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IT人材は質・量ともに不足 プログラミング教育必修化がもたらす効果は

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Photo by Matthew Blouir

f:id:paiza:20140916135428p:plainこんにちは。谷口がお送りします。

世界各国でプログラミング教育が必修化されていく中、日本でも2012年から中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修とされました。

この必修化に関しては、2015年になった現在でも賛否両論があります。反対派からは、ITエンジニア以外には不要、やりたい人は独学でも学べる、プログラミングよりもITリテラシーの育成や実践的なアプリケーションシステムの利用を目的とした教育を行なうべきといった意見がよく上がっています。また、教えられるレベルの講師がいるのかといったことを問う声もあります。

プログラミング教育の必修化は不要なのでしょうか?プログラミング教育にはどのような効果があるのでしょうか?IPAの「IT人材白書2015」や総務省の「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書の結果をもとに見ていきましょう。

■IT人材の不足について

◆IT企業が今後拡大を予定している事業について

IT企業が今後3年間程度の間に新規/拡大を予定している事業を見ると、現在実施している事業で最も割合が高かった「(発注者の意向に沿う形の再委託もある)従来型の開発、運用、SI」が3割弱と低くなっています。発注者の意向に沿う形の事業からの脱却を目指している可能性もありますが、一方で「(自社が得意な技術を生かした)提案型の開発、運用、SI」「(自社が得意な業務分野を生かした)提案型の開発、運用、SI」についてはそれほどの変化はありません。

2013年度調査で新規に設けられた選択肢である「スマートフォン・タブレットアプリ開発」については、現在実施していると回答した割合と、新規/拡大を予定していると回答した割合が近くなっており、「スマートフォン・タブレットアプリ開発」がIT企業で定着しつつあることが分かります。

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IT人材白書2015 P132 第1章 IT 企業におけるIT人材の動向

◆企業が感じる質・量の不足感について

IT人材の不足が叫ばれて久しい現代、開発現場で「人が足りない……」と実感している方もいらっしゃるかと思います。

2008年のリーマンショック依頼、景気回復とともにIT企業におけるIT人材の不足感は年ごとに増大しています。

IT人材白書2015」によると、IT人材の量的不足に関しては、IT企業の22.7%が「大幅に不足」、64.7%が「やや不足している」と回答し、合わせて87%以上が人材不足を感じているといった結果が出ています。
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また、IT人材の質的不足に関しては、IT企業の29.0%が「大幅に不足」、61.8%が「やや不足している」と回答し、合わせて90%ほどが質の不足を感じているといった結果が出ています。
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IT人材白書2015 P138 2節 IT企業のIT人材に対する企業の意識

■「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書

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Photo by ITU Pictures
前述の人材不足に加え、プログラミング人材育成の重要性に関する認識も高まる中で、日本は本年6月に改訂された「世界最先端IT国家創造宣言」において、「初等・中等教育段階におけるプログラミングに関する教育の充実に努め、ITに対する興味を育むとともに、ITを活用して多様化する課題に創造的に取り組む力を育成することが重要」とし、また、総務省の各種会議においても、プログラミング人材育成の重要性やプログラミングに関する教育を通じた論理的思考力の向上の可能性について言及されており、総務省としてプログラミング人材の育成に取り組むこととしています。

実際にプログラミング教育はどのような効果をもたらしているのでしょうか。

「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書 1. 背景及び目的

◆プログラミング教育における効果

プログラミングに関する教育がもたらす効果に関する論文は、定性的な評価に留まるものが多いものの、一部の論文では「課題解決力」「創造力」「コンピュータの原理に対する理解」に効果があったという指摘があります。

プログラミングに関する教育がもたらす効果について、学説または有識者の意見と教育事業者の見解の対応関係が表に整理されています。同表から、学説または有識者の意見と教育事業者の見解は、概ね整合しています。このようなプログラミングを通じた人材育成をより効果的なものとするためには、目的に照らしてプログラミングのどのような特性を活用するのかを検討し、適した教育手法、ツール、教育プログラムを選択していくことが必要と考えられます。

