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分散型SNSの台頭。ポストTwitter(X)に求められるもの

2023年7月23日、Twitterを運営するX社は同サービスの名称を「X」に変更すると発表し、同時にロゴも公開、翌24日にはブラウザ上のロゴが変更されました。従来のサービス名称やロゴからの脱却は大胆な方針転換ですが、その背景にはどのような現状があるのでしょうか?

今回は、Twitterの現状を紐解くとともに、いま新たに関心を集めつつある「分散型SNS」とはなにか、各サービスの特徴などに触れつつ、ポストTwitterに求められるSNSのあり方を考えていきたいと思います。

※以下、本記事内では「Twitterと表記」

【目次】


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Twitterの現状

昨今、Twitterに代わる新たなSNSが注目を集めています。中でもとくにMastodonやMisskeyといった「分散型SNS」は、ユーザーが自分自身のサーバを立て、自分のルールで運営できるという特徴から、自由な表現を求めるユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。

なぜいま、「ポストTwitter」に関する議論が話題となっているのでしょうか?それはTwitterの現状と、ユーザーのニーズの変化によるものです。

Twitterは、2006年のリリース以来、情報の発信と共有の場として世界中で多くのユーザーに利用されてきたSNSです。

しかし、最近ではプラットフォームの運営方針の変更や、ユーザーのプライバシーに対する懸念などが問題視されています。さらに、ヘイトスピーチやフェイクニュースの拡散といった問題も存在し、その対応に苦慮しています。これらの問題は、ユーザーが新たなSNSを求める動きを生んでいます。


画像引用:Twitter to lose more than 30 million users in the next two years - Insider Intelligence Trends, Forecasts & Statistics

その中でもとくに、自分自身で運営ルールを設定でき、プライバシーを保護できる「分散型SNS」への関心が高まっています。

いま注目の分散型SNS

分散型SNSは、中央集権的なサーバを持たず、ユーザーが自分自身のサーバを立て、自分のルールで運営できるという特徴を持ったSNSです。これは、インターネットの分散型ネットワークの原則、つまり「ひとつの中央集権的なサーバではなく、多数のサーバが相互に連携して情報をやり取りする」という原則に基づいています。

ユーザーは自分の価値観に合ったコミュニティを形成し、自由に表現することが可能です。ユーザーのプライバシーを尊重し、ユーザーが自分自身のデータをコントロールできるという点でも注目を集めています。

本記事では、代表的な分散型SNSを5つ取り上げ、それぞれの特徴や現在のユーザー数などについて紹介します。そして、これらのSNSが今後どのように進化していくのか考察します。

Mastodon


Mastodonは、Twitterに似たインターフェースを持つ分散型SNSで、ユーザーが自分の属するインスタンス(サーバ)を選び、そのインスタンス内のユーザーと交流します。

Mastodonの特徴的な点は、ユーザーが自分のインスタンスを自由に立てることができる点です。さらに、そのインスタンスを立てたユーザーがインスタンス上のルールを自己決定できます。これにより、ユーザーは自分の価値観に合ったコミュニティを形成することが可能です。Mastodonのユーザーは多様な背景を持つ人々で構成されています。自由な表現を求める人々や、特定の趣味や関心を共有する人々に支持されているのが特徴です。。

Mastodonは、ユーザーが自分自身のデータをコントロールできるという点でも注目を集めています。これは、ユーザーのプライバシーを尊重し、ユーザーが自分自身のデータをコントロールできるという、分散型SNSの理念を具現化しています。また、Activity Pubというプロトコルを採用しているため、他インスタンスのユーザーとも交流可能です。

www.youtube.com

また、Mastodonはオープンソースのプロジェクトであり、誰もがコードを閲覧し、改善可能なこともユーザーからの支持を集めています。これにより、Mastodonはコミュニティによって継続的に開発され、アップデートされています。このような特性から、Mastodonは自由な表現を求めるユーザーや、特定の趣味や関心を共有するユーザーにとって魅力的な選択肢となっているのです。

