Photo by jazbeck
こんにちは。倉内です。
以前の記事でpaiza(ギノ)に来る前はSIerでSEをしていたと書きました。
新卒で入社し7年ほど在籍していましたが、「楽しく元気に!」とは言わないまでも、繰り返されるデスマの中でも心身ともに健康な状態で働くことができていました。
しかし、前職の同期に久しぶりに会ってみると「実は鬱になって休職して辞めたんだよね…」と切り出されることがたびたびあります。
仕事の大変さや苦しさは人それぞれで一般化はできませんが、今回は前職の経験を踏まえて、心身を健康に保つために私が心がけていたことをお伝えしたいと思います。
SIerのエンジニアが心身を病みやすい理由
同期に限らず、職場を見渡してみるとプロジェクトの途中で心身に異常をきたし、出社できなくなってしまう人は珍しくありませんでした。
SIerで働くエンジニアが心身を病んでしまうのは、大きく分けて2つの理由があると思います。
受託開発の構造自体がストレス源
このブログでも過去に「多重下請け構造」について何度かご説明したことがありますが、SIerが受ける案件はほとんどの場合、発注元、元請け(一次請け)、二次受け…と仕事を下ろしていく構造になっています。
この構造の問題点をいくつか挙げると、発注元と遠くなればなるほど間でマージンが抜かれ単価(給料)が下がる、上流で起こった問題のしわ寄せが下に集約される、顧客と直接交渉ができず辛い状況を改善することができない…などがあります。
前職の場合、会社の規模的に元請けになることもありましたが親会社からの案件も多かったので、理不尽な要求や圧力に耐えなければならない場面も多くありました。
しかもそんな案件が次から次へと降ってくるため(3つ並行してたときもありました)リフレッシュする間もなくストレスが蓄積されていました。仕事があるのはありがたいことですけどね…。
業務改善なしの「残業削減令」
IT業界というくくりで見ると、ひと昔前とは本当に変わってきていて、楽しく健康的に働いている方も多くいる業界になりつつあるのかなと思います。
特に残業時間の削減は前職でも全社をあげて取り組んでいました。もちろん残業を減らす取り組み自体は素晴らしいことですし、効率よく業務することには賛成です。
しかし現場としては仕事量は減らず、人は増えない(むしろ減らされることが多い)のに納期は変わらず、残業はするなと言われいろいろと苦しみました。お客さま都合での深夜残業にも苦言を呈されたときは怒る気力も起きず脱力しました。
またメンバーが残業できないときはリーダーが肩代わりすることもありましたが、根本的な解決にならないことがほとんどでした。若手の頃に一番頼りにしていた先輩が倒れて入院したときの絶望感は今でも覚えています…。
では、このような状況でストレスをコントロールし、心身をなんとか健康に保って働き続けるにはどうしたらいいのでしょうか?
ここからは私が前職で実践していた対策を紹介していきます。
ストレス軽減のために実践していたこと
仕事には多かれ少なかれストレスがつきものですが、慢性的なストレスが多い環境の場合、いかにストレスと上手く付き合っていくかが重要です。
自分は具体的に以下の2つを心がけていました。
①仕事で何を重視するのか優先順位をつける
・ストレス対処のための判断基準を持つ
社会貢献、働きがい、給与、ワークライフバランスなど…働くうえで何を重視するかについて、誰しも漠然としたイメージはあると思うのですが、しっかり整理したことはありますか?
特に新卒で入った会社でそのまま働いていて、転職の意志もない場合は考える必要がないと思っているかもしれません。
自分自身、何年もまったく転職の意志なく働いていましたが、仕事でストレスを受けたときにどう対処すべきか判断するために優先順位を決めていました。
というのも優先度が高いことに影響する事象はかなり精神を削られるので「そうそう、私はこれが損なわれるのがすごいストレスなんだよね」と分かっていたほうが真正面からストレスを受け止めるよりいくらかマシです。
私は家庭があるわけではないので「ワークライフバランス」はそこまで優先ではなく、それよりも「働きがい」「仕事内容」の優先度が高かったため、それらを阻害されると強いストレスを受けるな…と分かっているといった感じです。
・他人には他人の優先順位があることを理解する
自分の中の優先順位を決めておくと、きっと他人は自分とは異なる優先順位で仕事をしているだろうと理解することができます。
例えば、特に予定のない休日に出勤を命じられたとしても私は「まあ残業代も入るしいっか」と考えてストレスではないと感じたとしても、「体を休める」や「家族との時間を大切にする」の優先度が高い人にはかなりのストレスになる可能性があります。
「社会人なら我慢するのが当たり前」とか言う人が前職にいましたが、自分に厳しくするという意味ではいいですが、それを同じ基準で他人にも求めることには反対です。そのような考え方をしていると自分のストレスもたまってしまいます。
・体力やメンタル強度は個人差がある
優先順位が同じでも体力やメンタル強度には個人差があるため「体を休める」重視派でも「最悪日曜休めるなら土曜は出てもなんとかなるかな」と思う人もいれば「土日休めないと月曜日から会社行けない」と思う人もいるでしょう。同じ優先順位だからといって一律で語ることはできないと思っています。
