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こんにちは。テクニカル・ライターの可知(@y_catch)です。
ITエンジニアの仕事は、大きなプロジェクトなどだと特に「誰のために、何のためやってるのか?」ということがわかりにくい仕事になりがちです。そういった誰のためなのかわらない仕事よりも、もっと自分の力で、身の回りや社会を良くすることが出来る社会性の高い仕事をしたいと思ったことはないでしょうか。
ITエンジニアの採用を積極的に行っている人事の方に話を聞くと、近頃こういった「社会貢献度の高い仕事をしたい」と語るエンジニアが増えているそうです。
これは転職志望者だけでなく、新卒の就職活動でも同様の傾向があります。「社会貢献 志望動機」で検索すると(社会貢献 志望動機 - Google 検索)、やはり「社会貢献したい」という志望動機を語る人は多いのですが、"そのアピールは逆効果"とアドバイスする就活情報の記事もたくさんヒットします。
では、なぜ社会貢献したがるエンジニアが目立つのでしょうか。そして、具体的にどうすれば社会貢献ができるのでしょうか。今回はこんなテーマについて考えてみたいと思います。
■企業で社会貢献度の高い仕事をするには
転職や就職の際に「エンジニアとして社会貢献したい」というと、念頭に置いているのは、対価を得ながらする仕事を思い浮かべている人が多いと思います。具体的には、社会に役立つ企業で勤務するというパターンと、企業活動をITでサポートするというパターンがあります。
◆社会インフラ系企業に勤務
すでに社会の役に立っている企業に勤務していれば、確実に社会貢献できる感じがしますよね。たとえば、通信や電力・交通機関といった大手の社会インフラ系企業のビジネスに関われば、それは立派な社会貢献になるはずです。
また、まったく新しい企業活動・ライフスタイルを産み出そうとするベンチャー企業やスタートアップ企業にも、世の中に新しいことを生み出すという社会貢献の機会がたくさんあるような感じを受けるでしょう。
■エンジニアが社会貢献したい理由
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エンジニアの方が、転職エージェントに「社会貢献したい」と語る理由のひとつは、「現在の仕事に手ごたえを感じていない」からでしょう。実際のところ、ほとんどの人にとって仕事の成果を本当に感じられる場面というのはさほど多いものではありません。またエンジニア自身、自分がどんな貢献をしているのかを説明する機会や言葉を意外と持っていないものです。
◆なぜ、エンジニアの仕事は手ごたえを感じにくいのか
会社の仕事で、手ごたえを感じにくいのは、企業活動の中で分業が進み、活動の一部しか見えないからだと思います。
たとえば、SIerに勤務していて、大企業や公共系のシステムの開発・運営に携われば、それで社会貢献の一翼をになっていることになるはずです。しかし、上流工程を担当していると、顧客からヒアリングした内容と膨大な技術・製品を組み合わせて、Excelで整理したものが成果物になってしまいます。下流工程の実装を担当していると、部分的にしか関わることができません。さらに、客先常駐していれば、全体の動きはもっと見えにくくなるでしょう。
また、エンジニアという人種は、自分の仕事を外部に説明する言葉を意外と持っていないものです。比較的大手のSIerや、そのグループ企業に所属している人にありがちなパターンですが、特定の流れの中で一部分しか担当しない仕事が多いせいか、エンジニア自身が、どんな貢献ができるか、自分の言葉でちゃんと説明する機会が少ないのです。それこそ、転職活動でもしない限り、世の中に自分がどう貢献しているのか、考えたり言葉にしたりする機会はありませんし、ついつい薄っぺらくて青臭い話になりがちです。
◆そもそも、企業活動が社会貢献になる
パナソニックの創業者である松下幸之助は、「会社は社会の公器」と述べています。つまり、企業は、そもそも社会に貢献するために存在しているということです。企業の本来の活動は、社会に貢献することであって、利益を上げることはそれを継続させるための手段に過ぎません。ですから、企業に属するエンジニアも、企業活動に貢献していればそれ自体が社会貢献になるはずです。
仕事の手ごたえが感じられないエンジニアは、2つのことが理解できていないか、ずれているということになります。
- 自分の提供する価値が、自社の企業活動にどう貢献しているのか。
- 自社の提供する価値が、社会にどう貢献しているのか。
この2つをきちん理解すれば、自分がどう社会貢献しているか理解できるはずです。理解できていても手ごたえが感じられないのであれば、自分のパフォーマンスが低い領域(苦手な領域)での価値提供になってしまっているという事です。
◆エンジニアは企業貢献を理解していない?
