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【Photoshop】ジェネレーティブ塗りつぶしで元彼を消すなどしてみた

最近はいろいろとできるAIが増えすぎて、江口洋介の声真似をしながら「そこにAIはあるのかい?」と言いたくなる世の中だが、令和の現在に『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)の話をしても半分くらいは理解できないのではないだろうか。知らない人はChatGPTにでも聞いてみてください。

とにかく猫も杓子もAIで、まるで雨後の筍のように毎日新しいサービスやらプラグインやらが登場しているのだが、その筍を足の裏で探す人の身にもなってほしい。令和の現在に「筍を足の裏で探す」技法を知る人はどのくらいいるのだろうか。ChatGPTに聞いてみたら、なんと知っていた。

山菜採りに伝わりし筍を足の裏で探す一子相伝の秘技の話はさておき、最早ドンキに陳列された商品のごとく多様なAI関連サービスにおいて、ついに本丸であるアメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼ市に本社を置くコンピュータ・ソフトウェア・テクノロジー・カンパニーであるAdobe Inc.が「ジェネレーティブ塗りつぶし」なる新機能を搭載したPhotoshopのβ版を世に放った。

本機能は画像を生成するだけでなく、不要な部分の削除やプロンプトを使用しての画像補正・作成などが行える。つまり、作業のアシストをしてくれるコパイロット的側面が強い。よって、今までの画像生成AIよりも仕事で使えるのではと、実際の使用感を確かめてみるのが本コラムの趣旨である。

【目次】

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では早速、元彼を消してみる

ジェネレーティブ塗りつぶしを使う人は2種類に分かれる。思い出の写真から元彼を消そうとしている人とそうでない人だ。今回はAdobe謹製のツールを使用するので、元になる写真もAdobe Stockから調達した。

カップルらしき人たちが写っていること。足元が水なので切り抜きにくいことから本画像を選定した。これを人力でやると、まず元彼を切り抜き、切り抜いた部分の背景を付け足し、水面の泡立ちや人物の反射を調整しなければならない。それでは早速AIの実力を見せていただこう。

不要なオブジェクトを削除する場合、適当なツールで選択範囲を指定する。その後、画像下部にあるチェックマークをクリックすれば完了だ。プロンプトの入力は必要ない。「いやいや、こんなに簡単にできるわけないでしょう」と筆者の脳内で合成されたよくわからん人格が訝しんでいるが、とにかくやってみる。

めちゃくちゃ切り抜けてる。時間にしてわずか10数秒。正直な話ちょっと笑ってしまった。水面の調整も違和感がなく、普通に仕事で使えるレベルかもしれない。

ジェネレーティブ塗りつぶしを使えば「この写真気に入ってるけど、写ってるの元彼なんだよなぁ」と悩んでいる時間よりも遥かに高速で元彼を消すことができる。これだけでAdobe税を払う価値はあるのではないだろうか。

今彼を異世界から召喚する

ジェネレーティブ塗りつぶしを使う人は2種類に分かれる。自分が写っている写真に見栄を張って今彼を追加しようとする人と、そうでない人だ。

先ほど元彼が消えてしまったので、写真としては少々寂しくなってしまった。そこで、今彼を異世界から召喚することにする。同じように選択範囲を作成し、プロンプトに「man」とのみ打ち込んでジェネレートしてみた。

祐天寺みたま祭りに世田谷ナンバーのセルシオで乗り付け、壊れた玩具のように珍妙な踊りを披露する動画をTikTokに投稿する輩みたいな人物が生成された。今彼としては不服かもしれないが、再び水面の調整はかなり自然だ。

猫も連れて行こう。好きにやればいい

本見出しが理解できる人は2種類に分かれる。THE YELLOW MONKEYのファンとそうでない人である。今彼がイマイチだったので退場してもらい、次は猫に登場していただく。猫ネタはSNSでよくバズるので、そろそろAIを使って架空の飼い猫を呼び出して投稿する人が出てもおかしくはない。再び選択範囲を指定して、単純に「cat」と打ち込んでジェネレートしてみる。

女性の傍らで優雅に泳ぐ猫が召喚された。こんなに簡単でいいのだろうか。ただ、今彼もそうだったのだが、オブジェクトの生成に関してはまだ弱い。細かいところを見ていくと甘い部分が多く、ちょっと触った程度では仕事で使えるレベルではない。

例えば新規のドキュメントを用意して、何も配置されていない状態から猫を作成してみると、以下のように出力された。

味があるといえばあるのだが、その味は果たして必要なのだろうか。70年代〜80年代初頭の動物が出てくるホラー映画で放り投げられるような、造形の甘い作り物の猫のクオリティに近い。

ちなみにこの猫を投げ縄ツールで適当に囲い、プロンプトに「dog」と打ち込むと、一瞬で猫が犬に変わる。

味があるといえばあるのだが、その味は果たして必要なのだろうか。ただクオリティはどうあれ、変換する時間を考えるとなかなかに凄い。

オブジェクトの生成はまだまだといったところで、話を女性と猫に戻そう。

この画像を見て、ほとんどの人は「猫がもっと増えたらいいのに」と感じるのではないだろうか。猫は一匹でも可愛いが、百匹居たらそれは楽園である。選択範囲を指定し、プロンプトに「Hundred cat」と打ち込んでみた。

