レート。マクドナルドで販売されているビッグマック1個の価格を比較することで得られる。
参照元
世界のビッグマック価格ランキング - 世界経済のネタ帳
ちなみに、最も高いスイスではビッグマック1個が845円するそうです…………お、おおぉすごい……。
◆2.他の職種と比較する
エンジニアの年収だけ見ていては、その国でのエンジニアの地位はわかりません。
ITエンジニア(SE/プログラマ、Software Developers and Programmers、 Software Engineer)、広報、マーケティング、人事、販売、経理、総務という軸で比較し、その中でエンジニアがどのような位置づけなのかも見てみたいと思います。
◆3.4か国で比較する
アメリカ、イギリス、シンガポールについても調べ、その中で日本のエンジニアがどのような位置づけになっているかを見てみます。
参照元
アメリカ:アメリカ労働統計局(2014年)
http://www.bls.gov/oes/2014/may/oes_nat.htm#41-0000
イギリス:Reed Online Ltd(2014)
http://www.reed.co.uk/average-salary
シンガポール:Salary Explorer
http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?loc=196&loctype=1
日本:DUDA(2014)
http://doda.jp/guide/heikin/
※エンジニアはSoftware Developers and Programmers、 Software Engineerの給与で調査。
■各国の職種別平均年収比較
まずは、各国の職種別の平均給与を円に変換した表です。
2014年12月の為替レートで計算
1米ドル:119.3円、1英ポンド:187.4円、1シンガポールドル:90.7円
参考:USドル/円の為替レートの推移(2018年1月~2021年6月) - 世界経済のネタ帳
これを先ほどのビッグマック指数で調整した金額になります。
◆アメリカ
アメリカはITエンジニアの平均給与がかなり高額です。ビッグマック指数調整後の額を比べても、日本より250万円ほど高額になっています。
為替レート変換だけで見ると1000万超えですごく高く見えますが、調整をすると結構下がりました。アメリカの物価は高いですね……。(特にシリコンバレーは物価も家賃もすごく高い地域です)
ただ、アメリカのITエンジニアというのは、大学等でコンピューターサイエンスを専攻した人のみがなれるような職種であり、実際に給与もかなり高くなっています。
米国NACE(the National Association of Colleges and Employers)の発表によると、2013新卒の学部別初任給は、平均$45,327、1位が工学の$62,062、2位がコンピューター・サイエンスの$58,547となっています。アメリカではコンピューターサイエンスがかなり重視されていることが分かります。
◆イギリス
イギリスもITエンジニアの給与水準は日本と比べ、ビッグマック指数で調整しても160万ほど高くなっています。平均給与額はアメリカより下がるものの、イギリスでもエンジニアは他の職種と比べて高給な職種だと言えます。
◆シンガポール
エンジニアは、全体の中ではそこまで高い給与水準ではなく、日本より少し高いぐらいの水準とあると言えます。シンガポールは食費は安いですが家賃が高く、全体の生活コストは高めであると考えられるので、実際は日本と同じくらい~少し上くらいの給与レンジになるかもしれません。
◆日本
平均給与は高い順にマーケティング、広報、人事、経理、ITエンジニア、総務、販売となっています。他国と比べても、エンジニアの給与水準がかなり低めに設定されていることが分かります。
■まとめ
やはりアメリカは、シリコンバレーだけでなく、ITエンジニアの給与レベルが高く、地位も高いということが分かります。
竜盛博さんの「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢」という書籍の17~19ページにも、次のような記述があります。
CNNによると、2015年の"Best Jobs in America"の第1位はSoftware Architectです。就職情報サイトとして有名なGlassdoor.comでは、Software Engineerが第2位になっています。(中略)
これらの順位はそれぞれ多少異なる基準によって評価されていますが、おおむね平均給与額、ジョブマーケットでの募集の数、ストレスレベルなど、「その仕事で幸せになれるか?」を基準にしたものです。また、評価される仕事の肩書にもばらつきがありますが、最近はトップ5にIT系の職業が入らないことはありません。
格差社会と言われる米国内で、エンジニアという職業は「選ばれた人たちの職業」と認識されています。上記のとおり高給なこともあり、多くの人にとって憧れの仕事になっています。
日本のIT産業は、事業会社でコストセンターから発注されるような業務効率改善システムの受託開発の割合が高く、「ITはコスト削減のための裏方的な仕事」という傾向がありました。そのため、「利益を上げるための業務ではないので、いかに安くそれなりに作るか」ということが重視されがちでした。
しかし今は、WebサービスやIoT、人工知能等の台頭により、高い品質のソフトウエアを作ることで大きな利益が得られる時代となっています。利益をあげるプロフィットセンター側のエンジニアとなれば、給与レンジを高めていくことも可能です。
日本のITエンジニア全体の評価には、まだまだ伸びしろがあります。paizaでも日本のエンジニアの地位向上のために頑張っていきたいと思います。
paizaは、技術を追い続けることが仕事につながり、スキルのある人がきちんと評価される場を作ることで、日本のITエンジニアの地位向上を目指したいと考えています。
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