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労働生産性が先進国で最下位、給与下げても勤務時間縮めたい人が世界最多な日本の悪習とは

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Photo by Andrew Roberts
f:id:paiza:20140916135428p:plainこんにちは、谷口です。

先日、ランスタッドが実施した「勤務時間」に対する意識調査で、日本は「給与が下がっても勤務時間を短くしたい」と回答した割合が14.1%と、調査対象24の国・地域の中で最上位の多さでした。(※グローバル平均は6.0%)

また、勤務時間を短くしたい理由に関しては「自分自身の時間を増やすため」という回答が75.0%で、グローバル平均の70.0%を上回りました。これは、日本人が毎日の長時間労働で疲れきっている様子が如実に表れた結果かと思います。

今回は「給与が下がっても勤務時間を短くしたい」と感じる背景や、日本の労働時間と生産性について考えていきたいと思います。

「給与が下がっても勤務時間を短くしたい」という回答、 日本がグローバル比較で1位に | ワークトレンド360 | 世界最大級の総合人材サービス ランスタッド

■日本人の労働時間って、そんなに長いの?

経済協力開発機構(OECD)の2014年の調査結果を見ると、日本の平均労働時間は1729時間で21位、OECD加盟国の平均時間(1763時間)も大幅に下回っています

この結果だけを見ると、日本は決して労働時間が長い国ではないように思えますよね。

www.oecd.org

ただ、この実質労働時間は、国民勘定や欧州労働調査のデータに基づいて、正社員・パートを含む労働時間と雇用者数から割り出されたものになっているため、パートタイム労働者を除くと平均時間数も大きく変わってくるでしょう。

また、当然ながらOECDの調査結果にはサービス残業の時間数が含まれていません

日本人の労働時間についてもう少し詳しい調査を見るために、就業構造基本調査(5年に一度実施されています)の結果を見てみましょう。就業構造基本調査は雇用者本人による回答をもとにした調査のため、より実数に近い数値が出ていると考えられます。

平成24年就業構造基本調査・結果の概要

平成24年度の調査では、一週間のうちの就業時間について、42時間以下の人が46.8%、43時間以上の人52.9%、そのうち60時間以上の人の割合は11.2%という結果が出ました。

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これはつまり、労働者の半数以上が普段から残業勤務に従事し、そのうちの一割は一週間で60時間以上もの間働いていることになります。

これは決して少ない時間ではありませんし、OECDの調査結果に換算されていないサービス残業も蔓延していると言えるでしょう。

■じゃあ、諸外国の労働時間は短いの?

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Photo by Hsing Wei
一方で、諸外国の平均労働時間をOECDの調査結果から見てみますと、例年アメリカは日本以上、ヨーロッパの先進諸国はイタリアが例年日本と同等程度、イギリスやフランス、ドイツは日本より少ない労働時間となっています。

主要統計 - OECD

ただこれもあくまで平均ですし、これらの国にもサービス残業が存在しているかどうかは定かではありません。ただ、最近はBBCが、フランスの短時間労働制度が終わりを告げているとするニュースを取り上げたりしています。

www.bbc.com

かつてフランスの一般労働者は、週の労働時間が35時間を超えないよう、法的に守られていました。しかし現在では、約50%の労働者が残業せざるを得ない状態になっており、業務スタイルが変化してきている様子がうかがえます。

逆に平均労働時間が長いとされるアメリカでは、去年、プログラミングやデザインのレッスン受講サービスを運営するTreehouseのCEO、ライアン・カーソン氏が「週32時間労働制」という非常に短い就業時間を設定して話題になりました。

・週32時間労働制に関するインタビュー動画
www.youtube.com

カーソン氏はこのインタビューで、週4日の勤務でTreehouseを急速に成長させられた実態について語っています。

その一方で、アメリカではゼネラル・エレクトリックのCEO、ジェフリー・イメルト氏が24年間週100時間働き続けたとか、Yahoo!のCEOマリッサ・メイヤー氏が週130時間働いていたとかいうスーパー経営者たちの逸話が後を絶ちません。

常人が真似できる働き方ではありませんが、他にもアップルのティム・クック氏やスターバックスのハワード・シュルツ氏など世界的企業の経営陣は、現在も異常なまでの長時間労働に従事しています。

www.inc.com

日本では労働時間の話になると、必ずと言っていいほど「日本人は働きすぎ」「他の先進国のように効率的に働いてあとは休むべき」といった意見が出てきます。

しかし諸々の調査結果やニュースから考えると、時間数だけを見た場合、世界的に日本だけが特別に労働時間が長いわけではありません。

では、なぜ「日本人は働きすぎ」「他の先進国を見習うべき」というように、日本と比べて諸外国の労働条件の方が良く見えるのでしょうか?

