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長らく日本のエンジニアは地位が低いと言われ続けていますが、海外のエンジニアは本当に地位が高いのでしょうか。海外のエンジニアは年収1,000万円以上稼ぐという話もよく言われますが、どこまでが本当なのでしょうか。
海外の事例を紹介する際に良い面しか紹介しておらず「実体は日本と一緒」という事も考えられなくは有りません。そこで今回は、海外のエンジニアの平均年収、他職種と比べた場合の日本の水準を調べてみました。
■物価、職種、地域による比較
これまでもよくあったエンジニアの年収についての記事における問題点は下記の3つではないかと考えています。
- 物価を考慮していない
- 他の職種との比較していない
- アメリカ(シリコンバレー)との比較しかしていない
◆1.物価を考慮していない
よくあるのが、単純にシリコンバレーなどのエンジニアのみの年収を取り上げて日本と比較するものですが、それだと物価の面について全く考慮されておらず比較の意味がありません。そこで今回は物価についても考慮し比較してみる事にします。
ただし地域によって高いものと安いもの、食品が高い地域もあれば、家賃が高い地域などもあります。生活費指数のような統計値が見つからなかったので、今回はビッグマック指数で調整をしてみようと思います。
※ビッグマック指数(ビッグマックしすう、Big Mac index)は、各国の経済力を測るための、仮想的な通貨レート。マクドナルドで販売されているビッグマック1個の価格を比較することで得られる。
日本、アメリカ、シンガポールのデータ公益財団法人 国際金融情報センター調べ(2013)
http://www.jcif.or.jp/View.php?action=PublicWorldReport&R=41
イギリス、フランスのデータは「世界経済のネタ帳 」調べ(2014)
http://ecodb.net/ranking/bigmac_index.html
◆2.他の職種との比較していない
エンジニアの年収だけ見ていても地位の高低は分からず、印象論になってしまいがちです。他の職種と比較してみてどうなのか、という事は、これまでこの手の話で出てきていないので、そのあたりも含めて比較をしてみる事にしました。
エンジニア(SE/プログラマ、Software Developers and Programmers、 Software Engineer)、広報、マーケティング、人事、企画、販売、経理、総務という軸で比較し、エンジニアがどのような位置づけなのかを明らかにしてみたいと思います。
またビッグマック指数のみの、たった1品目で物価をみても不十分なので、複数職種を見る事で全体の給与水準が分かるようにしてみました。
◆3.アメリカ(シリコンバレー)との比較しかしていない
シリコンバレーだけを見ていてもしょうがないので、アメリカだけでなく、イギリス、フランス、シンガポールについても調べ、その中で日本のエンジニアがどのような位置づけにあるかを見る事にしました。
※調査元サイト
アメリカ:アメリカ労働統計局(2013年)
http://www.bls.gov/oes/2013/may/oes_nat.htm#41-0000
イギリス:Reed Online Ltd(2013)
http://www.reed.co.uk/average-salary
フランス:Salary Explorer
http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?loc=74&loctype=1
シンガポール:Salary Explorer
http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?loc=196&loctype=1
日本:DUDA(2013)
http://doda.jp/guide/heikin/
※エンジニアはSoftware Developers and Programmers、 Software Engineerの給与で調査。
■やはりアメリカはダントツでエンジニアの給与が高い
まずは、各国の職種別の平均給与を円に変換した表です。
2013年の平均レートで計算
1ドル=97.65円、1ユーロ=129.68円、1ポンド=152.7円、1シンガポールドル=78.03円
次に物価指数調整後
◆アメリカ
平均給与は高い順にエンジニア、広報・マーケティング、人事、企画、販売、経理、総務という順番。一番エンジニアの平均給与が高く、日本の丁度倍程度。人事、企画は日本と60万円程度差があるものの、日本と似たような水準。アメリカの中ではエンジニア職は高給であることが分かります。
アメリカのエンジニアは、日本のように誰でもなれる職業ではなく、大学等でコンピューターサイエンスを専攻した人がなる職業なので、給与が高くなっています。
米国NACE(the National Association of Colleges and Employers)の発表によると、2013新卒の学部別初任給は下記のとおりです。
平均: $45,327
- 工学:$62,062
- コンピューター・サイエンス:$58,547
- 商業:$55,635
- 通信:$43,835
- 数学、化学:$42,731
- 教育:$40,337
- 社会人文科学:$37,791
https://naceweb.org/s09042013/salary-survey-average-starting-class-2013.aspx
コンピューターサイエンスを専攻した学生は他の分野を専攻している学生より比較的給料が高いと言えます。
Google、Facebook、Twitterの採用面接でコーディングインタビュー(paizaのコーディングスキルチェックのようなプログラミング試験)が行われる事からも、米国ではコンピューターサイエンスを重視していることがうかがえます。
◆イギリス
平均給与は高い順に、エンジニア、人事、マーケティング、販売、経理、総務と、給与の高い順番はアメリカと似ています。。平均給与額がアメリカよりは260万ほど下がるものの、イギリスでもエンジニアは高給で、他の職種から群を抜いています。
そのあの職業は割と日本と似た給与水準と言えるでしょう。経理は日本より60万ほど低い水準となっています。
◆フランス
平均給与は高い順に人事、マーケティング、エンジニア、広報、総務となっています。フランスのエンジニアは日本とほぼ同水準の給与レベルとなっています。人事がかなり高給取りです。
◆シンガポール
平均給与は高い順に広報、人事、エンジニア、総務、販売となっています。エンジニアは、全体の中ではそこまで高い給与水準ではありませんが、イギリスと同水準で日本より170万ほど高くなっています。ただシンガポールは食費は安いですが家賃が高く、生活コストは全体的には高いと考えられるので、実際は日本よりも少し良い給与レンジというレベルかもしれません。
◆日本
平均給与は高い順にマーケティング、人事、企画、広報、経理、エンジニア、販売、総務となっています。
マーケティングが花形、エンジニアは経理と同水準です。経理はアメリカ、イギリスとも低水準であり、それと同じという事は日本のエンジニアの給与レベルは低い事が分かります。
■まとめ
アメリカ、イギリスは、比較職種の中でエンジニアがトップクラスの給与レベルでした。またシンガポールに関しても、職種別の順位的にはふるいませんでしたが、給与額という面では日本よりも良いといえる結果でした。
一方でフランスのエンジニアは、物価を考慮すると日本と変わらない給与レベルで、職種別にみても平均的な給与と言えます。
これらの結果を鑑みると、日本のITエンジニアはまだまだ地位が低いと言えると思います。逆にアメリカはシリコンバレーに限らずITエンジニアの給与レベルが高く、地位の高さがうかがえます。結果を見ると明らかではあるのですが、やはりApple、Microsoft、Google、Facebookを輩出している国だけあります。
日本と同レベルだったり、日本よりITエンジニアが評価されていない国も探せばあると思いますが、より低いところ見ていても自分たちの状況は何も改善されません。それよりも、アメリカの給与レベルを見て、日本のITエンジニアの伸びしろが沢山ある事を喜んだ方が健全と言えると思います。paizaでも日本のエンジニアの地位向上のために頑張っていきたいと思います。
paizaは、技術を追い続けることが仕事につながり、スキルのある人がきちんと評価される場を作ることで、日本のITエンジニアの地位向上を目指したいと考えています。
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