個人差があることを理解していなかいと、耐性が自分よりもっとある人・逆にない人との摩擦で消耗してしまいます。
「なんであの人はいつも休日出勤を断るのか」とか「あの人はあんなに頑張ってるのに自分が逃げるのはダメだ」とか…いい解決策があるわけでもないことを考えてもストレスになるだけです。
②ストレスになる事象をリスク管理する
PMやPL経験のあるSEならプロジェクト計画書を作成したことがあると思いますが、プロジェクト計画書では、リスクマネジメントについて必ず記載しますよね。手順としては、リスクを洗い出して分析し、対応策を考えるといった感じです。
仕事をするうえでストレスを受けると何かしら心身にダメージがあるため、それをリスクと捉え、リスク対応策を考えるようにしていました。
ちょっと分かりづらいので実際私がどのように考えていたか具体例を交えて説明します。
・リスクの洗い出しと分類
リスクを「歓迎はしないが発生しても耐えられる見込みがあるもの」(例:担当プロジェクトが炎上していて年末年始休めない、平日定時後の予定をキャンセルしなければならない)と「発生したら耐えられないもの」(例:上司から理不尽な命令をされる、担当案件を中断して炎上プロジェクトの支援に駆り出される)に分けて整理します。
受容できるものとできないものを把握しておくと一喜一憂せずに済みます。このとき、先ほどの優先順位が分類する際の判断基準になっています。
・高リスク事象対処のための準備
特に「発生したら耐えられない」事象が起こった場合に、病まずにうまく対応できるようにいくつか準備していたことがありました。
これは転職を考え始める前からやっていたことで、例えば、業務の引き継ぎ資料を少しずつ作成する、密かに自分のスキルを測っておく、複数の転職サイトに登録しておく、転職した同期と連絡をとる(特にSIerから別業界へ転職した人)、親に「実家に戻ってきたらどうする?」と聞いておく、現実を忘れられるような趣味を持っておく…などなど。
追い詰められると頭が仕事のことでいっぱいになり脳内リソースを割くのが難しいのですが、思考停止して無防備なときに耐えられないストレスが来ると簡単に心が折れます。ちょっとずつでいいので自分を守るための対策を講じていきましょう。
実際こんな準備をしながらもSEとしてある程度元気に働いていました。「私には他の道もある」と頭の片隅に置いておくことで精神的に安定します。
ストレスが対応できないレベルに達したら
Photo by Bryon Lippincott
そうやって対策を講じてはいたのですが、そんな自分も最終的には転職しました。残念ながら「発生したら耐えられないもの」に分類される事象が多発したからです。
一番堪えたのが、あっさり新規プロジェクトから外されたことです。当時は数年に渡る大規模案件を終えたところで、「次はまったく別のことがやりたい」と上司にかけ合い、新規プロジェクトに入れてもらっていました。
しかし、顧客への挨拶を済ませ作業も始まったころに「元のシステムの次期案件に有識者が足りないから」となんの相談もなく戻されてしまいました。気づいたら体制表に名前が載っていたという状態で…。
極めつけはその大規模案件が炎上するきっかけとなった人物がまたPMをすることになったのです。さすがに「これはもう無理かも…」となりました。
他にも表には出せない諸々があり、一つひとつはある程度間隔が空いていたらこれまでどおり対応できたと思うのですが、一気に来られたせいで限界突破してしまいました。
環境や他人を変えるのは難しいため、ある程度は自分が変わっていかないといけないのですが、これ以上リスクコントロールをこの会社でするのは難しいと判断して転職することに決めました。
この決断も自分の中に判断基準が明確にあり、色々準備をしていたおかげで早くできたのかなと思います。
まとめ
転職後は前職で抱えていたストレスはほとんど解消されました。しかし、まったく違う環境に来て「うまくやっていけるのだろうか…」という不安や戸惑いが無いわけではありません。
会社員として働く以上ストレスが0になることはなかなか難しいためストレス軽減策については常に頭に置いておくことをオススメします。
私は転職という手段をとりましたが、転職しないというのももちろんひとつの手段です。もしいつか転職したらエンジニアになりたい、将来的に転職してもエンジニアで居続けたいという人はpaizaでこっそり準備してみてください。
「これが発生したら辞めよう」「これはまだ耐えられる」という基準を自分の中でしっかり持っておくとぐずぐず悩まずに済みます。
ただ、心身の健康が保てないような環境で我慢して働き続ける必要はないと私は考えています。前職で休職や退職していった同僚たちの姿を何度も見てきて、心も体も一度壊してしまうと簡単には戻らないことを知っているからです。
なお、ストレスについてもっと論文や調査結果を元に対策を講じている弊社エンジニアの記事もありますのでぜひ読んでみてください。
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