こんにちは。倉内です。
ITエンジニアのキャリアパスのひとつに「プロジェクトマネジャー(PM)」があります。
プロジェクトリーダー(PL)を経験してからPMに就く方が多いとは思いますが、どんな役割なのか、どういったスキルが必要なのかなどが曖昧なまま、とりあえずやってみるという方も多いのではないでしょうか。
もちろん実践でしか得られないものもありますし、開発プロジェクトは規模やスケジュールなどさまざまで難易度も異なるため一概に言えない部分もあります。とはいえ、基本的なことは押さえておいて損はありません。
そこで今回は、基本的なプロジェクトマネジャーの業務内容や役割、必要なスキルについてお伝えしていきます。
これからプロジェクトマネジャーになる方、現在プロジェクトマネジャーをやっており悩んでいる方に参考になる部分があればと思います。
プロジェクトマネジャー(PM)とは
その名の通りプロジェクトをマネジメントする人のことです。「マネジメントする」部分については、これから詳しく説明していきます。
この記事では、プロジェクトというのは、開発プロジェクトを指します。たとえば、受託開発のプロジェクトであれば、顧客の出した要件とスケジュールに沿ってシステムを開発しリリース、場合によってはそのあとの保守・運用までおこないます。
プロジェクトマネジャーの役割と仕事内容
プロジェクトマネジャーは、プロジェクト全体の責任を負う立場で、QCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期)を管理します。
これがすべてというわけではありませんが、具体的な役割について以下に示します。
- 顧客への提案
- 計画立案
- 見積もり
- 顧客との要件調整
- スケジュール管理
- 人員調整
- 予算管理
- 納品管理
これらを滞りなくおこない、成果物を期日までにお客さまへ納品(リリースとも)することがもっとも重要な役割です。
冒頭でお伝えしたとおり類似のプロジェクトはあっても、まったく同一のプロジェクトはないため、正解というものが存在しないのがプロジェクトマネジャーの仕事の大変な部分でもあります。(システム開発そのものがそうとも言えますが…)
要件が複雑だったり、他社が開発したシステムのリプレースだったり、もしくは数年がかりの大規模プロジェクトだったり…さまざまなケースがありますが、難易度が高いプロジェクトであればリスクを見込んで見積もりに上乗せするといった観点も必要になってきます。
上記のうち、顧客への提案、見積もりなどプロジェクト立ち上げ時の具体的な仕事内容については、以下の記事で詳しく説明していますので参考にしてみてください。
プロジェクトマネジャーの年収
エンジニアの目指すキャリアパスのひとつということで、年収についても見ておきたいと思います。
まず、doda(デューダ)が公開している情報*1では、「技術系(IT/通信) 全体」の平均年収は438万円となっています。男女別・年代別の平均年収は以下の通りです。
(出典)doda「平均年収ランキング(165職種別の平均年収/生涯賃金)」より
職種別では、プロジェクトマネジャーが全体平均671万円ともっとも高く、20代でも472万円という結果になっています。詳しくはこちらからごらんください。
つづいて、マイナビエージェントが公開しているデータを見てみます。
こちらでは、IT業界全体での平均年収は427万円です。職種別ではdodaと同様にプロジェクトマネジャーがもっとも年収が高く、平均年収670万円となっています。詳しくはこちらもごらんください。
集計期間が2019年12月~2020年5月とコロナ前ではありますが、あまり現在と変わらないと思ってよさそうです。
プロジェクトマネジャーとプロジェクトリーダーの役割の違い
よくある質問として、「プロジェクトマネジャーとプロジェクトリーダーの違いって?」があります。
完全に線引きするのが難しい部分もありますが、ざっくりと分けるとプロジェクトマネジャーは、プロジェクト全体の管理、プロジェクトリーダーはプロジェクトの実行が大きな役割です。それぞれ達成責任と実行責任と言われたりもします。
プロジェクトリーダーの場合は、責任範囲がプロジェクトチームにあり、自らも手を動かしてプロジェクトを進めていくことが多いというのも異なる点かもしれません。
両者の違いについては、以下の記事でより詳しく説明していますので、気になる方は参照いただければと思います。
プロジェクトマネジャーに必要なスキル
役割について理解したところで、プロジェクトマネジャーには一般的にどのようなスキルが必要かをお伝えします。
ITスキル・知識
プロジェクトの管理がおもな役割ですので、実際に手を動かすわけではないことがほとんどですが、まったくITに関する知識がないと務めるのは難しいと思います。
企業によっては、新卒エンジニアのころから上流工程のみを担当し、開発業務を経験せずPLやPMになることもあります。
まさにわたしは新卒でSIerにSEとして入社し、プログラミング経験もほとんどないままプロジェクトマネジャーになり、役割をまっとうできずにプロジェクトを炎上させた経験があります。
業務で開発工程に携わることがない方も、paizaラーニングなどを用いて自分でコードを書くことは経験しておいたほうがよいでしょう。