恐らくは、欧米諸国では仕事における効率を重視しているのに対し、日本では無駄な長時間労働が蔓延していることが一因だと考えられます。

短時間にしろ長時間にしろ、効率よくガンガン成果を上げながら働くのと、周りの目を気にしてだらだら残業を続けてしまうのとでは生産性が全く異なります。今度は、日本の労働生産性について見てみましょう。

■労働生産性の低い国、日本

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Photo by Adam Dimmick
日本の生産性の動向2015年版によると、2014年の日本の労働生産性は、72,994ドル(768万円/購買力平価(PPP)換算)で、順位はOECD加盟34カ国中第21位、先進7か国内では1994年から連続して最下位となっています。

日本の生産性の動向|公益財団法人日本生産性本部

日本人は勤勉で、文句も言わずに長時間労働に従事している人も多いはずです。

しかし多くの組織では、いかにして成果を増やし効率を上げるかという、労働力を有効活用するための考えや取り組みがあまりうまくいっていないかと思います。

その結果、長時間働いてる人が偉いとか、サービス残業する人が偉いとか、自分の仕事は終わったけど上司が残っているから帰れないとか、生産性を下げる悪習がなかなか淘汰されずに残っているのです

日本人の生産性の低さは、個人の働きよりも組織的・社会的な風習に起因していると言えるでしょう。

■日本人の生産性を下げている悪習

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Photo by Rich Bowen

◆成果よりも努力を称賛する

日本の管理者は、まだまだ成果よりも努力したプロセスを重点的に評価してしまう傾向があるかと思います。

短時間で成果を上げるよりも長時間会社にいる人が偉い成果を上げていても周囲より早く退社すると評価が下がりかねない…という企業で、いつもなんとなく仕事しているふりをしながら遅くまで残っているような人は、いまだに少なくないでしょう。

かつて高度成長期の頃は、戦後の復興のために全員が働けば働くだけ世の中が上向きになっていく社会情勢でした。残業が努力の証として称賛されてしまう企業では、いまだにこのときの精神性が根付いたままになっています。

◆一度雇われると簡単には解雇できない

日本の場合、企業は一度社員を雇用すると、その後スキルがマッチしなかったり、成果が低かったりしても、おいそれと解雇はできません。

そのため、マッチしない人材がいても、そのまま同じポジションに配置し続けるしかない現象が起きてしまっています。

こうした状況下では、社員本人もよほどのことがない限り同じところで給料をもらい続けることができるため、「現状維持だけできればいいや」と考えるようになります。これが蔓延すると、現状維持ができる程度の仕事で労力を抑え、効率化や改善策を考えない組織ができあがってしまいます。

簡単に解雇されないのは一見良い制度に見えますが、何らかの問題があっても企業と離れることがないため、企業と社員にミスマッチが生まれても改善されにくい仕組みになっているのです。

◆人材が流動しない

入社後にミスマッチがあれば解雇される可能性も大いにある諸外国の場合、自分のキャリアは自分で考える必要がありますし、希望するキャリアを実現するために転職を繰り返すことも珍しくありません。

しかし日本の場合、前述の通り企業から解雇されることがまずないためか、「せっかく入社したんだからわざわざ辞めなくてもいい」と、転職をネガティブな行為として捉えてしまう人もいます。

「最低でも3年は続けた方がいい」という謎の3年神話や、「入社したら勤め上げるのが美徳」という考えも、やはり高度成長期からの名残として残っています。

また、日本では大した成果を上げていなくても年功序列で勝手に立場や給与は上がっていく企業も多いため、それを放棄するような転職になかなか踏み出せないところもあるでしょう。

ただ、そうして人材流動がストップしてしまうと、生産性が低く適性のない社員でも、出世したり同じポジションに居続けたりすることが可能になってしまいます。

結果として適材適所が叶わない歪んだ組織では、適性のない上司が上にいるせいで、落ち度のない部下が苦労する……という悲劇を生んでしまいます。

◆そもそも残業前提の業務になっている

常に「残業すればできなくはない」ような業務量の企業では、社員は残業して当然という業務スタイルになってしまっています。

特に受託開発業務の場合、本来は工数でなく成果物をベースに評価を受けるべき開発業務においても、結局のところ時間の切り売りになっている現場が多く存在しています。

こういった業務スタイルは、末端の開発者にしわ寄せが回ってきて長時間の残業(場合によってはサービス残業)せざるを得ない状況を作り出してしまいます。

さらに、若い社員が効率の悪い業務を何とか改善しようとしても、「このツールは使えない人がいるからだめ」「客先では指定の環境しか使えない」という状況が続けば、「ここでは改善策や効率化は考えるだけ無駄」と考えるようになってしまうでしょう。

これが続くと結局のところ「残業することでしか仕事を片付けられない」という状態は変わりませんし、社員が「給与を下げても勤務時間を減らしたい」と感じてしまうのも自然なことかと思います。

■まとめ

リンクトインが2014年に実施した転職・仕事・キャリアに関する意識調査で、仕事に対する満足度は、世界平均が72%であるのに対し、日本は65%という結果でした。特に「非常に満足」と答えた人は、 世界平均の27%に対し日本は17%という結果が出ています。

また「今の仕事にやりがいを感じているか」という質問に同意すると答えたのは77%で、一見高い割合思えますが、この割合は実施国中最下位の数値です。

blogs.wsj.com

これは前述のように長時間の残業や、人材の流動が活発でないことによる閉塞感や今後のキャリアに対する選択肢の少なさにも起因しているかと思います。

特にエンジニアの仕事というのは、本来は時間を切り売りするような労働集約ではなく知識集約型の業務であり、成果を元に正しく評価されて然るべきです。

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