こんにちは。倉内です。
以前、中途入社した社員がいち早く組織になじみ、成果を出すために企業側は「オンボーディング」で受け入れる必要があるとお伝えしたことがあります。
昨今入社時からリモート勤務というのも珍しくないと思いますが、オフィスでの受け入れと異なり課題を感じている企業も多いのではないでしょうか。
また、エンジニアはリモートワークとの相性がよい職種とは言え、転職直後にリモートで働く経験がある人はまだそう多くはなく、不安を感じている人がほとんどです。
そこで今回は、リモート環境下で社員を受け入れる際に企業はどんなことに気をつけるべきか、そして企業の成功事例を見ながら具体的な取り組みについても考えたいと思います。
リモート時代だからこそ重視したいオンボーディング
オンボーディングをする意味
オンボーディングとは、簡単に言うと「新卒・中途で採用した新入社員が帰属意識を持ち、組織の一員として早期に成果を出せるようサポートする仕組みのこと」です。
導入するメリットは大きく以下の3つがあります。
- 新しいメンバーを短期間で戦力化する
- 既存社員を巻き込んだ取組みのため組織の一体感・結束力を高める
- 早期退職を防ぎ採用コストを抑える
みんながオフィスで仕事をしていたころは、困っている人に気づいた人がサポートすることができました。
新入社員にとっても疑問があれば声をかけたり雑談やランチを通して関係を構築したりといったことがしやすい環境でした。しかし全員がリモートワークをしている場合、それらが自然発生することはありません。
また、オンボーディングというと新しく入ってくる人をどう受け入れるかにフォーカスしがちですが、既存社員の著しい負担増や犠牲の上に成り立つようではうまくいきません。
よって「新入社員のことは受け入れ部署に任せた」「新入社員本人の自主性に任せた」という考えは捨てて、仕組み化をして全社的な取り組みにしていく必要があります。
エンジニアは実際リモートワークをどう感じているか
paizaでは、2021年3月に「働き方に関するアンケート」を実施し、paizaご利用ユーザー444名(20代:85名、30代:151名、40代以上:208名)にご回答いただきました。その結果からリモートワークの実態について見てみたいと思います。
アンケート回答者の属性
アンケート回答者の職種とリモートワーク実施状況をグラフに示します。
約半数がほぼフルリモートで勤務しているというのはIT業界・エンジニア職種ならではかもしれません。
リモートワークの満足度
まずは「リモートワークの満足度」です。以下のグラフは、青色から順に時計回りに「非常に非常に満足している」「まあまあ満足している」「ふつうである」「やや不満である」「とても不満である」を示しています。
paizaではプログラミングスキルを可視化する「スキルチェック」というサービスがあり、S・A・B・C・D・E・Fとランク付けしています。Sがもっとも取得難易度が高いランクです。
グラフでは、特にSランク(経験者の中でもよりスキルが高い層)と、E・Fランク(業務遂行にはサポートが必要な層)に注目していただくとよいかと思います。Sランクは「不満である」に数えられる割合が5.1%であるのに対して、E・Fランクは22.2%にのぼります。
ランクが低い層はリモートワークへの満足度が低い傾向(緑色とオレンジ色の割合が多い)にあります。つまり初心者やプログラミング経験が低い人ほどリモートワーク環境で業務をこなすのが難しいと捉えることができます。
リモートワークの不満・不便なこと
では、経験者を採用した場合は何も心配しなくてもよいかというと、そうではありません。「リモートワークをする際に不満・不便なこと」の結果を見るとそれがよく分かります。
回答者444名のうち、リモート経験がありなんらかの不満点を挙げたのは308名でした。以下のグラフは複数回答の結果です。
もっとも多かったのは「運動不足になる」ですが、次点の「コミュニケーションがうまく取れない」は143名が選択しています。これには年齢やランクによる傾向はありませんでした。S・Aランクを取得するようなスキルが比較的高い人でもリモートワーク下ではコミュニケーションに課題を感じています。
また「マネジメントが難しい」を挙げた人は52名いました。マネジメントする側が難しさを感じているということは、部下やチームメンバーも同様にリモートワークではやりづらさを感じていると思います。
その他で選ばれていた内容として、「孤独を感じる」「自分の成果をアピールしづらい」といったものもありました。これらは入社直後の社員が特に強く感じるであろうものです。
リモート下での具体的なオンボーディング事例
企業としてはさきほどのアンケート結果に見られたような不満点・問題点は社員から声を挙げてほしいと思うでしょう。もちろんそれも大切なことですが、コミュニケーション機会が減っているリモートワーク下で自主性だけに任せることは困難です。
まずは基本的な取り組みをおこない、うまくいっている企業の具体的な施策も参考にしてみてください。
押さえておきたい4つの基本事項
1. 適したツールを利用する
まずはリモートワークを円滑にするための情報共有やコミュニケーションのためのツールを積極的に活用しましょう。
SlackやZoomは定番ですが、タスク管理にはJIRA(カンバンボードの活用)、レビューにはTrelloなどのツールもよく使われています。
もちろんツール導入にはコストがかかります。リモートワークで社員に十分な成果を発揮してもらうこととコストとを天秤にかけてメリット・デメリットを検討していただければと思います。
2. 暗黙のルールをなくし見える化する
言語化されていない暗黙のルールや習慣を入社直後からフルリモートで働く人が感じ取ることはできません。
