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こんにちは。谷口です。
最近、未経験から「ITエンジニアに転職したい」という方が増えています。実際にIT業界は空前の売り手市場ですし、実際に未経験からエンジニアに転職して活躍されている方もたくさんいます。
ただ、
- 売り手市場で需要が高いから未経験からでも目指せそう
- とりあえず勉強したらなれそう
- 手に職がつけられて食いっぱぐれずに済みそう
- 給料も高そう
といった動機だけで目指している人も、いないとは言い切れません。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、ITエンジニアって、そんなに簡単になれるものなのでしょうか? そんなに簡単に誰でも手に職つけられて、転職できて、収入も上げられるのでしょうか?…という話を今回はしていきます。
未経験からITエンジニアを目指したいと考えている人にとって参考になればと思います。
ITエンジニアって目指せばなれるのか
結論から言ってしまうと、「なること」自体は、それほど難しくないと思います。医療系や公務員、美容師などのように明確な試験や資格がある職種でもないので。
「未経験者OK!」と書かれた求人を探して応募して、エンジニア職として採用されたら、エンジニアになれたと言えますね。あとは、別に企業に入社しなくても「私はフリーランスのエンジニアです!」と言ってしまえば、その人は自称エンジニアです。
ただ、「エンジニアになりたい人」が目指しているのは、それだけの状態ではないですよね。少なくとも、まずは「まともな開発業務をこなして、それなりの給与をもらっている状態」を目指すと思います。
で、この「まともな開発業務をこなす」には、「まともな技術」が必要です。この技術は自習や情報収集や業務を通して、自分で身につけなければなりません。
ついでに言うと、自分の市場価値を上げて労働条件をよくしたり、スキルや経験を増やして自分を成長させたりするには、さらなる学習や転職がほとんど必須となります。
これについて「自分はやるぞ、やれるぞ」という人にしか、本当は向いてない職業だと思います。
エンジニアには向き・不向きがあるのか
「向いてない」という言葉が出てきたので言いますが、向き・不向きは普通にあります。
ソフトウェア開発プロジェクトについて書かれた書籍『ピープルウェア』では、優秀なプログラマと成績の悪いプログラマの生産性には約10倍の差があるという記述があります。『ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ』でも、エンジニア個人においては、5から28倍のスキルの差があるとまとめられています。
- 作者:トム・デマルコ,ティモシー・リスター
- 発売日: 2013/12/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 作者:ロバート・L・グラス,山浦 恒央
- 発売日: 2004/04/08
- メディア: 単行本
「何倍になる」の数値に関しては諸説あるので置いときますけど、要は昔からいろいろな研究者や技術者が「システム開発って、人によって生産性にすごく差が出るよね」と言いまくっているということです。
情報系の学校に通っていた人は、こうした生産性の差を思い知る機会があると思います。情報系の同じ授業を受けているのに、課題をすぐにクリアできる人もいれば、時間をかけても全然解けない人もいる……といった場面があったはずなので。
そういった経験がないところから目指すのではあれば、まずは趣味の範囲でプログラミングを勉強したり、何か作ってみることが必要です。
実践してみて「まったく興味がわかない、やっていてつらい」と感じるのであれば、その時点でエンジニアを目指すかどうか考え直せばよいですし、逆に「超楽しい、もっと知りたい」と感じれば、さらに勉強を進めたり、求人応募を始めてみるのがよいかもしれません。
これは「向いているからよい」「向いていないから悪い」という話ではありません。どんな職種にも言えますが「向いていない人が間違ってなってしまうとそのあとがつらいから、早めに見極めたほうがよい」という話です。
需要が高い・給与が高いというのは本当か
今のところ求人倍率だけを見ていると、ITエンジニアは超売り手市場と言えるでしょう。