コミュニケーション能力
プロジェクトマネジャーにとって、顧客やステークホルダー、プロジェクトメンバーとの関係構築は非常に大切です。
特に顧客から正確に要件を引き出したり、ときには交渉が必要になったりすることもあるため、伝える力・聞く力のどちらも欠かすことはできません。
また、開発を一社で請け負わず、複数の関連企業や外注企業と分担するような形の大規模なプロジェクトでは、企業間のコミュニケーションもうまくやる必要があります。プロジェクトマネジャーの関係構築能力が問われると言ってもよいでしょう。
顧客の業界・業務知識
顧客の課題を正確にヒアリングし、どうやってシステムで実現できるかを考えるには業界・業務知識が必要です。
受託開発の場合、業界・業務に対して十分な理解があるという前提で顧客は話をしてきます。自身に知識が乏しいのであれば、有識者をアサインするなどの調整もプロジェクトマネジャーの仕事です。専門性が高いかつ大規模なシステム開発は、有識者がいないとプロジェクトを成功に導くのが難しいからです。
決断力
プロジェクトが最初から最後までスムーズに進んでいれば、大きな決断を迫られるシーンはないかもしれません。しかし残念ながら開発プロジェクトは大なり小なり何らかの問題が発生するケースが非常に多くあります。たとえば……
- 仕様に考慮漏れが多数あり作業の進捗に著しく遅れが出る
- 顧客と仕様確定が握れておらず開発中に仕様変更となり手戻りが発生する
- 想定していた工数より膨れたため人員を追加せざるをえない
- リリース直前の顧客受け入れテストで多数の指摘を受け修正工数がかさむ
まだまだありますが、こういった事態はよく起こります。
問題が発生するのは計画時のミスや詰めの甘さが原因ですが、その時点には戻れません。発生時に「お客さまに納期変更を申し入れる」「フェーズを分けて段階的にリリースさせてもらう」などプロジェクトマネジャーが切り抜け方を決める必要があります。
決断が早いからといっていいわけではなく、できる限りダメージの少ない方法をとることも大切です。
プロジェクトマネジメントについて学ぶ
独学が難しい領域でもありますが、基本的なことはpaizaラーニングで公開している動画講座「情報処理入門 マネジメント編」で学ぶことができます。
この講座の内容は、IPAが実施している基本情報技術者試験および応用情報技術者試験の午後問題の出題範囲となっているため、試験対策にもおすすめです。内容については以下の記事でもご紹介しています。
また、プロジェクトマネジメントに関する書籍は多数出版されていますので、ご自分に合ったものを探して読んでみるのもおすすめです。
PMBOKガイド(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)は、原書を読もうと思うと大変なので、要点をまとめた書籍を探してみるとよいでしょう。
長く愛読されている書籍を押さえておくと同時に、開発手法やIT業界を取り巻く状況なども変わってきていますので、新しいものも押さえておくとよいかもしれません。
プロジェクトマネジャーのキャリアパス
プロジェクトマネジャーというと、エンジニアの目指すキャリアパスの最終地点のひとつのように思う方も多いかもしれません。
実際にはさらに大規模なプロジェクトのマネジメントを経験できるところへ転職したり、マネジャーを経験したあとにスペシャリスト、ITコンサルタントやなどの職種に転向したりする方もいます。また、上位職種としてCTOといった経営に携わる未知へ進む方もいるでしょう。
paiza転職では、プロジェクトマネジメントの経験のある方を求めている企業の求人も多く、再度現場のエンジニアに戻る場合でも市場価値が高いと評価されることもあります。
paiza転職の求人はこちら
また、エンジニア組織のリーダーやCTO、VPoEのインタビューを多数掲載している「Tech Team Journal」では、キャリアについて考えるヒントになる記事もありますのでぜひごらんください。
まとめ
プロジェクトマネジャーの役割や仕事内容、求められるスキルについてお伝えしてきました。
はじめてプロジェクトマネジメントを任されたときは、先輩の見様見真似でやってみたり、PM経験のある人に頼りながらやってみたり…といったことも多いと思いますが、基本的な知識や心得は頭に入れておくときっと役に立つと思います。
もちろん、「開発プロジェクトは炎上するもの」というイメージを払拭し、メンバーも自分自身も心身ともに健康でやりがいのあるプロジェクトとするためには、経験を積んでいくことも大切です。
「paizaラーニング」では、未経験者でもブラウザさえあれば、今すぐプログラミングの基礎が動画で学べるレッスンを多数公開しております。
詳しくはこちら
そしてpaizaでは、Webサービス開発企業などで求められるコーディング力や、テストケースを想定する力などが問われるプログラミングスキルチェック問題も提供しています。
スキルチェックに挑戦した人は、その結果によってS・A・B・C・D・Eの6段階のランクを取得できます。必要なスキルランクを取得すれば、書類選考なしで企業の求人に応募することも可能です。
詳しくはこちら
*1:2020年9月~2021年8月の1年間にdodaエージェントサービスに登録した人の年収データを職種別に集計したもの