https://github.com/mastodon/mastodon

2016年10月のリリース以後、2023年7月時点で登録ユーザー数は約700万人以上、MAUは約150万人となっており、最も普及している分散型SNSと言えます。


https://mastodon.help/instances

Pixelfed

Pixelfedは、Instagramに似たインターフェースを持ったOSSの分散型SNSです。ユーザーは自分の写真や動画を共有し、他のユーザーと交流できます。2023年7月時点でのユーザー数は約19万人(※The Federation参照)となっているため、国内でその存在を認識している方はあまり居ないかも知れません。

Pixelfedはユーザーのプライバシーを尊重しており、投稿ごとに公開範囲の選択やコメントの有効/無効化、NSFWタグの追加、ライセンス表示を設定可能です。これにより、自分の投稿した写真が自由に利用可能か、または特定の条件下でのみ使用可能であることを明示できます。

また、ユーザーのデータを広告主に販売することなく、広告のないユーザー体験を提供。Pixelfedは、ユーザーが自分自身のコミュニティを形成し、自由に表現できる場所を提供することで、ソーシャルメディアの新しい形を提案しています。

Pixelfedもオープンソースのプロジェクトであり、プロトコルもMastodonと同様にActivity Pubをサポートしています。

https://github.com/pixelfed/pixelfed

Misskey

Misskeyは、他のサーバのユーザーと交流することが可能な分散型SNSです。最大のサーバである「Misskey.io」の登録者数は、2023年7月時点で約30万人となっています。

Mastodonと同様に、Misskeyではユーザーが自身のサーバを立て、ルールを自己決定できます。これにより、ユーザーは同じ趣味を共有する仲間との交流を楽しむことが可能です。


Misskeyのサーバ一覧

Misskeyの開発は、日本のWebエンジニアであるsyuilo氏によって2014年から始まりました。現在はオープンソースプロジェクトとして開発が行われており、最新のWeb技術を積極的に取り入れるなど、開発が進むにつれ使用技術も柔軟に変化しています。

https://github.com/misskey-dev/misskey

Misskeyは2018年にActivity Pubを実装しました。これにより、他の分散型SNSであるMastodonやPixelfedなどのユーザーをリモートフォローしたり、投稿を閲覧するなど、相互のやりとりが可能になりました。Activity Pubという共通プロトコルを介して、分散型SNSのユーザー同士がスムーズに交流できます。

また、Facebook運営元のMeta社が提供するSNS「Threads」もActivityPubに対応することが、Mastodon公式ブログで明言されています。

これらの動きは、プラットフォーマー依存となっていた既存のSNSとは大きく異なる、分散型SNSならではの特徴といえます。

Bluesky

Blueskyは、Twitterの共同創業者であるJack Dorsey氏が支援する分散型SNSです。2019年にTwitter社で発表され、2021年12月にTwitterから独立したプロジェクトとなりました。

Blueskyの開発チームは、AT Protocol(Authenticated Transfer Protocol)という、新しいプロトコルを開発しています。Mastodonなどで採用されているActivityPubとは、その目指す方向性や特性にいくつかの違いがあります。

AT Protocolの最大の特徴は、ユーザーが自分のアカウントをひとつのPDS(Personal Data Server)から、別のPDSに移行できるアカウントポータビリティです。これにより、ユーザーは自分のDID (Decentralized Identifier)や投稿、フォロー/フォロワー情報などを保持したまま、新しいSNSに移行できます。


画像引用:Protocol Overview | AT Protocol

一方、ActivityPubの移行ツールは比較的限定的で、あくまでベースとなるサーバがリダイレクトを提供しているに過ぎません。たとえば自身が所属対象となっているサーバの運営者が管理を放棄したり、サーバのデータが消滅した場合、そこに紐づくアカウントや投稿データをユーザー自身が取り出すことはできなくなります。AT Protocolはこれらの問題を解決するプロトコルとして開発が進められています。