それ以前に暗黙のルールは不信感につながり、人間関係のトラブルのもとになります。この際そういったものを生まないよう、情報共有はオープンな場でおこない、従うべきルールがあれば明示しましょう。
業務のために知っておいてほしい知識は、ドキュメントを読んでもらったり、e-learningで学んでもらったりと企業側が準備する必要があります。
3. 意図的なコミュニケーション機会を設ける
さきほども述べたとおり、オフィスで勤務するのと違い、偶然の会話というのが生まれにくくなりました。
直接顔を合わせたことがないのは当たり前になりつつありますが、入社時に配属先だけでなくすべての部署に新入社員を紹介したり、ウェルカムランチをしたりといったことを積極的にして、画面越しででも顔と名前を覚えてもらう機会を設けましょう。
またメンターをつけて、小さいことでも気がかりがあればいつでも気軽に聞ける体制を作るのも大切です。
4. 適切な期待値やゴール、評価制度を設定する
どれだけスキルや経験値が高い人でも、入社直後はその企業でどのように成果を出せばいいか手探りの状態からスタートします。
そのため期間を区切って、いつまでにどのレベルのことをこなしてほしいか、期待しているかを明示してください。同時に目標設定もするとよいでしょう。
これは新入社員を受け入れる部署のメンバーや管理職、そしてメンターにもあてはまります。新入社員のサポートには自分の業務時間を削って対応する必要があります。それが目標になっておらず評価につながらなければ、オンボーディングもうまくいきません。
他社事例
Visionalグループ
BIZREACHを運営し、人材活用プラットフォームHRMOSを開発・提供するVisionalグループはエンジニアブログに「開発組織のオンボーディング」についての記事を公開しています。
変化の時代にオンボーディングは不可欠と明言しており、地道に改善を続けてきたとあります。
記事では、3年間のオンボーディングの実情を踏まえ、リモートでも効果的かつ具体的な施策を挙げてくださっています。関係各所のメンバーを巻き込み、主体的な協力を促し、実行するだけでなく振り返りをおこなうことで次につなげていくことが大切だと書かれています。
そしてメンバー自ら主体的に取り組むことの重要性も語っています。
人事、組織開発、教育担当などの一部の誰かが提供してくれる当たり前を享受するのではなく、現場メンバー自らが作っていくことで生きたオンボーディングであり続けられているといえるでしょう。
特にフルリモートに移行後プラスで工夫した3点については、中途社員の定着に悩んでいる企業はよく読んでいただくとよいかと思います。
NTT Communications
NTTグループがこういった情報を公開するのは珍しいと当時話題になったため記憶に残っている方も多いかもしれません。
オンボーディングとは何かから始まり、配属前、配属初日~1週間、定常的に繰り返し実施と段階を分けたオンボーディングについての具体的な取り組みが紹介されています。
中でも注目したいのは、配属前に実施することついても書かれている点でしょう。オンボーディングというと新入社員が入ってきてからやることのイメージがありますが、もちろんそれまでに計画や準備、メンターとなる既存社員のアサイン、新入社員とのコミュニケーションなど必要なことは多くあります。
また、配属初日~1週間のページで特に印象的なのは「チーム全員との1on1を実施」の部分でしょう。
新メンバーとチームメンバー全員で相互理解を深めるための1on1を実施しましょう。相手の経歴やどんなことが好きかなど様々なテーマで相互にインタビューを行い、理解を深めていきます。
具体的なテーマも挙げられており、リモートワーク環境下においてここまでじっくり話す機会を設けてくれるというのは、新しく入る社員にとっては安心材料となりそうです。
LAPRAS
AIテクノロジーを使ったミスマッチのない職業選択を実現する、エンジニア向け採用サービスを提供するLAPRAS。以下の記事は、失敗事例を公開してくださっている貴重な例です。
エンジニア職での話ではないものの、2020年4月にフルリモート下で入社した社員に対しておこなったオンボーディングで起こった問題や改善の取り組みを紹介しています。
課題は多くあったとのことですが、特に以下の部分は多くの人が感じることではないでしょうか。
例えば、文章だけでやりとりすると表現によっては素っ気なく感じてしまうこともあります。
ただ質問をされているだけなのに「責められているのかもしれない」「どんなリアクションを期待しているのだろう」と考えてしまうことがありました。
また、「温度感が分からない」「メンバーとの心理的な距離がなかなか埋まらない」などもリモートワークで問題となりやすい点でしょう。
記事後半では、成功のために必要だった2つのポイントとして、①雑談による信頼関係の構築、②新入社員と既存社員の認識のずれを埋めることが挙げられています。中途社員であってもメンター制度を実施し、既存メンバーとのコミュニケーションを重視した内容に刷新したとあります。
いずれの企業も現状が最適解ではなく、実施しながら改善を続けていく必要があると感じていることが分かりました。
まとめ
リモートワークならではのオンボーディングについて考えてきました。
本文にも書きましたが、苦労して採用した人材が即戦力として成果を上げられるかどうかは、本人の頑張りだけでなく、企業として環境や制度を整えることも大切です。
特にリモートではコミュニケーションに対する課題を抱える人が多く、それを相談しづらいという難点もあります。しかしうまく組織になじみ、業務に取り組めるようになれば、特にエンジニアという職種はリモートでも難なくパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。
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