一方で、エンジニアの中には、企業貢献なんて考えなくてもいいという人もいます。
エンジニアの貢献は、エンジニアリングで課題を解決することなので、その成果がどう役に立つか、自分は考えなくてもいいというのです。さらに極端に考えて、システムによる業務の自動化に注力するあまり、「肉体労働したら負け」と考える場合もあります。そういう人は、自社のイベントで、エンジニアが焼きソバを焼くなんて言語道断となりがちです。
けれども、誰のためにどんな価値を提供しているか自分で分かっていないと、ビジネスサイドの人間が決めた「これが社会に対する提供価値」という言葉に従うだけになってしまいます。これでは自分の仕事に手ごたえを感じることなんてできません。何より、本来なら取り組んだ時間の何十倍も価値があるはずのエンジニアの仕事が、SIerと同じく時間給のアルバイトのような仕事になってしまいます。それは結局、エンジニア同士が人月単価で安売り競争をすることにつながります。
◆社会貢献には、自分の提供価値と企業の提供価値を理解する
結局のところ、エンジニアとしての社会貢献を語るためには、自分の提供価値を理解し語ることが不可欠です。あなた自身が、あなたの存在意義を考えて理解し、語る必要があるのです。そして、企業としての提供価値も理解する必要があります。
この2つを理解すれば、自分の価値提供を最大化できるポイントが見えてくるはずです。自分の力を上手く活かし、それが企業という器から社会に還元していければ、社会に対して大きな貢献が出来ている、という事になります。
■仕事に手ごたえを感じるために、やっておきたいこと
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社会に貢献したいという動機は、決して悪くありません。でも、安易に社会貢献といっても、仕事の手ごたえを感じることはできません。あなたが本当にやりたいことは何でしょう? そして、そのためには、具体的に何をすれば良いのでしょうか。
◆エンジニアとして、自分の提供する価値を理解したい
もしも、エンジニアとして、自分の提供する価値が十分に理解できていないのなら、自分のやってきたキャリアの棚卸しをしてみてはいかがでしょうか。
自分のキャリアの現状を客観的に把握できれば、今後の現実的なキャリアの計画を立てる時にも必ず役立ちます。これまでやってきた仕事、身につけてきたスキルを元にして、自分にできること・自分がやりたいこと・やりたいことの実現のために必要なことを整理するのです。
下記の記事では、キャリアの棚卸しにつかえるチェックリストについて紹介しています。
paiza.hatenablog.com
◆エンジニアとして、自分の提供する価値を強化したい
エンジニアとして、企業が提供する価値を理解したいと考えているなら、現在の得意分野だけでなく、視野を広げてみることがおすすめです。たとえば、技術を志向するなら、ITの全体像を捉えてフルスタックエンジニアを目指すのも良いでしょう。また、システム開発に関わり始めたばかりなら、議事録の取り方からプロジェクトマネジメントまで、開発プロジェクトの実務について勉強すると役に立ちます。
◆エンジニアとして、企業の提供する価値を理解したい
エンジニアとして、企業が提供する価値を理解したいと考えているなら、マーケティングについて学んでみてはいかがでしょう。
なぜなら、ビジネスサイドのメンバーである、事業の担当者や経営者と共通言語を持てるようになるからです。それに、ビジネスサイドやお客様が目指している方向性についても理解しやすくなります。なにより、非エンジニアがエンジニアの言葉を学習するより、エンジニアがマーケティングの言葉を覚えるほうが簡単に高い効果が得られます。
エンジニアでない人がエンジニアの言葉を理解しようとすると、コンピュータの仕組みや内部構造を理解する必要がありますが、これは結構敷居が高いものです。一方、マーケティングは結局人間と社会に関するテクニックなので、誰でもある程度理解できるようになります。最近流行のWebマーケティングは、数字で効果を追及するので、エンジニアリング思考が役立つ部分もたくさんあります。
◆エンジニアとして、自分の能力で誰かに喜んでもらいたい
もしも、自分のエンジニアとしての能力を使って、誰かに喜んでもらいたいなら、身近な課題解決に取り組んで、手ごたえを感じてみるのもいいでしょう。友達やご近所や家族など、身近な人が困っていることをITでサポートしてみるのも良いでしょう。
◆エンジニアとして、本当に社会貢献がしたい
もちろん、エンジニアとして、本当に社会貢献がしたいという人もいるでしょう。それなら、自分にできそうな事や身近な事から始めるのが良いでしょう。社会貢献度の高い企業で働かなくても、オープンソースやITコミュニティで情報提供するなど、エンジニアが社会貢献する方法はいくつもあります。あなたが自分なりに勉強してきたことをオープンにするだけでも、コミュニティに貢献できます。こちらについては、別の記事で解説しましょう。
■まとめ
本当に社会貢献を指向しても、無償の貢献だけでは継続できません。また、お金のことばかり考えるのも世知辛いものです。ぜひ自分の技術力の使いどころ・使われどころを、自分の頭で理解して、世の中に活かしてください。そうすれば、ほんの少しずつかもしれませんが、世の中が良くなっていくのではないでしょうか。
■paizaについて
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