また、AT Protocolは「Lexicon」というスキーマネットワークを導入していますが、ActivityPubは既存のスキーマを使用しています。さらに、ユーザー名の形式や検索と発見の方法にも違いがあります。

https://atproto.com/specs/lexicon

これらの違いは、AT ProtocolとActivity Pubはそれぞれ異なる目的と設計原則に基づいています。AT Protocolはユーザーのデータの自由な移動と強力な型付けを重視し、Activity Pubは既存のWeb技術との互換性と分散型のコミュニケーションを重視しています。

現在、Blueskyは開発中の段階(βテスト中)で、招待コードをもらったユーザーのみ登録できる状況です。しかし、そのユーザー数は2023年6月時点で10万人を突破しています。

Just a few months ago in February, we only had a couple hundred users, and in April, we crossed 50,000 users. We recently passed 100,000 users, and are excited that so many people have joined us.

Private Beta Update & Roadmap - Bluesky

Blueskyの公式ブログによれば、ユーザー数の増加とともに開発者コミュニティも拡大しています。また、フィードジェネレーターのスターターキットやコミュニティドキュメンテーションなど、開発者向けのリソースも提供されています。これらの取り組みにより、Blueskyはユーザーと開発者の両方からのフィードバックを活用して、プロダクトの改善を進めています。

https://github.com/bluesky-social/social-app

Phaver

Phaverは、Lens Protocol(Polygonブロックチェーン)を基盤にしたWeb3の分散型SNSで、2022年2月に公開されました。Twitterと似たインターフェースを持ちつつも、投稿時にトピックス(投稿先カテゴリ)を選択するなど、独自の特徴を持っています。

Phaverのユニークな機能として、ユーザーから「いいね」や「ミラー(Twitterのリツイートに相当)」を多く得たコンテンツに対して、Phaverが報酬を支払う仕組みがあります。ユーザーは価値があると感じた投稿に投票を行い、その後の投票数やミラー数が多いほど、より多くの報酬を得られる仕組みです。

これにより、コンテンツ作成者と投稿を広めるユーザーの双方が、価値あるコンテンツの創出に貢献するエコシステムが形成されています。広告による収益化ではなく、トークンエコノミーによる収益モデルを採用している点は、他の分散型SNSとは一線を画しています。

さらに、PhaverはLens Protocolによりデータ管理をオンチェーン化し、投稿したコンテンツの所有権をユーザー自身に完全に帰属させることが可能です。

https://github.com/lens-protocol/core

BlueskyがAT Protocolを用いてアカウントポータビリティを追求する一方で、PhaverはLens Protocolに加えてCyberConnectも統合。複数のソーシャルプロトコルに対応しています。

Multi-protocol social is here frens

We are thrilled to announce integration with
@CyberConnectHQ

Soon over 190k ccProfile holders are welcomed to Phaver and many of our 170k users can mint their first on-chain profile

https://twitter.com/phaverapp/status/1631402869931794434?s=20

2023年3月時点でのPhaverのユーザー数は約17万人です。Phaverは、Web3型SNSの普及にともないユーザー数を増やし、そのエコシステムをさらに強化していくことが推測されます。

まとめ

本記事では、分散型SNSの特性と未来について解説しました。分散型SNSはユーザーの自由な表現とプライバシーを尊重し、自身のコミュニティを形成できる特性を持っています。

また、OSSプロジェクトとして公開されている技術基盤も特徴的です。今後のSNSの動向としては、分散型SNSの普及、プライバシーとセキュリティの重視、プロトコルの統合、コミュニケーションの多様化などが予想されます。

ユーザーが自身のコンテンツデータやソーシャルグラフを失うことなく、さまざまなサービスを自由に行き来できるようになれば、プラットフォーマーの方針に左右されず、より快適なコミュニケーションが実現できるでしょう。

SNSが今後どのように進化し、私たちのコミュニケーションを変えていくのか、引き続き注目していきたいと思います。

(文:星影)




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