こんにちは。倉内です。
ここ最近の転職市場は先が読めず、転職を踏みとどまる人もいれば、キャリアを見つめ直して積極的に転職活動を進めている人もいると思います。
私は前職のSIerで7年ほどSEをやって、自社サービスを開発しているpaizaへ転職したこともあり、前職の同僚から「自社サービス開発の企業へ転職したいけど、最近は開発から遠のいて顧客との折衝やマネジメントしかしていないから難しいよね…」と相談を受けることがあります。
確かに自社でサービスを開発するエンジニアは、企業や求人職種・ポジションによっては高いスキルレベルを求められることもありますし、尖ったスキルや開発経験を必要とする場合もあります。
ただ、受託・自社にかかわらず開発はチームでおこなうためマネジメントは必要ですし、納品の必要がある受託開発ほどドキュメントを書くことはなくてもサービスの要件定義や設計工程は必ずあります。
そこで今回は、SIerでの経験をどのようにアピールすれば、自社サービス開発企業への転職につながるかについて考えていきたいと思います。
自社サービス開発の企業への転職活動を始める前に知っておきたいこと
企業が中途採用者に求めるものを知る
SIer(おもに受託開発)から自社サービス開発企業への転職を考えている人は、業務であまりプログラミングをする機会がなく、もっと自分の手を動かしてスキルアップしたいという人が多いと思います。
そのため「現状を変えるために自社開発に行きたいのに、受託での経験をアピールするのは違う気がする…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに第二新卒くらいの年齢であれば「ポテンシャル枠」として採用されることがあるので、現職の経験ではなく、自分でプログラミング学習をしているとか「開発をとにかくやりたい」という意欲を見せればよい場合もあります。
しかしそれよりも年齢が上になってくると「なぜ新卒や第二新卒ではなく、中途採用をするか」つまり「中途転職者を採用するメリット」を企業側が求めます。
そのためSIerから自社サービス開発企業への転職でも現職での経験を生かして、自分に付加価値をつける必要が出てきます。
ここを押さえておかないと20代後半~30代になって「心機一転、新卒の気持ちでいちからがんばります!」もしくは「御社で開発経験を積みたいです!」と言って(ここまで直球ではないにしても)選考に通過できないといった事態が発生します。
経験者採用では、応募した企業に「うちに入って即戦力として活躍してくれそうだ」と期待してもらえるかどうかが成功の鍵になってきます。
転職の条件を現実的に考える
特に規模の大きいSIerに勤めていると、年齢を重ねるにつれて自分でコードを書く機会は減り、業務はマネジメント中心になることが多いと思います。
管理職になることが目指すべきキャリアパスであり、年功序列で給与が上がる企業もまだまだ多いですよね。
しかし、SIerと自社サービス開発企業ではビジネスモデルがまったく違うので、当然評価基準や考え方も異なってきます。そのため自社サービス開発企業への転職で給与を大幅に上げたいという希望は難しいかもしれません。
とはいえ年収を大幅に下げての転職も苦しいので、目指すべきラインは「現状維持、もしくは1割減程度に収める」というのが現実的でしょう。
冒頭で述べたとおり、マネジメントなど開発とは別軸での経験を生かして転職した場合、入社後の昇給も十分可能なので転職時の給与にこだわりすぎないことも大切です。
転職において、自分の中で譲れない条件は何なのか、年収はどのくらいなければならないのか…そういったことについては、以下の記事でもお伝えしていますのでぜひ参考にしてみてください。
具体的にどうアピールするか
前提として、SIerでの経験をかってくれそうな企業かどうかは、求人票や企業サイトで確認する必要があります。
たとえば「新しい技術を使った開発実績が豊富でスキルが尖ってる人が欲しいです!」というようなところを今回の戦略で突破するのは難しいからです。
paiza転職はITエンジニア専門の転職サービスなので、求人票にはエンジニア職ならではの項目が記載されています。たとえば、検索してみると「マネジメント経験が生かせます」と明言している求人票もあったりします。
じっくり見て企業がどんな人材を求めているか理解してみてください。
マネジメント経験
冒頭でも書いたとおり、受託開発でも自社サービス開発でもチームで開発するというのは変わりません。
そのためマネジメント経験を生かすのはよいのですが、大規模開発をやった(○億円の案件のPMやってました!など)と言うだけでは、面接官から「その経験はうちでどう生きるの?」と思われてしまいあまり意味がありません。
また、SIerではわりと重宝されがちな組織内での折衝や責任分散の仕方といった社内政治的なものは、多くの場合アピールにはならないので押し出すのはやめましょう。
アピールすべきはチーム内でどういう役割をしたか、もしくはチームで円滑に業務を進めるためにどういう工夫をしたか・努力をしたかという点です。
開発規模が大きいと複数のチームと連携が必要になると思うのでそういった話もいいですし、開発以外の複数の部門にまたがるような進行を円滑にマネジメントしたというのもいいと思います。
とにかく「(開発プロジェクトにおいて)自分がどう考えてどう動いてどうなった」を話せるようにすることが大切です。
