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リモートワークがエンジニアの開発効率を上げる理由を科学的に解説する

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Photo by Peter Lindberg
f:id:paiza:20180910132940p:plainこんにちは。倉内です。

皆さんの会社は「リモートワーク」を採用していますか?「テレワーク」と言われることもありますがどちらもほぼ同じ意味です。

総務省が発表している「平成29年 通信利用動向調査報告書」によると、日本企業での普及率は2018年時点で13.8%とあまり高くありませんが、情報通信業に限ってみると31.1%と調査対象の業種の中ではトップとなっています。

paizaでもエンジニア求人を「一部在宅勤務可」という条件で検索することができます。

リモートワークは通勤のストレスから解放され、オフィスで発生しがちな強制的な割り込みもなく集中して仕事ができます。もちろん運用やルール決めの難しさもあるのですが、それを補えるだけのメリットもたくさんあります。

しかし依然として「リモートワークのメリットが分からない」「サボる人がいるのでは?」という声も多く、制度の導入がスムーズにいかないこともあるようです。

そこで今回は弊社の健康エンジニアの協力を得て、皆さんにさまざまな調査結果にもとづいたリモートワークのメリットをお伝えしていきたいと思います。

リモートワークが許されないことの弊害

かつては会社員にとってオフィスで働くのは当たり前で、会社へ出勤し自分の席で仕事をすることに疑問を持つことすらなかったのではないかと思います。

しかし毎日満員電車に揺られて会社へ行き、大雨の日にはずぶ濡れになりながら出勤し、オフィスではたびたび作業を中断させられる……など問題点もいくつか挙げられます。

これからそれらの問題が私たちにどのような影響を与えているかを調査した結果をいくつかご紹介します。ただし、調査結果の多くは相関関係があることは分かっていますが、因果関係があるというわけではありませんのでご留意いただければと思います。

通勤によるストレス

通勤に90分以上かかる人は不安感が高く、日々の満足感も少ないという調査結果があります。

この調査は米国の調査会社ギャラップ社によるもので、通勤時間が長い人は精神的なストレスに加えて慢性的な腰痛、首や背中の痛みを感じている人が多いといった身体的な悪影響もあると述べています。

出典:Well-Being Lower Among Workers With Long Commutes

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心身への悪影響は、通勤時間が長いと運動・食事・睡眠の時間を削らざるをえないことにも関係しているかもしれません。

ブラウン大学の研究者Thomas James Christian氏が発表した論文には、通勤時間が1分伸びるごとにどのくらい運動・食事・睡眠の時間を削っているのか?を調べた結果が記載されています。中でも睡眠時間に与える影響が大きいようです。

通勤時間1分あたり...
 運動時間が0.0257分減る
 食事時間は0.0387分減る
 睡眠時間は0.2205分減る

1分あたりの数値なので少なく感じますが、通勤時間を片道1時間の往復2時間(120分)とすると、1ヶ月あたり20日出勤で通勤時間は40時間(2,400分)にもなります。

出典:Opportunity Costs Surrounding Exercise and Dietary Behaviors: Quantifying Trade-offs Between Commuting Time and Health-Related Activities by Thomas James Christian :: SSRN

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1985〜2003年にかけてドイツで実施された幸福度調査を分析し「通勤によるストレスと幸福度の関係」を調べた、チューリッヒ大学の論文によると、通勤ストレスによる幸福度の減少は年収が40%アップしないと割に合わないということが分かっています。