ただしいくら売り手市場でも、技術がともなわない人の買い値はそれ相応になります。技術職ですから。「技術職」ってわかりますか? 技術を売ってお金に変える職業です。
給与面に関しても「技術のある人がより高く買ってくれるところを探す」のであれば、かなりスムーズにいくはずです。
ただ、未経験者で全然スキルもともなわないうちから、高い給与がもらえるかというと、そんな都合のいいところはありません。何年か会社員をやっていた人が未経験から挑戦するのであれば、前職より下がってしまうケースも珍しくないです。
IT技術のレベルってどえらいスピードで進化しているわけで、スキルの足りていない人がいきなり奇跡的に超有名大企業に入社して、逆転一攫千金ドリームみたいな話は、現実的にはほぼ不可能です。
まずは入れるところに入社して、実務で経験を積み、自習して知識を強化しなければなりません。その後、もっと違う業務がしたいとか、労働条件をよくしたいとなったら、希望に合いそうな転職先を探して移動していく…というのが現実的なキャリアの積み方です。
これはどんな職種にも言えますが、あまり若くもなく、養わなければならない家族もいて、でも未経験からスタートしたい…というのは、よく考えたほうがいいです。どんなに想像しても、想像より大変だと思います。
手に職をつけられる(≒一生食っていける)というのは本当か
二言目には「手に職をつけたい」という人がいます。当然ですが、エンジニアになったら自動で手に職がついてくるわけではありません。
未経験の分野に方向転換をして、自分の手に職をつけてくれるのは、ほかでもない自分自身です。
手に職をつけるというのは、自分でそれ相応の技術を習得するということです。そして、その技術は一朝一夕で身につくレベルのものではありません。
どんな職種にも言えますが、誰でもちょっと勉強すればできるようになるレベルのスキルや知識にそれほどの市場価値はないです。
しかも、技術は一度覚えたら終わりではありません。美容師で「聖子ちゃんカットしかできません」なんて人が、現代の美容業界では通用しませんよね。(実際は美容師は国家資格で実技試験もあるのでそんな人いないと思いますけど)。エンジニアも同じです。
まずは土台として最低限通用するレベルのスキルを身につける、そこからさらに常にアップデートをしていく…ということが必要となります。
現在エンジニアとしてばりばりに活躍しているすごい人たち、憧れますよね。彼らの大半は、子供のころからPCやプログラミングになれ親しみ、情報系の大学や大学院に進んで論文を書いてきたような人たちです。
中途で未経験からエンジニアを目指すってことは、そういった年下のエンジニアが上司になるってことです。もちろん下からも、若くて優秀な人たちがどんどん上がってきます。
彼らとはスタートから違うので、前提知識の広さと深さは、どうやっても追いつけません。追いつけなくても、追いつくぞという気持ちでかなりがんばっていろいろなことを習得していかなければなりません。じゃないと仕事にならないので。中途で未経験から技術職を目指すというのは、そういうことです。
このへんの覚悟がないと、途中で挫折してしまうと思います。
まとめ
いろいろと書いてきましたが
- エンジニアになるのはそんなに難しくなかったぞ
- エンジニアの仕事はそんなに大変じゃないし楽しいぞ
- そんな成り手を減らすようなこと言うな
と思われた方もいると思いますが、そういった方は、エンジニアにすごく向いていると思います。
前述したように「向いているからよい」「向いていないから悪い」という話ではありません。適性がなさそうな職業は、先に選択肢から外しておいたほうがいいという話です。
スタートアップ養成所・Yコンビネータの創業者で、Lispプログラマのポール・グレアム氏の「他人にとっては仕事のように思えて、自分にはそう思えないものがあるなら、それがあなたに適したものなんだ」という言葉があります。
「仕事だからつらくても仕方がない」のではなく、追求していくことを楽しいと思えるような仕事に就くことが、幸せな職業人生につながるのだと思います。
paizaは、技術を追い続けることが仕事につながり、スキルのある人がきちんと評価される場を作ることで、日本のITエンジニアの地位向上を目指したいと考えています。
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