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本当の問題は量よりも質…IT人材白書「エンジニア不足」の真相

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Photo by Tim Regan
f:id:paiza:20180910132940p:plainこんにちは。倉内です。

経済産業省のIT人材の最新動向と将来推計に関する調査によると、2019年をピークに人材供給は減少に転じ、今後ますますIT人材の不足数は拡大していくと言われています。

同調査の概要をまとめた資料では、「IT人材」の不足は(高位シナリオの場合で)2020年に約37万人、2030年には約79万人と予測されていますが、「本当にそんなに不足するのだろうか…?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回はデータをひもときながらIT人材不足の本質、特に不足が懸念されている分野、さらにIT人材として今後のキャリアをどのように考えていけばよいのかについて考察していきたいと思います。

「IT人材」の定義

本記事では、冒頭で挙げた経済産業省のデータに加え、IPAが毎年発表しているIT人材白書の2018年版のデータを用います。

経済産業省では、日本標準産業分類の「情報通信業」のうち「情報サービス業」および「インターネット附随サービス業」に分類される業種の企業を「IT企業」とし、「IT人材」を「IT企業、およびユーザ企業の情報システム部門に所属する人材」と定義しています。下図は2015年時点の数値です。

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出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました (経済産業省)

IT企業にはSEやPGといったエンジニア職以外に営業、経理・総務部門などの人も所属しているので、経済産業省のこの調査では純粋に「ITスキルを有している人(=システム開発に関わる人)」だけを対象にしているわけではないようです。

一方、IT人材白書2018を見てみると、下図のとおり従業員数とIT人材推計に差があるため、こちらはIT関連職種の人数を抽出していると言ってよさそうです。ただ、電子電気・機械系の企業も含んでいるためか経済産業省の合計値より大きくなっています。

例えば、「電気機械器具卸売業」は日本標準産業分類では「卸売業,小売業」に分類される企業のため経済産業省の調査では含まれていないはずです。

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出典:IT人材白書2018 図表1-2-2(IPA)

そこにユーザー企業の情シス部門に所属する人材を合わせて「IT人材」としています。数値はどちらも2017年時点のものになります。

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出典:IT人材白書2018 図表1-2-8(IPA)

IT関連職種というと「システムコンサルタント」なども含まれるため、純粋に「ITスキルを有している人(=システム開発に関わる人)」だけを算出するすべがあれば、これらの数値は変わってくるでしょう。

このように数値を読むときは、結果だけで議論する前に定義や根拠を明らかにして見ていくと見るべき箇所がおおよそつかめるでしょう。

特にIT人材が不足する分野

経済産業省の「IT人材の不足規模に関する予測」では、将来の市場拡大の見通しによって低位(楽観値)・中位・高位(悲観値)の3シナリオを設けています。そのため、2030年は高位シナリオで79万人、低位シナリオで41万人不足という予測になっています。

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出典:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 (経済産業省)

業界全体で人材不足と言えますが、特にIT人材の不足が深刻な分野としては、セキュリティ(2020年に19.3万人不足)、AIやビックデータ(2020年に4.8万人不足)が挙げられています。

なお、セキュリティ人材の不足は2020年のオリンピック・パラリンピックに向けてサイバーテロの増加が懸念されているためという事情があります。

先端IT分野と呼ばれるAI・機械学習は2018年に大変盛り上がり、触れてみたという方も多いのではないでしょうか。また、AI・機械学習には大量データの分析・解析が欠かせないため、ビッグデータを扱えるエンジニアも同様に不足するという見方です。

しかし実情としては、セキュリティ分野、AI・機械学習分野はともに高いスキルを必要とするため、企業側の要求を満たせる人材が少ないという意味で不足と言われています。逆にそれらの分野に精通した人材の市場価値は非常に高いと言えます。

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企業が求めるIT人材の「質」の変化

IT企業自体の変化

IT人材白書では、2018年版で初めてIT企業の事業・ユーザー企業の業務を「課題解決型」と「価値創造型」の2つに分けて調査を行っています。

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出典:IT人材白書2018 図表1-1-1(IPA)

これまで多くの企業にとってIT活用は「業務の効率化やコスト削減」が主な目的でした。つまり、システム開発を請け負うIT企業は、実現するべきシステムがあらかじめ見えておりウォーターフォール型で開発する「課題解決型」の案件が大多数でした。

このような案件では、システム開発の工程をできるだけ小さい単位に細分化することで技術レベルにバラつきのあるチームでも作業分担を可能とし、定められた納期までにプロジェクトを完遂することが重要です。

しかし、昨今は従来とは全く異なる「ビジネスを創出し、新しい仕事や価値を次々に生み出していくこと」を目的にITを活用する企業が非常に多くなってきました。これを得意とするのがアジャイル型を採用する「価値創造型」のIT企業です。