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Electrical and Control Engineering (ICECE), 2011 International Conference “The learning effect of visualized programming learning on 6th graders'problem solving and logical reasoning abilities”、Ah-Fur Lai, Shu-Ming Yang、2011、p.6940-6944
The Effect of Logo Programming Language for Creativity and Problem Solving”、 BENS PARADAMEAN, EVELIN, HONNI、2011、p.151-156
情報処理学会論文誌 Vol.44「初中等教育におけるオブジェクト指向プログラミングの実践と評価」、兼宗進ほか、2003、p.58-71
「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書 6.3. プログラミングに関する教育がもたらす効果

◆民間企業が求めるプログラミング人材像について

企業が求めるプログラミング人材像について、ベンダおよびICT利活用企業の幅広い分野の企業を対象にアンケート調査が実施されました。

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比較的期待の高い能力として、「表現力・コミュニケーション力」「論理的・批判的思考力」「協調性・連帯感」「ICT 能力」が挙げられています。表現力・コミュニケーション力や協調性・連帯感は、組織として活動する際に期待される能力として重要であると理解できます。

その一方で、回答数の少ない能力としては、適応力・社会参画欲、数量的な判断力、ものづくりに対する好奇心、計画性・管理力が挙げられています。

「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書 8.2. 期待する能力

◆プログラミングに関する教育の整理について

プログラミングに関する教育の方向性としては、プログラマー育成以外にも幅広い人材育成に関わる方向性があると考えられます。プログラミングに関する教育を実施する事業者では人材育成の目標として、「課題解決力・創造力」「自己表現力」「コンピュータ・ICT の理解」「地域に貢献できる人材」が挙げられていました。

また、教育の効果についてもコンピュータに関する知識だけでなく、21世紀型スキル全般の習得についても効果が大きいことが示されています。

21世紀型能力とは、国立教育政策研究所が試案として出している能力・資質で、「「生きる力」としての知・徳・体を構成する資質・能力から、教科・領域横断的に学習することが求められる能力を資質・能力として抽出し、それらを「基礎」「思考」「実践」の観点で再構成した日本型資質・能力の枠組み」です。

総合すると、プログラミングに関する教育の方向性としては主に

① 21世紀型スキルの習得

批判力、問題解決力、コミュニケーション力、コラボレーション力、ICTリテラシー等、21世紀の知識基盤社会で求められる能力の習得。

② ICTを生み出す人材の育成

ICTインフラの構築やソフトウェア開発等によってICTを支え、新しいICTを生み出す人材の育成。従来のプログラマーではなく、製品・サービスへの実装までを意識した力も獲得する必要があります。

③ ICTを幅広い産業で使う人材の育成

ICTを使い、イノベーションを起こす人材の育成。コンピュータサイエンスの知識と情報モラルに裏打ちされた、ICT活用の実践力も獲得する必要があります。

と整理されます。

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プログラミング教育は、ICTを生み出す人材だけでなく、使い手側のレベルアップや、そもそも基本的な能力の底上げといった効果があるにも関わらず、その定義や目的の整理が進んでいないため、世間一般には②ICTを生み出す人材育成にだけ必要とされる教育といった印象を持たれています。今後は①や③のようにこれからの時代に必要とされる人材の育成といった意義を持つものであることについて、関係者及び世論に対して啓発を図る必要があると言えます。

「プログラミング人材育成の在り方に関する調査研究」報告書 9.1. プログラミングに関する教育の目指す方向性

■まとめ

21世紀型スキルの詳細についてはこのような書籍もあります。

21世紀型スキル: 学びと評価の新たなかたち

21世紀型スキル: 学びと評価の新たなかたち

  • 作者: 三宅 なほみ,P.グリフィン,B.マクゴー,E.ケア,益川 弘如,望月 俊男
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2014/04/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログ (4件) を見る

プログラミングに関する教育の場としては、公教育と公教育以外の場での教育が考えられます。現在、プログラミング人材育成の場として主流になっているのは、民間事業者やボランティア、NPO 法人等、学校以外が中心となった小規模な取組みです。

今後は、前述の①21世紀型スキルの習得、③ICTを幅広い産業で使う人材の育成といった側面が評価されることで、プログラミング人材育成が公教育でも実施される機会が増加すると考えられます。

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