<この記事の著者>
ヨス - Tech Team Journal
業務効率を改善し、タイムパフォーマンスを高める時間最適化の専門家。「単語登録」の便利さを伝える「単語登録エバンジェリスト」。
「タスク管理」という言葉は知っている人が多いかもしれません。では「タスク管理について説明してください」と言われたらどう答えますか。
おそらく「やるべきことを書き出し、タスクを細分化し、いつやるかの期限を決め、その日に必ず遂行する」のような定義が思い浮かぶでしょう。
効率化の書籍を出版しているほど「タイムパフォーマンス」にこだわるわたしですが、実はタスク管理は苦手でした。
なぜなら、一般的にいわれる「タスク管理」の手法がわたしには向いていなかったからです。
【目次】
なぜタスク管理ができないのか?
タスク管理が苦手だった理由は、予定を立ててタスクの期限を細かく決めるのが苦手だから。わたしは「予定を決めること」にストレスを感じるため、細分化したタスクにいちいち期限を決めるのが苦痛でした。だって、そもそも予定を立てたくないのですから……。
1月や4月のような節目がくるたび「今度こそ完璧なタスク管理をするぞ!」と自分自身を鼓舞していましたが、何度トライしても結果は同じです(以下の画像はわたしが「Remember The Milk」で「完璧なタスク管理」をしようとして失敗した残骸)。
もはや「タスク管理」はわたしにとっての鬼門なのかと絶望感を覚えるほど。それでもなお、15年以上にもわたって果敢にタスク管理に挑んでいたのは「タスク管理ができないなんてダメ人間だ」と思いこんでいたからです。
そもそも、この時点で目的が逆でした。業務をうまく回すためにタスク管理を導入するのではなく、タスク管理を導入すること自体が目的になっていましたから(笑)。
そこで「なぜタスク管理を導入するべきなのか?」を自分に問い直しました。気づいたのは、納期のあるタスクに関してはGoogleカレンダーをつかいこなし、問題なくやってきていたという事実です。
つまり、ちまたでいわれる「タスク管理」とくらべると感覚的ですが、タスク管理はできていたのです。いったいわたしが追いかけていたのはなんだったのでしょうか……。
ただ「やるべきこと」はできていましたが、「やらなくてもいいけれど、やりたいこと」「いつかやりたいと思っていること」がなかなか実現しないという問題が発覚しました。その一つの例が英語の勉強です。
英語圏で生活しても困らない程度では話せますが、語彙力の欠如により高度な話題になるとついていけないのがコンプレックスでした。ところが、現在はjMatsuzaki氏の提唱する「先送り0(ゼロ)」というメソッドを取り入れ、毎日すこしずつ英語の語彙を増やしていけています。
その日だけにフォーカスし「着手」を目的とする
「先送りゼロ」については、jMatsuzaki氏と佐々木正悟氏による書籍『先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す[1日3分!]最強時間術』から引用します。
- 1日の初めに今日やることを決める
- 1日の終わりにその中で先送りしたものの数を数える
- 1分でも手をつけたら「先送り」とはしない
引用:先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す[1日3分!]最強時間術(2024年 技術評論社)
なんと「先送りゼロ」はタスク管理のメソッドの一つなのに「今日」にしかフォーカスしません。わたしは2022年にこの考え方を知り、ブリとハマチが同じ魚だと知ったときほどの衝撃を受けました。「本当に今日の予定だけを決めればいいのか?」と。予定を立てるのが苦手なわたしでも「今日一日」だけの予定なら立てられます。
それだけではありません。「先送りゼロ」のメソッドでは、タスクを完了したかは問われず、1分でも手をつければOKというルールです。「1分だなんて、そんなに甘いルールでいいのか?」と最初は思いましたが、このルールにはきちんとした理由がありました。なぜなら「やらなくてもいいけど、やりたいこと」を実行するときにハードルになるのは「はじめるまで」だからです。
たとえば、草抜きや窓拭きのような雑務でも、やりはじめると夢中になったような経験、身に覚えはありませんか? つまり、めんどうに見えることでも手をつけてしまえば進んでいく。いつまでも手をつけないから、前に進まないのです。
とくに、やらなくても困らない「やりたいこと」には締め切りがないため、永遠に「先送り」ができてしまいます。そして「今日はできなかったけど、明日やろう」を繰り返すうちに「やらないこと」を習慣化してしまうという沼が待っているのです。
でも「1分でも着手すること」にフォーカスすれば、どんなに忙しいときでも達成できますよね。1分でも、一度でも手をつけられれば「翌日の着手」につながります。その「手をつけたという実績」からルーチンがつくられ、「負の習慣」を「正の習慣」に転換させられるのです。
実績はウソをつかない
この「先送りゼロ」の考え方がわたしにピタッと当てはまりました。さらにこの考え方を効果的に実践するため、2022年から「TaskChute Cloud(タスクシュート・クラウド)」というスマホアプリを活用しています。こちらは実際の画面です。
右手側にある時間の記録が見えるでしょうか? このアプリをつかえば、タスクの「開始時間」と「終了時間」が簡単に記録でき、「着手した」という実績の可視化ができるようになります。
「今日はほとんど英語の勉強ができなかったな」と思っていても「5分はできた」ということがわかりますし、逆に「何時間も勉強したと思っていたけど30分だったのか!」ということにも気づけます。記録によって可視化された実績はウソをつきませんから。
実績を振り返ることで継続のモチベーションにもなりますし、「毎日2時間勉強する」といった実現不可能な「タスクという名の幻想」で挫折することを避けられます。
「タスク管理ができない」と思っている人は「先送りゼロ」の考え方を取り入れると、あんがいハマるかもしれませんよ。
(文:ヨス)