ボストン茶会事件で捨てられた木箱のように猫が浮かんでいるが、猫は300メートル先から見てもいいものなので、これはこれで可愛い気がする。ちなみに、本画像は空の部分もジェネレートしてある。キャンバスを大きくして何もない部分を選択してボタンをクリックするだけで自然な空ができあがったときは、色々な意味でやる気をなくしたが泣いてばかりもいられない。

(架空の)レコードジャケットを拡張してみる

ジェネレーティブ塗りつぶし関連のニュースやTwitterなどを読んでいたなかで、とくに面白かったのが「レコードジャケット」の拡張だ。ニルヴァーナの『ネヴァーマインド』やビートルズの『アビイ・ロード』など、既に様々なジャケットデザインが拡張されている。

上記は著作権的にアレなので、本コラムでは使うことができない。しかし、偶然にも筆者は「架空のバンドのアルバムジャケットをデザインして、ついでに解説やレビューをでっちあげる」という趣味がある。下記画像のような感じだ。

というわけで、今まで作成したなかから一枚ピックアップして、ジェネレーティブ塗りつぶしで拡張してみる。選んだのは以下の画像。

本アルバムタイトルは『How to protect yourself from little monsters』。一応架空の解説も加えておく。

『How to protect yourself from little monsters』は、イギリスのシューゲイザー「Romantic Film Highlights」が2008年にリリースしたセカンド・アルバム。

バンド名、及びアルバムタイトルは『モンティ・パイソン・アンド・ナウ』のスケッチより取られているが、当のバンドメンバー達はその名に反し、関係者の間では「冗談が通じない4人組」として有名であった。

アルバムはレイトンバザードにある巨大な倉庫で録音されており、広大な空間を最大限に利用した凄まじいフィードバック・ノイズは、批評家から「いくらなんでもやりすぎ」と好意的な評価を受けた。

だがバンドはこの評価を嫌味と受け取り、「よりデカい音を出す」とツアーに臨んだものの、会場の電源を落とされる、失神者が続出する、失神者から難聴になったと訴えられる、そもそも機材が耐えられないなど様々な問題が続出し、散々な結果であった。

しかし、映像化されたライブDVDは皮肉にも音量調整が可能なことから、愛好家の間で根強い人気を誇っている。

この架空アルバムをジェネレーティブ塗りつぶしで拡張してみる。まずは拡張するサイズまでキャンバスを広げる。

この余白の部分をAIが勝手に作成してくれる。「つっても倉庫の画像だし、棚の配置とかライトの位置とかズレたりするんでしょ? AIは賢いけどヌケたところありますもんね」と筆者の脳内で合成されたよくわからん人格が上から目線で文句を言っているが、物は試しである。

ナマ言ってすみませんでした。これはかなり凄い。この作業が3分もかからず完了するのだから、筆者よりもかなり優秀なのは言うまでもない。人力でやれと言われたら面倒くさすぎて断る自信がある。参考までに、どのくらい拡張したのかの比較画像も見てみよう。

赤で透過させた部分が実際のアルバムジャケット、それ以外が拡張された部分だ。

正直なところ、使うまでは「アルバムジャケット拡張したとかさぁ、結構試行錯誤したんでしょ」と懐疑的だったが、ガチのガチで一発で出力できた。しかも足りない部分を作成するのにプロンプトは不要である。つまり選択範囲を指定し、2クリックくらいすればできる。

ジェネレーティブ塗りつぶしで元彼は一瞬で消せるし将来的には仕事でも使える

ジェネレーティブ塗りつぶしで元彼は一瞬で消せるし、将来的には仕事でも使える。というのが一応の本コラムにおける結論である。

ジェネレーティブ塗りつぶしは通常の画像生成AIと同じ使い方もできるが、やはり消したり足したり調整したりといった作業を補佐してくれる側面が強い。デザインを生業にしている人なら、将来的には優秀な副操縦士として力になってくれるだろう。筆者は今回のAdobeのリリースにポジティブな未来を感じる。

AIの機能は基本的に、人間の手作業を拡張させたものなので、意図を持つことはない。デザインは意図であり、複雑な意図を紡ぐ人間が居て、はじめてAIが役に立つ。AIはツールであり、ツールを使うのは人間である。最近はAIの発達によってデザイナーは要らなくなるとか、廃業するだとか、革命起きまくってるだとか強い言葉で煽る人間をよく見かけるが、筆者はそうは思わない。私達の職域よりも、AIニュースを集めて煽っている人のほうが早晩仕事がなくなるだろう。

追伸、デザイナーが真に求めるAIは、月末に請求書を自動的にクライアントへ送ってくれる機能である。

(文:加藤広大)




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