そしてIT企業・ユーザー企業ともに、今後拡大する事業・業務の傾向について「価値創造型のみ拡大傾向」と述べている割合が高いということもこの調査から明らかになっています。

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出典:IT人材白書2018 図表1-1-2(IPA)

IT人材に求められる「質」とは

引き続きIT人材白書2018を見てみると、調査対象企業の多くが「IT人材の量と質の不足感」を強く感じているという結果が出ています。

注目したいのは「価値創造型」「課題解決型」に共通して「高い技術力」の不足感が非常に強いことです。これは事業の種類に関わらず、企業からのIT人材への要求レベルが高くなっていることを示しています。

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出典:IT人材白書2018 図表2-1-28(IPA)

今後さらに需要が高まると見られる「価値創造型」の事業では、「問題を発見する力(探索能力)・デザイン力 」「新しい技術への好奇心や適用力」「独創性・創造性」を求める割合が高く、「課題解決型」とは異なる傾向になっています。

これは「価値創造型」の事業では、ユーザーニーズをくみ取り0から価値あるシステムを作り上げることが求められるためです。

「IT人材」不足の真相

ビジネスにITが欠かせない今、IT人材を採用する企業が求める能力が高度化しており、調査結果からもそれが明らかになりました。

特に「価値創造型」の事業が多いと思われる「ネットサービス実施企業」に注目してみると、IT人材の「量」・「質」ともに不足感は過去3年間で最も高い数値となっています。

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出典:IT人材白書2018 図表3-3-14、3-3-15(IPA)

また、IT分野のトレンドの予測などで有名なGartnerは「日本は2020年にIT人材は“質的に”30万人不足する」と述べており、IT人材の不足は単に人数の不足という観点だけでは語れない事象であると言えそうです。

経済産業省の調査では不足約79万人という数値のインパクトがあるため、IT人材の数が不足する印象が強いのですが、実はこの調査結果も読み進めていくと先端IT人材がいないという「質」の不足を強く述べていることが分かります。

それではこのような時代にITエンジニアは自身のキャリアをどのように考えていくとよいのでしょうか。

ITエンジニアのキャリア戦略

「課題解決型」事業に従事している場合

受託開発をおこなうSIerが得意としている「課題解決型」の事業では、大多数のエンジニア(SE)はPMを目指すことになります。PMとしてプロジェクトを成功に導くことはやりがいがありますが、管理業務がメインになり技術からは遠ざかってしまう場合が多いです。

これまではそれで特に問題なかったかもしれません。しかし、将来的に「課題解決型」事業の縮小が見込まれる中では「高い技術力」や「新しい技術への好奇心や適用力」も伸ばして「価値創造型」事業でも活躍できるようにしておかなければ、早期にキャリアが頭打ちになる可能性があります。

そのため現在「課題解決型」の事業に従事している場合でも、将来を見据えて技術を身につけたり、新しい技術のキャッチアップをしておくことをオススメします。

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「価値創造型」事業に従事している場合

「価値創造型」の事業をメインにしている企業でキャリアアップを考えたときには、技術力があることを前提としたうえで「組織やチームの円滑な運営ができる」「価値のある新たなサービスを創造できる」といったスキルが必要です。

例えば、キャリアパスとしてCTO(技術責任者)を目指す場合、組織の技術力を高く保つことや事業に影響があるレベルの技術的課題に対処するといった役割になるため非常に高い技術力と経営視点での決定力が求められます

また、最近はCTOだけでなくVPoE、VPoPやSREという役割を設けている企業もあります。これらは以前から主に欧米のエンジニア組織には欠かせない役割だと言われています。

VPoE、VPoPは国内では株式会社Gunosyがいち早くこれらの役割を取り入れ、組織の再構築を図ったということで注目されました。

マネジメントは「役割」。CTO・VPoE・VPoPが3頭分立する、Gunosyのエンジニア組織 | SELECK [セレック]

SRE(Site Reliability Engineering)はGoogleやFacebookで採用されている、サービス向上のためのパフォーマンス改善、可用性・スケーラビリティ向上などを図る役割のことです。これは従来のインフラ保守・運用業務とは異なり、改善のために積極的にソースコードを書き換えることも求められます。

IT人材の「質」の不足を強く感じている「価値創造型」の企業で今後も必要とされる人材になるには、高い技術力を土台にし、それにプラスしてビジネス的な視点を持った働きができるかどうかが問われます。

まとめ

IT人材不足について、「量」以上に「質」の不足を指しているということを述べてきました。

おそらく今後は同じITエンジニアという職種の中であっても、市場価値を高める努力をした人としていない人との差がますます広がっていくものと思われます。

「質」の不足と言われるとネガティブに捉えてしまうかもしれませんが、よくよく考えてみると技術力を身につけられれば、自分の市場価値がぐんと上がる時代でもあると言えます

そして、もし現在の職場環境でエンジニアとしてのスキルアップ・キャリアアップが望めないと感じているなら環境を変えるというのも一つの方法です。

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