おそらく年収を40%アップさせるのは一朝一夕には難しいので、通勤時間を短くする努力(もしくはリモートワーク可能な会社への転職)をしたほうが現実的でしょう。

出典:Stress That Doesn't Pay: The Commuting Paradox
 

オフィスでのストレス

37signalsの創設者の一人であるジェイソン・フリード氏が2010年に発表した、オフィスの問題点と改善点を述べたプレゼンテーションをご紹介します。

ちなみに37signalsは、Ruby on Railsを開発したソフトウェアエンジニアであるデイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン氏も所属していた会社です。

www.ted.com

2010年時点でオフィスワークを問題視しているのはすごいですよね。このプレゼンで挙げられているオフィスの問題点は以下のとおりです。

人々は集中したいときにオフィスを選ばない

ジェイソン・フリード氏が「仕事に集中したいときはどこへ行きますか?」という質問をすると、従業員から出てくるのは次のような場所だそうです。

ベランダやキッチン、自宅の空き部屋、地下室、カフェや図書館、電車や飛行機など

誰もオフィスを挙げていないのですが、「早朝か深夜ならどこでもいい」という回答があることから、邪魔が入らない場所もしくは時間を求めていることが分かります。

オフィスでは強制的な妨害が発生する

多くの人は「オフィスに行くと割り込みなどにより仕事が細切れになる」「パソコンは立ち上げたし、たくさんの会議にもちゃんと出たけど、気づけば夕方になっていて何もろくにできなかった!」ということが発生すると思っています。

とはいえリモートワークでも妨害や誘惑はあるのでは?と思いますよね。しかしテレビを見たり冷蔵庫に行ったりすることは「自主的」な行動であり、オフィスで外部要因により「強制的」に発生させられるものとは大きく異なると述べられています。

一旦中断された仕事を再び集中状態に持っていくことは非常に難しく、特にエンジニアやデザイナーなどクリエイティブな仕事は細切れ時間では成果が出せません。

一番の問題はManagerとMeeting

上司は「目の届かないところにいたら従業員が本当に仕事してるか分からない!」「サボってるに違いない!」と言って自宅での仕事を許可しません。

また、頻繁に開かれる会議は拘束時間が長い割には成果が少なく、意味がないことが多いと言っています。

人々が集中できる場所として挙げた場所には、Manager(上司)とMeeting(会議)がありません。つまり自分の仕事に集中したいときはオフィスではない場所が望ましいことになります。

一方、同僚とアイディアを出し合いたい、上司と意見交換したい、といった場合にはオフィスを選択することもあるでしょう。

リモートワークのメリット

これまではオフィスワークの問題点を見てきましたが、次にリモートワークによって仕事によい影響があったという調査結果を見ていこうと思います。

仕事のパフォーマンスが明確にアップ

273人を対象に自宅勤務の効果と適性を検証した、米国のフロリダ国際大学の調査結果からは以下のことが分かっています。

  • 多くの労働者にとって在宅勤務は明確なパフォーマンスアップが期待でき、デメリットもほとんど確認されていない。
  • 複雑な仕事を抱えてる人、解決すべき問題の量が多い人ほど自宅で仕事をしたほうがパフォーマンスが上がる。
  • 職場で同僚に頼ることが多い人ほど、自宅で働いたほうが自立心が芽生えてパフォーマンスが上がる。
  • 自分のことを支援してくれない職場(分かりやすく言うとブラック企業)で働いている人ほど在宅勤務のメリットが得られやすい。

出典:Unpacking the Role of a Telecommuter’s Job in Their Performance: Examining Job Complexity, Problem Solving, Interdependence, and Social Support | SpringerLink
 

達成度・満足度の向上と離職率・ストレスの低下

中国のCTrip(オンライン旅行会社)で実施された在宅勤務とオフィス勤務のランダム化比較実験の結果を見てみましょう。「週4日の在宅勤務」と「オフィス勤務」を比較したところ以下のデータが得られたとのことです。

  • 仕事の達成度が13%アップ
  • 仕事の満足度上昇
  • 離職率が50%ダウン
  • 年間$1,900のコスト削減

ただし、オフィスのほうがいい結果が出た人もいました。(たとえば、両親と住んでいるケースなど)

出典:Does Working from Home Work? Evidence from a Chinese Experiment

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次に米国のサウスフロリダ大学の研究結果です。在宅勤務に適したルールを定めるため、過去の通勤に関する実験を調べ直したり複数の論文を分析したりして、多くのデータから以下のような結論を出したと書かれています。

在宅勤務は...