要件定義・設計など上流工程の経験
受託ほど時間をかけてやりませんし、仕様書や設計書も(納品しないので)大量に書くことはありませんが、工程としては必ず存在するので上流工程の経験は生かせるシーンが多いと思います。
自社サービスはユーザーニーズを汲み取って、サービスの機能に落とす必要があるので、「受託は顧客の要望を聞くだけ」と思われている点を覆せるような経験を語りましょう。
たとえば、顧客のニーズの引き出し方で工夫した点や、当初の要望とは違うが本来顧客が必要としているものを提案できたといった経験を具体的に話せるといいですね。問題解決力をアピールできるともっとよいかもしれません。
合わせて機能設計やDB設計、画面遷移のフロー作成などの経験は役に立つことも多くあります。
また、上流工程という話からは外れますが、企業規模によってはインフラ専任のエンジニアがいるわけではなく、開発チームが兼任する場合もあるためインフラ(基盤構築や保守・運用)の経験があればぜひアピールしましょう。
サービス品質に対する意識の高さ
特に業務システムでは、システムの安定性やサービス品質に対する意識の高さが求められます。
前職のSIerでは、24時間稼働のシステムや不具合が人命や社会インフラに関わるシステムに携わっていました。それらのシステム開発・運用経験は、なかなか他では得られないものだと思っています。
自社サービスの開発ではスピード感が求められますが、かといって品質に対する意識が低くていいというわけではありません。SIerで培った品質に対する意識や、品質を追求する姿勢はサービス開発する上で必要です。
その他
以下はどちらかというと、「SIerからの転職では不足していそうだな…」と思われがちなことをフォローするためにアピールしておきたいものです。
まずは、「スピード感を持って業務に取り組めるか?」「技術トレンドを追えるか?」という点です。
受託開発では安定稼働した実績が豊富な技術を採用することが多いですが、自社サービスの開発では新しい技術にチャレンジする場面が多くあります。
また、基本的にリリースして終わりではなく、ユーザーニーズを汲み取りながら短いスパンで改善を繰り返すということを理解しておく必要があります。(受託でも納品後に改修が発生することはありますが)
現職でスピード感のある開発をおこなっていないと上記の点をフォローするのは難しいかもしれませんが、個人開発で補おうとしているなど取り組んでいることがあれば伝えましょう。
最後に自社サービス開発企業への転職理由が現状への不満や「SI業界は未来がないので」といった愚痴に終始していないか気をつけます。現実にはその思いがあったとしても、SIerから自社サービス開発企業への転職が将来のキャリア設計を考えた上でのことだと話せるようにしておく必要があります。
paizaでは、転職準備から、面接、退職、入社までをスムーズに成功させるためのノウハウをまとめた「転職成功ガイド」を公開しています。
特に面接対策の「不採用理由が「〇〇志向が足りない」な人の傾向と対策!」では、SIerから自社サービス企業への転職希望者が陥りがちな面接でのNGパターンとその対策も掲載していますので参考にしてみてください。
受託開発企業と自社サービス開発企業を経験しみての、それぞれのやりがいや大変さをまとめた記事もあります。よければのぞいてみてください。
プログラミング経験がほぼない場合の対処法
これまでSIerでの経験を生かすことについて書いてきましたが、とはいえ開発経験がほぼないに等しい、もしくはだいぶブランクがある(直近はマネジメントしかしてない)ままだと厳しい面はあります。
自社サービス開発企業にエンジニアとして採用される場合、マネジメントなどの経験を生かすといっても、ある程度のスキルは求められる場合がほとんどだからです。
もし育てる余裕がある企業でも、中途採用で「現場で勉強させてください」となるとおそらく選考通過は難しいでしょう。
そのため、業務では開発経験が積めない状況であっても、個人開発でサービスやアプリケーションを作って手を動かす時間を確保することが大切です。
paizaラーニングでは、Webフレームワークを使ったアプリケーション開発の講座を公開しています。まずは自分で動くものを完成させて、できればWeb上に公開までしてみてください。
受託開発でWebサービスに携わっていれば使っている技術にそれほど違いはないかもしれませんが、業務システムメインの場合学ぶことは多いと思います。
まとめ
自社サービス開発の企業へ転職したい人がSIerでの経験をどうアピールするかについて考えてきました。
本文でも述べたとおりSIerから自社サービス開発企業への転職というと、ビジネスモデルの違いを理解している人ほど「リセットしてやり直す」イメージを持つかもしれませんが、中途採用ではこれまでの経験を生かすというのが大切になってきます。
「とにかく受託ではなく、自社サービスを開発している企業へ行きたいから転職時に特に条件はない」といった考え方をすると結果的には転職そのものに苦戦したり、転職できたとしても後悔やミスマッチにつながる場合もあります。
それよりは多少手間がかかっても「自分の付加価値ってなんだろう?」「現職の経験をどう生かそう?」と考えることで深い自己分析ができ、納得のいく転職ができるでしょう。
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