  • 労働者の仕事に対する満足度が向上する
  • 仕事のストレスが低減する
  • 仕事のパフォーマンスが改善する

出典:How Effective Is Telecommuting? Assessing the Status of Our Scientific Findings
 

組織的な成果向上が見込める

カナダのハスケーンビジネススクールがおこなっているリモートワーク研究によると、リモートワークと組織の成果向上には正の相関があることが分かっています。

この研究は8つのデータベースと学術ジャーナルや論文に限定された991件の記事を分析したメタ分析の結果から明らかになりました。

実際は従業員の満足度が上がり、離職率が下がり、生産性が上がれば企業にとってもメリットに違いないのですが、個人のメリットばかりだと思われがちです。よってこの調査結果を示せば組織にとってもいいものであることが分かっていただけると思います。

出典:Is telework effective for organizations?: A meta‐analysis of empirical research on perceptions of telework and organizational outcomes
 

リモートワークは「選択肢の一つ」と考える

これまでリモートワークを推奨してきましたが、リモートワークが必ず最良の選択となるわけではありません。

というのもオフィスワークを選ぶべき仕事(状況)もあるからです。たとえば…

  • プロジェクトの立ち上げは対面が必須
  • 顧客とのMTGなどが必要な仕事ではリモートワークは週1程度がよい

また、リモートワーク導入の際は以下のことに気をつける必要があります。

  • 素養によってオフィスのほうが集中できるタイプもいる
  • 会社として同僚との知識共有ができるサポートは必須である
  • 自治の感覚が必要になる(上司が管理しすぎると失敗する)

リモートワークはうまく活用できれば、従業員満足度および生産性の向上、通勤やオフィスにかかるコストの削減といったメリットが見込めますが、あくまでより働きやすい環境を作る選択肢の一つであるべきです。

リモートワーク先進国のアメリカでは、ヤフーやIBMをはじめとしてリモートワークを廃止するなど縮小傾向にあると言われています。やはり従業員の評価やコミュニケーションで問題が発生するといった難しい面もあります。

導入の際には仕事内容や職種に合わせたルール作りが非常に大切です。

多様な働き方でキャリアを築く

私は前職のSIerでSEとして働いていましたが、フレックスタイムや時短勤務の制度はあったもののリモートワークは認められておらず、子育てや介護といった生活の変化を理由に退職していく先輩方を何人も見てきました。

リモートワークという選択肢があればもっと違った結果になっただろうな…と思います。

幸いにもITエンジニアは比較的リモートワークがしやすい仕事なので、オフィスワークとリモートワークをうまく使って、理想の働き方を実現することはできると思います。

paizaでは、「時間にゆとりができる働き方へ。」をテーマに女性エンジニア求人特集をスタートしました。

「一部在宅勤務可(リモートワーク)」「時短勤務可」「定時退社可」「育休産休実績あり」など、こだわり条件で検索可能となっていますのでぜひチェックしてみてください!

まとめ

さまざまな調査や研究の結果を見ながらリモートワークについて考えてきました。

リモートワークを実際に導入・運用するとなると検討が必要なこと(フルリモートなのか、月に決まった回数内でOKなのか、コミュニケーションをどう取るか、評価は結果(アウトプット)だけで見るのか…などなど)はたくさんありますが、リモートワークという選択肢が働き方の幅を広げてくれるでしょう。

ただ、なかなか今の組織の制度を変えていくというのは難しいですよね。さきほど女性エンジニア求人特集をご紹介しましたがpaiza転職では求人を「一部在宅勤務可」の条件指定で検索できます

転職してリモートワークを実現するというのも一つの手段かと思います。

paiza転職について詳しくはこちら
paiza転職
 

<参考リンク>
これまでも何度かご紹介している、「パレオな男」さんから今回もいくつか参考にさせていただきました。





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